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彷徨する自由帖

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蒼穹の大山阿夫利神社へ雨乞いに - 神奈川県・伊勢原探訪

どこか標高の高い場所へ行こう、と思い立ったのに、さしたる理由はなかった。……強いて言うなら、空気がひどく乾燥していたからかもしれない。昨年の1月末から2月にかけて、かなり長いあいだ、雨の降らない時期があったことを覚えている。あまりにも湿気が足…

人を喰う城郭

音を吸う存在としてよく話題に上るのは雪だが、実際のところ、石も似たようなものだと思う。特に、柔らかいもの。表面が磨かれておらず微細な穴が開いていたり、経年による風化で、少なからず傷が付いていたりするものが。それに気付かされたのが多分この場…

復元された出島の建築物~オランダ・日本間の貿易と鎖国期の面影|長崎市旅行(5)

長崎の出島。そこは200年以上もの長きにわたり機能した、鎖国中の日本において唯一公的な港だった。特にオランダ東インド会社との貿易の重要な拠点として。またその少し前、島原・天草一揆の勃発する直前には、ポルトガル人を収容していたこともある。人や物…

当ブログの総記事数が100件になりました

タイトルの通り、ブログの総記事数がようやく100件になりました。祝。2年前の1月から書き続けてこれなので超・亀更新です……。しかし、そもそも此処は大学の課題の合間、訪れた旅行先の記録が残せればいいなと思って始めたものなので、それも当然かと。徐々に…

博物館《明治村》で珠玉の近代建築&聖地めぐり。心躍るハイカラなお散歩を - 愛知県犬山市

近代建築を愛する人間として、一度は絶対に訪れておきたかったのが野外博物館・明治村。入鹿池の西側に面し、岐阜との県境にもほど近い愛知県犬山市にある。アニメ《Fate/Zero》や漫画《ゴールデンカムイ》、ゲーム《明治東亰恋伽》、そしてドラマ《坂の上の…

水の町・大垣に建つ城と 謎多き関ケ原ウォーランドへ……|岐阜県南部旅行(4)

外を歩けば目に入るのは、町並み全体を俯瞰する城が一つ。言うまでもなく大垣城である。今では本丸と天守の周辺が公園となっている程度の広さだが、かつてはその三倍以上もの面積を誇る、堅牢な一大要塞だった。町中にグルグルと張り巡らされた水路もその名…

六畳程度の小さな部屋

まるで自身の脳内や心理をそっくり映し出したかのような部屋は、所狭しと置かれている物品の傾向だけでなく、微妙な散らかり具合までもが私の持つ性質にそっくりだ。幼少の頃から幾度か小さな引っ越しを繰り返してきたので、10年以上じっくりと腰を据えて造…

《少年》谷崎潤一郎 - 和洋折衷の大邸宅で、ちょっと背徳的な「遊び」に興じる子供たち|耽美な近代文学

開港や文明開化の影響、そして政府の意向もあり、公共の施設をはじめとした数々の建造物が洋風の趣を纏うようになった明治時代。その頃は官庁や銀行、学校、駅舎などに見られる様式が代表的な例だった。当時の市井の人々(今もそうかもしれない)にとって、…

体感するモダンアート《養老天命反転地》と大正時代の擬洋風駅舎|岐阜県南部旅行(3)

目指すは養老—―鎌倉時代に編纂された古今著聞集内の「養老孝子伝説」で語られ、後に名水百選にも選出された美しい滝と、名産品・瓢箪(ひょうたん)制作の文化が脈々と受け継がれている土地。 実は出発前、そこには不思議な芸術作品があると小耳に挟んでいた…

旧横浜ゴム平塚製造所記念館 - 明治期の建築『八幡山の洋館』で時間を忘れる

横浜港周辺や横須賀、鎌倉、そして箱根に小田原と、神奈川県内には優れた近代建築を拝めるエリアが沢山ある。いち県民としては本当にありがたい……。だが、それらから少し離れた平塚の地にも、魅力的かつ貴重な明治時代の洋館が一件佇んでいることはあまり知…

