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彷徨する自由帖

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美術・博物館

鑑賞した作品や訪問の記録

庭園美術館の建物公開2022《アール・デコの貴重書》展 - 旧朝香宮邸・再訪の記録|東京都目黒区の洋館

目黒にある東京都庭園美術館では、毎年「建物公開展」が開催されている。美術館と名付けられ、通常は展示物を引き立てる空間として機能しているこの旧朝香宮邸の、建築様式や内装といった建物自体に着目するための企画。作品保護のために閉め切られていた窓…

屈折しながら上へ伸びる建築器官、昭和の竜宮城、百段階段の7部屋 - ホテル雅叙園東京|目黒区にある都指定有形文化財

目黒駅より徒歩数分。ホテル雅叙園の「百段階段」は昭和10(1935)年に完成した、敷地内に現存する中では最も古い、唯一の木造建築。正式には、ホテルの前身である「目黒雅叙園3号館」のことを指す。料亭の明朗会計を売りにした雅叙園は、細川力蔵とその相棒、…

アール・ヌーヴォーの運動と時代背景 - 洋館長屋 / 仏蘭西館(旧ボシー邸)内を歩きつつ|神戸北野異人館

洋館長屋で見ることができる家具類や工芸品の目玉は、アール・ヌーヴォー(Art nouveau)の流れを汲んで19~20世紀に制作されたものの数々。アール・ヌーヴォーは表面的に言うと、多くの機械工業的製品とは対照的な、植物や生き物を思わせる造形と、そこから…

プラトン装飾美術館 / イタリア館(旧アボイ邸)には今も実際に人が住んでいる|神戸北野異人館

受付に座っていたのは、随分とクラシカルな服装に身を包んだ小柄なメイドさんだった。彼女の佇まいに少し驚きつつ入場券を買ったとき、「この異人館には、他とは大きく違う特徴がひとつございます」と言われて、まばたきをする。さて一体なんのことだろうか…

修善寺駅前の「純喫茶あぐり」と奇妙な資料館、極楽苑 - 静岡県・伊豆市

駅の前にある喫茶店は、ときどき安心の象徴みたいに思える。バスや電車が来るまでの暇つぶしに、あるいは不意に降ってくる雨の冷たさを避けるのに便利な場所というのは当然なのだが、もっと、それ以上の恩恵を与えてくれる「何か」が確実にあると感じずには…

閉館後のホテルニューアカオを徘徊する体験(4) プール|熱海のアートイベント《ATAMI ART GRANT》のACAO会場

前回の記事の続きです。壁をなめるように火の玉が飛んでいる。そう直感して意気揚々と近付いたら、ただの明かりだった。けれど心を惑わされたことには変わらない。金属製の花の萼に乗るふっくらとした白いガラス。インペリアルスイートルームの上層から退出…

閉館後のホテルニューアカオを徘徊する体験(3) スイートルーム|熱海のアートイベント《ATAMI ART GRANT》のACAO会場

前回の記事の続きです。仮にこのニューアカオを沈みゆく船に見立てるなら、きっと中庭は甲板に対応する部分だろう。ダイニング錦の脇にはそこへ上る小さな階段がある。レンガ風の壁に挟まれた踊り場に立って背後を振り返ってみたら、半円のアーチに飾られて…

閉館後のホテルニューアカオを徘徊する体験(2) ダイニング|熱海のアートイベント《ATAMI ART GRANT》のACAO会場

前回の記事の続きです。サロン・ド・錦鱗のある15階からエレベーターに乗り、何も分からないままに指示通りのボタンを押す。すると、眠っているのか起きているのか不明瞭なニューアカオの体内で、私の身体は縦の方向に大きく動かされる。どういう仕様になっ…

閉館後のホテルニューアカオを徘徊する体験(1) ダンスホール|熱海のアートイベント《ATAMI ART GRANT》のACAO会場

ホテルニューアカオは老朽化などの理由で2021年の11月に閉館が発表された。現在では、平成初期に建てられた新館ロイヤルウイング(現・ホテルアカオ)が熱海にあるアカオ系列施設の中心となっている。そして同年の冬。11月16日から12月12日までの間、旧館ニ…

三菱一号館美術館《イスラエル美術館所蔵 印象派・光の系譜》展&Café 1894のタイアップメニュー|再現された銀行営業室

この前、三菱一号館美術館で開催されていた展示《イスラエル美術館所蔵 印象派・光の系譜》を鑑賞した。数年ぶりに訪れた場所だった。ジョサイア・コンドルによる設計で、1894(明治27)年に建てられた洋風事務所「三菱一号館」を再現し、2009年に復元竣工した…

