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彷徨する自由帖

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《うたかたの記》森鴎外|近代日本の小説家による、外国を舞台にした短編のお気に入り(1)

本が好きだ。なかでも、小説を手に取ってよく読む。 けれど「読書家である」と胸を張って言えるほどに冊数を重ねているわけではない。この世の中には"本の虫"としか表現のできない類の人達が沢山いて、一日に一冊以上の本を、まるで息をするように読んでいる…

世界遺産・大浦天主堂~日本二十六聖人と信仰の軌跡を辿って|長崎市旅行(1)

1953年に日本の国宝へと再指定、そして2018年には世界文化遺産に登録された、長崎の大浦天主堂。今年の春に私が訪れた際には、修繕完了後の真っ白な外壁が小高い丘の上で陽の光を受け、輝いていたのを思い出す。ポルトガル人の宣教師フランシスコ・ザビエル…

洋館の跡を見つけた茅ヶ崎散歩:高砂緑地と美術館、そして海辺

まだ肌寒かった頃の話だ。森や山が好きなのに、その全く逆の方角へと足を運んだ。私は偶にそういうことをしたくなる。仕事が休みになったので自由な時間が選べたのと、平日で電車もある程度空いているだろうという算段で唐突に予定を組んだような気がするが…

虚無と焦燥の住まう部屋で

一日外に出たら三日は家に籠りたい。常日頃からその位のペースで生活をしたいと思っているが、殊に夏はその思いが一層強くなる。気温と湿度が、働くのと遊ぶのに必要な、精神力と体力の双方を容赦なく私から奪っていくからだ。ただでさえ疲れやすい性質であ…

《塩田千春展:魂がふるえる》を鑑賞した記録|六本木・森美術館にて

先日、六本木ヒルズの森美術館で開催されていた《塩田千春展:魂がふるえる》へと足を運んだ。これは氏の初となる大規模な個展らしく、平日にもかかわらず、会場には人が集まり賑わっていた。今回の会期中には並行して、銀座の商業施設 GINZA SIX の吹き抜け…

エジプト・カイロ周辺旅行(5)|ギザ平原の大ピラミッドと悠久の時を超えて佇むスフィンクス

カイロからおよそ20キロ、ナイル川を挟んで西側に位置するネクロポリスが、今回の旅行で最後に訪れた都市ギザ(ギーザ)だ。古代エジプトの王族や神官たちが多く眠るこの場所は、今ではエジプトの代表的な観光地。遺跡の残る位置から少し離れた市街地に立っ…

エジプト・カイロ周辺旅行(4)|王家の埋葬地――サッカラとダハシュールの墳墓・ピラミッド郡を訪ねて

多くの謎に包まれた、古代エジプトのピラミッド郡。なかでも有名なのはクフ王の大ピラミッドだと思うが、それが聳え立つギザの平原を背にして不思議な生き物・スフィンクスがじっと前を見据えている光景は、今も昔も変わらずエジプトを象徴するものとなって…

自分が会社で働くなんて、到底無理だと思っていたけれど(なんとかやれている)

現在の職場に勤めはじめてから、約半年の期間が経過した。ちょうどお正月の少し前頃から本格的に業務に携わっているので、この年は新しい仕事との出会いで幕を開けた、といっても過言ではない。何というか、本当にあっという間だった。必死にしがみついてい…

エジプト・カイロ周辺旅行(3)|歴史ある雑多なハーン・ハリーリ市場とマニアル宮殿の散策

砂漠の国の、雰囲気ある市場に憧れたことのある子供はきっと多い。幼い頃の私もそうだった。人々が行き交う活気ある場所で、自分の国では見たこともないような品物を眺めて歩くのは、どんなに面白いだろうかと。カイロにあるハーン・ハリーリ(Khan El Khali…

とても正気じゃ暮らせない世界で、静かな熱狂の麻酔を切らさない:HSPの生存戦略

HSP(Highly Sensitive Person, 直訳すると「とても敏感な人」)という言葉の知名度は、少しずつ上がってきているように思う。それに伴って、「自分はHSPだ」と自認する人の数も増加しているのではないだろうか。これは米国の心理学者・アーロン博士が1996年…