記事を寄稿しました:以前は名の知れた歓楽街、柳ヶ瀬。その隆盛を偲びつつ商店街の小路を歩く - WEBメディア〈すごいお雑煮〉へ

久しぶりに外部で執筆した記事の紹介です。先日、webメディア〈すごいお雑煮 - 地味に役立つニュースサイト〉さんにて、岐阜旅行中に見つけた一角「柳ヶ瀬商店街」を紹介したものを掲載していただきました。以下が記事へのリンクになります。まず、念願だっ…

金華山に鎮座する岐阜城、正法寺の籠大仏、伊奈波神社めぐり|岐阜県南部旅行(2)

特に斎藤道三と織田信長にゆかりあるこの山と城は、名を変えたり焼失したりしながらも、戦国の時代から続くこの岐阜の地を俯瞰し続けてきた。しかし、美濃を制す者が天下を制す――とまで言われた難攻不落の城といえど、決して不滅ではない。現在の天守は昭和…

川原町の情緒ある風景と喫茶店、そして近代の洋風建築を見に|岐阜県南部旅行(1)

日本三大河川の一つに数えられる美しい長良川は、毎年5月から10月頃にかけて、伝統的な鵜飼(うかい)の行事が行われる舞台でもある。その静かな流れと深い青緑色には用が無くても足を止めざるを得ない。豪雨が降れば水位は増し、古来から災害を恐れてきた人…

趣味に生きる人間が『好き』を楽しめない時期はとても辛い

人生がしんどい、存在がしんどい、そんな根源的な辛さをわりと頻繁に感じる。理由など分からないが面倒な人間なのだ、自分は。こればかりは外野から何を言われたところでどうしようもない。とはいえ、この世に生きる大多数の人だって、軽いか重いかにかかわ…

百 "貨" 繚乱の時代:大正初期の三越本店と日比翁助、英国ロンドンのハロッズ

白亜の城か、大邸宅を思わせる5階建て。地下もある。眼前に現れた荘厳な百貨店の玄関脇には、まるで神社の狛犬のように鎮座する、一対のブロンズ製の獅子がいた。それを横目に建物の内部へ足を踏み入れつつ、一歩先を行く連れに他愛もないことを問いかける。…

草津温泉を愛した明治のお雇い外国人・ベルツ博士

町へ近付くにつれて、車を降りる前から独特の匂いが鼻についた。白根火山の恩恵を受け、毎分3万2千リットル以上の豊かな湯が湧き出る土地・草津。いま記事を書きながら開いている本《ふしぎ地名巡り》にはこう記載されている。一説によると草津の地名は、硫…

境界線の向こう側で行われる営み:映画《ミッドサマー(Midsommar)》の感想と覚え書き

アリ・アスター監督の映画《ミッドサマー》を見た感想と、監督のインタビュー記事や解説を読んで考えた事色々。ごく個人的かつ偏った見解です。※物語の内容・場面・登場人物に言及しているのでネタバレ注意。監督がインタビューの中で「ダニーには私自身がた…

日本郵船 氷川丸は今も夢想する乗客を運ぶ|海上の博物館船・近代化産業遺産

横浜港は年間を通して多くの船が発着・寄港する場所だが、その片隅――山下公園の向かいで60年近くも係留し続け、博物館として一般に保存・公開されている貨客船がある。それが《日本郵船氷川丸》だ。昭和初期に竣工した豪華な船は、過ぎし大正時代の面影を色…

内の顔・外の面

家の外で、知らない人間に突然話しかけられるのが苦手だ。というか大嫌い。例えば歩いていて道を訊かれたり、座っていたら隣の人に雑談を持ちかけられたり、撮影を頼まれたり…… 挙句の果てには何かの勧誘や、驚くことに「歌を聞いてくれ」などと言われたこと…

小雨ふる新吉原遊郭跡 - 樋口一葉の《たけくらべ》を片手に歩く、静かな昼の旧花街

昔も今も変わらない、人が誰かを恋い慕う心。だがその向かう先、行きつく場所はそれぞれに違う。私が折に触れて読み返す、樋口一葉著の短編《たけくらべ》には、決して声高に叫ばれることのない感情のやりとりと結ばれ方がとても丁寧に描かれていた。時代は…