美術系の専門コースがある高校に通っていた|カリキュラム・良かったこと・思い出など

ここでは個人的な振り返りも兼ねて、私が通っていた高校の専門コース(美術系)が一体どんなところだったのか、また、どのような部分が良かったのかを紹介してみようと思う。残念ながら、母校に存在していた美術コースは既に募集を停止し廃科となっているた…

小金井公園内にある博物館「江戸東京たてもの園」は近代文化遺産の宝庫|東京都

約7ヘクタールの敷地を3つのエリアに分け、江戸時代から昭和中期までのさまざまな復元建造物を野外に展示している博物館、江戸東京たてもの園。墨田区の方にある江戸東京博物館の分館である。入場口とビジターセンターを兼ねた旧光華殿を抜けて東へ向かうと…

横須賀駅の周辺で見られる近代遺産や関連する記念館など

JR横須賀駅の改札を出て徒歩1分ほど。当初は臨海公園と呼ばれていたが、平成13年に新しく庭園を整備し、ヴェルニー公園と名称を改めた海沿いのエリアがある。幕府からの依頼を受けて1865年に来日したフランス人技術者、フランソワ・レオンス・ヴェルニーの名…

鎌倉近代文学館|旧前田侯爵家別邸、上品な蒼い瓦の洋館と薔薇園

鎌倉の長谷にある前田家の別邸は、もとは第15代当主の前田利嗣が土地を購入し建設した、日本家屋だった。しかし、明治43年の頃に残念ながら焼失。その後も洋風建築に姿を変え、大正12年の関東大震災では倒壊するなど受難を経験してきたが、立て直された洋館…

令和3年に閉室した「八王子市郷土資料館」の収蔵品より:53年の歴史を紡いだ展示場(後に桑都日本遺産センター 八王子博物館へ移転)

2019年2月に「八王子のおまじない」という特別展を見に行った郷土資料館。そこがいつのまにか閉室しており、さらには移転して別の施設になるのだとつい先日知って、驚いた。新しい展示場には桑都日本遺産センター(八王子博物館・通称はちはく)の名称が用い…

令和3年1月に閉館し、5月に解体される「原美術館」の往時の姿|昭和初期の近代建築・洋風邸宅

茂る木立の葉に囲まれて、建物の白い壁に落ちた影はほんのりと蒼く、展望台のように屋根から突出している部分を見上げれば奥に空が広がっていた。窓から漏れる明かりが際立つ橙色なのも、計算されてのことだろうか。原美術館は、財団法人アルカンシェール美…

明治に登場した「勧工場(かんこうば)」- 百貨店の前身、文明開化期を象徴する商業施設|横浜市歴史博物館の模型

客の要望に応じて商品を奥から出してくるのではなく、あらかじめ店内に陳列しておく新しい販売の形態。また購入に際して、値段の決定に交渉を必要としない、いわゆる現金掛け値なし。現代においては当然でも、当時は画期的だった営業の仕方の源流は、他なら…

旧新橋ステンション(国鉄汐留駅)跡の再建駅舎と遺構 - 鉄道歴史博物館

著名なところでは、三代目歌川広重や小林清親。そして、他にも同じ明治を生きた多くの浮世絵師たちが残した、旧新橋停車場のようす。新橋停車場は、1914(大正3年)に東京駅が開業した折、汐留駅と改称することになった。その跡地に立てられている駅舎は、紙面…

近代化遺産《記念艦 三笠》- 明治時代にイギリスで造られた戦艦の復元

ある街や都市の内外を行き交う人間の役割を表現するのに、しばしば血液という言葉を使っている。張りめぐらされた道を血管に見立て、時には内臓のような建物に流れ込み、あらゆるものを機能させる彼らの様子をたとえて。そう考えれば、大きな船はそれ自体が…

ポーラ美術館|企画展《Connections―海を越える憧れ、日本とフランスの150年》とレストランのコラボメニュー

ポーラ美術館で2021年4月4日まで開催されていた企画展は、《Connections ―海を越える憧れ、日本とフランスの150年》と題され、19世紀後半から20世紀初頭にかけて、日本とフランスの二国でどのように文化の交換がなされていたかを美術作品から読み解くものだ…