エジプト・カイロ周辺旅行(2)|広大な考古学博物館を興奮しながら駆け回った記録

私達の心をいつの時代も惹きつけてやまない、古代文明の遺産。エジプト、という言葉の響きから多くの人々が反射的に連想するのは、ピラミッドの丘や王家の谷の葬祭殿、墓荒らしの手を逃れて生き残った副葬品をはじめとする、数多くの史跡・宝物だろう。現地…

エジプト・カイロ周辺旅行(1)|絢爛なムハンマド・アリー・モスクは街の小高い丘の上

古代文明のロマンと中世以降のイスラーム文化が交差する国、エジプト――。先月末、私は現地の都市カイロとギザを訪れる機会を得て、嬉々として成田空港から飛行機に乗り込み旅立ったのだった。そもそもイギリスから帰ってきて以来、半年以上の間を開けた国外…

イギリスの美大を中退しようと決めたときの話

昨年のいまごろ自分が考えていたことを、細部まではっきりと思い出すのは意外と難しい。けれど、私が大学を辞めるという重大な決断をするにあたって、心に生じた多くの「迷い」からひとつずつ答えを引き出そうと試み、奮闘していたことは確かだ。人が中途退…

よこはま動物園ズーラシア・空想散歩

じっと椅子に座っているよりも、散歩などで身体を動かしていた方が新しいアイデアが生まれやすい、という説を耳にする機会が以前よりも多くなった。上のTED Talksで語られている例もそのうちの一つだ。人が創造的なアイデア(ここでは「現実的かつ新奇」であ…

公園に出現した《ロンドン・マスタバ》クリスト&ジャンヌ=クロードのアートプロジェクト:街の中の現代美術

2018年の6月中旬から9月末まで、英国・ロンドンの中心部にあるハイド・パーク内では、ある巨大な現代美術作品を見ることができた。プロジェクトのタイトルは《The London Mastaba(ロンドン・マスタバ)》といい、二つの側面が等脚台形になるよう大量のドラ…

名古屋を散策する(3):覚王山の揚輝荘・聴松閣と、洋菓子店のスイートポテト|愛知県旅行

二葉館を見学した後は高岳(たかおか)という地下鉄の駅から桜通線に乗り、今池で東山線に乗り換えて、覚王山で下車した。付近には覚王山日泰寺というお寺があり、それが区域の名前の由来となっている。名古屋の中心部から少し離れているここは、おしゃれな…

飢餓に苛まれながら、他人にパンを与えることができるか - 英国が舞台の児童文学《小公女》より

これは、言わずと知れた名作児童文学《小公女》の終盤にある場面。孤児になったと思われていたが身元の引受人が現れ、ミンチン女子学院を去ることが決まった少女・セーラと、紆余曲折の末にようやく彼女を見つけた資産家・カリスフォード氏の間で交わされた…

名古屋を散策する(2):文化のみち~和洋折衷の邸宅群をめぐる|愛知県旅行

教会を出てから引き続き、文化のみちを歩いていった。今回は白壁・主税・橦木エリア内にある、三つの邸宅を訪れた感想を書こうと思う。どの建物も明治末期から大正時代に建造が開始されたもので、和洋の意匠や様式がおもしろく組み合わされており、見ていて…

ロンドン芸術大学のようす:チェルシー・カレッジのファインアート学部

私は2016年の秋から美術(Fine Art)を学ぶ正規留学生として、イギリスの首都・ロンドンに2年と少しの間滞在していた。学校名はロンドン芸術大学で、セントマーチンズ・カレッジのファウンデーションコース修了後に、チェルシー・カレッジの学部(BA)へと進…

夢の島熱帯植物館の大温室を歩く|東京都・新木場にて

江東区の夢の島公園には大温室の占める一角がある。新木場駅から歩いて15分ほどで辿り着けるそこは、夢の島熱帯植物館(よく表記を間違えられるが植物"園"ではない)と呼ばれている場所だ。付近は閑散としていたが、野球場や競技場などスポーツに関連した施…