お茶の時間に囚われる:時に食事も "tea" と呼ぶ彼らに倣えば

私にとって、元気――というか、活力の源は間違いなく「お茶の時間」だ。日常の中にそれがあるから何とか生きていられる。叶うならば、延々とお茶会をしていたい。そこが洋室でも和室でも、一人だろうと複数人いようと構わない。飲むものと食べるものを机の上…

稲佐山と坂道と街歩き~レトロな電気軌道に運ばれて|長崎市旅行(4)

長崎を歩き回る際、電気軌道という乗り物にはとてもお世話になった。私はこの呼称が好きだ。単に路面電車やトラム、と表現するよりもずっと。街に張り巡らされた線路を辿る車両、その軌道が100年以上変わらずにあることに、どこまでも深い感慨を抱く。時間を…

家に籠り、放浪を渇望する睦月

流行り病が怖くて、仕事以外の日はすっかり家に籠っている。もう一月も終わる。呼吸器系が昔から弱いので「肺炎」の言葉を耳に入れるだけでも恐ろしい。旅行や散策をしようと思うものの、どうしても大型の駅や空港を経由することになるため、その辺でうっか…

ロンドンの街で気軽にアート作品に触れよう【訪問したギャラリーまとめ・現代美術が中心】

イギリスの首都・ロンドンには、優れた収蔵品を誇る国立美術館の数々に加えて、無数のアートギャラリーが存在している。特にモダンアートやコンテンポラリーアートに興味があるなら、より訪れたいのは後者だろう。広大な街のどこかで常に何らかの展示が行わ…

《文字禍》中島敦 - アッシリア|近代日本の小説家による、外国を舞台にした短編のお気に入り(4)

文字の霊などというものが、一体、あるものか、どうか。中島敦の短編《文字禍》はこんな書き出しで始まる。題の字を読むごとく、文字による禍(わざわい)の話だ。舞台は遠い昔の新アッシリア帝国。そこで紀元前7世紀頃に支配者として君臨していたアッシュー…

ウズベキスタン旅行記(5) 首都タシケント:美しい地下鉄駅と黄煉瓦のナヴォイ劇場、残る旧ソ連の空気

サマルカンドとシャフリサーブスを観光した後、タシケント(タシュケントとも。古くはチャーチュ、石国などと呼ばれていた)を訪れた。一番初めに降り立った都市でありながら、実際に色々と見て回ったのは最後。ここはソビエト統治時代から現在に至るまで、…

旧柳下邸&横浜競馬場跡がふしぎな郷愁を誘う - 根岸にある近代の建物ふたつ

根岸駅から徒歩10分もかからない程度の距離にある、緩やかな丘の上には、細身のさんかく屋根が目立つお屋敷が建っている。頂点にいただくのは銅の棟飾りで、目の前にはシュロのような南国風の木が何本か。写真を撮りながらさらに近付いてみると、その洋館は…

塔|言葉の残骸

あの塔が完成間近で見捨てられてからというもの、人間の舌にはすっかり強固な呪いがかけられてしまっている。それは世代を超えて繰り返され、より複雑に僕たちの身体に編み込まれ、もう誰も、かつての人々のようには想いを誰かに伝えられない。かつての人々…

目標を追わない。決意をしない。そして、少し駄目になりたい

最近は無気力で色々なことがどうでもいい。可能ならば、気の済むまで延々と眠っていたいとすら思う。……では、本当の本当に何もしたくないのか? と訊かれれば、いや実はそういう訳でもないんだと否定したくなる程度には興味関心が潰えていないから、厄介だ。…

《文明開化と近代日本の跡》めぐり|和洋館・産業遺産などの建築物や、当時を学べる博物館【国内旅行&お散歩まとめ】

平成から令和へと、年号が変遷した2019年が過ぎ去った。数年前に一人で旅行し始めてから引き続き、今年も決して多くはないけれど、色々な場所を訪れることができた……と思う。特に国内で重点的に巡ったのは明治・大正・昭和初期に建てられた邸宅や史跡。その…