空を仰いで想うのは:星の王子さまミュージアム・箱根|サン=テグジュペリ

フランスの都市リヨン生まれのアントワーヌ・サン=テグジュペリ(1900~1944)は、優秀な成績を残したパイロットであり、また寡作ながら深く心に刻まれる作品を生み出した作家でもある。代表的な「星の王子さま」は私にとって本当に重要な物語で、今までに何…

東京・下町風俗資料館は不忍池のほとり|明治・大正・昭和の庶民生活が伺える模型の数々

小野不由美の小説《東亰異聞》で「鰯の頭」という言葉を目にしたとき、それが玄関口に飾る魔除けのことだ、とすぐに分かったのは、上野の下町風俗資料館で展示を見ていたお陰だった。私の住んでいる地域にはあまりない風習だったので、それまで存在をほとん…

【其の壱】野外博物館《明治村》で珠玉の近代建築&聖地めぐり - 愛知県・犬山市

近代建築を愛する人間として、一度は絶対に訪れておきたかったのが野外博物館・明治村。入鹿池の西側に面し、岐阜との県境にもほど近い愛知県犬山市にある。アニメ《Fate/Zero》や漫画《ゴールデンカムイ》、ゲーム《明治東亰恋伽》、そしてドラマ《坂の上の…

体感するモダンアート《養老天命反転地》と大正時代の擬洋風駅舎|岐阜県南部旅行(3)

目指すは養老—―鎌倉時代に編纂された古今著聞集内の「養老孝子伝説」で語られ、後に名水百選にも選出された美しい滝と、名産品・瓢箪(ひょうたん)制作の文化が脈々と受け継がれている土地。 実は出発前、そこには不思議な芸術作品があると小耳に挟んでいた…

日本郵船 氷川丸は今も夢想する乗客を運ぶ|海上の博物館船・近代化産業遺産

横浜港は年間を通して多くの船が発着・寄港する場所だが、その片隅――山下公園の向かいで60年近くも係留し続け、博物館として一般に保存・公開されている貨客船がある。それが《日本郵船氷川丸》だ。昭和初期に竣工した豪華な船は、過ぎし大正時代の面影を色…

【訪問したギャラリー・近現代美術中心のまとめ】ロンドンの街で気軽にアート作品に触れられる場所

イギリスの首都・ロンドンには、優れた収蔵品を誇る国立美術館の数々に加えて、無数のアートギャラリーが存在している。特にモダンアートやコンテンポラリーアートに興味があるなら、より訪れたいのは後者だろう。広大な街のどこかで常に何らかの展示が行わ…

光源としての瓦斯(ガス)と明治~大正時代の日本|GAS MUSEUM がす資料館にて

突然だが、先日アニメ版《鬼滅の刃》を26話まで視聴した。作品の舞台は、大正時代の日本だ。フィクションではあるものの実際に存在する場所が度々描かれており、アニメ第七話で主人公一行が浅草に辿り着いた際は、暗闇に浮かぶ電気館らしき建物や凌雲閣の姿…

明治の長崎に住んだ外国人商人たちと居留地の面影~グラバー園の邸宅群|長崎市旅行(3)

港町・長崎は洋館の宝庫だ。訪問時は肌寒い空気を感じつつ街歩きを楽しんだのに加えて、グラバー園で3つの重要文化財指定建造物を中心に、各所から移築された貴重な洋館群を記憶と写真に収めた。なかでも旧グラバー住宅は明治日本の産業革命遺産を構成するう…

東京都庭園美術館《1933年の室内装飾 朝香宮邸をめぐる建築素材と人びと》に見るアール・デコの結晶|建物公開展2019

白金台(しろかねだい)の西端を占める皇室の土地。そこに建つのが、旧朝香宮邸――現・東京都庭園美術館。昭和初期に日本で完成した数ある洋風の邸宅の中でも、いっとう美しい作品の一つだと私は思っている。クリーム色の外観は装飾の少ないすっきりとした佇…

昭和初期の洋館「松籟荘」の遺構を見つけた茅ヶ崎散歩:高砂緑地と美術館、そして海辺

まだ肌寒かった頃の話だ。森や山が好きなのに、その全く逆の方角へと足を運んだ。私は偶にそういうことをしたくなる。仕事が休みになったので自由な時間が選べたのと、平日で電車もある程度空いているだろうという算段で唐突に予定を組んだような気がするが…