名古屋を散策する(1):文化のみち~レンガの市政資料館から主税町教会まで|愛知県旅行

私にとっては二度目の訪問となる愛知県名古屋市。前回の季節は夏のはじめで、今回は冬のさなかだった。1泊2日の旅、初日は快晴、帰りは小雨。大きな寒波に見舞われることなく過ごすことができたけれど、おそらくは花粉の飛散によるくしゃみと鼻水に苦しめら…

ごあいさつ:ブログの概要&自分について

初めましての方もそうではない方も、訪問ありがとうございます。自身の旅行先について調べたことや写真、または独り言などをここに掲載するようになってから、1年以上の期間が経ちました。早いものですね。ちなみに、一番最初に投稿した記事はこれです。秋の…

箱根登山鉄道の魅力と1月の大涌谷|ただ風景を見るだけの日帰り旅行

この間、箱根の方まで出向いた。特に用事があったわけではなく、見たいものがあったわけでもない。ただ何となく。考えてみれば、自分がどこかへ行く時は理由があるからではなくて、目的地を決めてからその理由を後付けで考えていることの方が多いということ…

急上昇・急降下を繰り返す気分と向き合う:気分循環症という厄介な性質

何かとても嬉しいことがあって、天にも昇るような心地がする。またはひどく悲しい出来事に遭遇して、どん底まで落ち込んでしまう――。このように、目の前で起こったことに反応して人間の喜怒哀楽が変化するのは正常なことだ。だが、もしも自分の感情や気分が…

謎多き世界遺産《ストーンヘンジ》を訪れる――当時のイギリスに思いを馳せて

はるか昔に人為的に造られたものらしい、ということは判っているが、その目的が未だに不明な遺跡はこの地球上に無数に存在している。例えばイースター島のモアイ像、古代エジプトのピラミッド、ジャームのミナレット等――そして、英国の平野にのこる「ストー…

千本松牧場と、展望塔から眺めた蒼い山々|東京から在来線で行く栃木・那須塩原(2)

ピラミッド元氣温泉で一夜を過ごした後、朝にはまた軽くお湯に浸かり、チェックアウト時間ぎりぎりまで二度寝をしてしまった。お布団は人間を引き込む魔のような存在だから、あまり心を許してしまわないよう気を付けないといけないと改めて強く思う(睡眠が…

噂の《ピラミッド元氣温泉》に宿泊してみた|東京から在来線で行く栃木・那須塩原(1)

事の発端は、少し変わった温泉旅館のサイトURLが友人から送られてきたことだった。その名前は《ピラミッド元氣温泉》という。検索をかけると「元『気』温泉」と表記されているものが多く見られるが、実際には「氣」という漢字を使うのが正確であるらしいので…

ロンドンミュージカル:アポロ・ヴィクトリア劇場で観た《ウィキッド》&ウエスト・エンド周辺のお手頃なレストラン

名作児童文学《オズの魔法使い》に登場する、「南の善い魔女」グリンダと「西の悪い魔女」エルファバ――。これは、少女ドロシーがカンザス州からオズ王国にやってくる以前のお話。大衆から邪悪な存在だという烙印を押されることになってしまった、エルファバ…

レアンドロ・エルリッヒの不思議な《スイミング・プール》を鑑賞する|金沢21世紀美術館

大盛況だった《見ることのリアル》展はもう終了してしまったが、幸いにもレアンドロ・エルリッヒの作品をいつでも鑑賞し、体験することのできる場所が日本にある。それが石川県の金沢21世紀美術館だ。今回は、そこに恒久展示として設置されている《スイミン…

オックスフォードの街で:いろいろな博物館と植物園、スロバキア料理を楽しむ

権威ある大学が位置する場所として名高く、"夢見る尖塔の街"という優美な愛称でも呼ばれるオックスフォードの街は、ロンドンからは電車でたった1時間ほどと気軽に散策をしに訪れることができる。ここにはいちど気の向くままに歩き回った時の記録に加えて、そ…