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彷徨する自由帖

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留学生時代

イギリスの美大留学中の記録

ひるまの電飾がたたえた光は不自然で妖しい|イングランド北部・リーズ (Leeds)

曇った空の下では、ものの姿が必要以上に強調されて、やけに「はっきり」と見える。色も形も。単純な光量の点では、雲が太陽を隠していない時よりも劣るはずなのに、ずっと明瞭に。とても不思議なことだった。暗闇とまた、全然違う。誤解を招くのを承知で言…

これまでの【海外旅行・散策】記事まとめ

掲載している国はイギリス、ノルウェー、エジプト、マルタ、ウズベキスタン。一部、イギリス留学期間中(2016~2018)の散策を後に記録したブログも含みます。ここにあるのはすべてが読まれてほしい記事、大切な思い出の証明。まだここにまとめられていない…

渡り鳥みたいに移動する遊園地・ロンドン

数々のお話に出てくるサーカスや芝居小屋は、決まって怪しく魅力的だった。すべての興行が終われば忽然といなくなる。開催期間のあいだだけ、そこにいる。街の片隅に発生した蜃気楼みたいな性質も、そんな一時的かつ限定的な存在のおもしろさを強調している…

方丈記、夏目漱石、テムズ川:都に暮らす

寝台に横たわったまま耳を澄ました。雨の音も、風の音も聞こえない。それでいて休講日である。首だけを動かしてカーテンのわずかな隙間から外をうかがい、どうやらよく晴れているらしいと天候を把握した瞬間、嬉しさでにわかに働き出した心が身体に外出の支…

巡礼者の街カンタベリーにある12世紀の宿泊施設 - イーストブリッジ・ホスピタル|英国南東部ケント州

ロンドン中心部から東へ90kmほど進んだ場所、ケント州の北東に位置するカンタベリー。そして噂の大聖堂の入口が以下の写真。通常は参拝者や見学者がここから敷地内に足を踏み入れるのだが、私はそうしなかった。また、ブログ記事のタイトルからも分かるよう…

繊細かつ鋭い歌詞が魅力的なイギリスのシンガーソングライター、ローレン・アキリーナ (Lauren Aquilina) の楽曲

留学生時代、ロンドンで暮らしていた頃にはじめてその存在を知ってから、今に至るまでずっと聴き続けている歌手の楽曲がある。私と同い年のシンガーソングライター、ローレン・アキリーナ(Lauren Aquilina)。両親はマルタ共和国出身で、イギリスの都市ブリ…

【訪問したギャラリー・近現代美術中心のまとめ】ロンドンの街で気軽にアート作品に触れられる場所

イギリスの首都・ロンドンには、優れた収蔵品を誇る国立美術館の数々に加えて、無数のアートギャラリーが存在している。特にモダンアートやコンテンポラリーアートに興味があるなら、より訪れたいのは後者だろう。広大な街のどこかで常に何らかの展示が行わ…

イギリスの美大を中退しようと決めたときのこと

昨年のいまごろ自分が考えていたことを、細部まではっきりと思い出すのは意外と難しい。けれど、私が大学を辞めるという重大な決断をするにあたって、心に生じた多くの「迷い」からひとつずつ答えを引き出そうと試み、奮闘していたことは確かだ。人が中途退…

公園に出現した《ロンドン・マスタバ》クリスト&ジャンヌ=クロードのアートプロジェクト:街の中の現代美術

2018年の6月中旬から9月末まで、英国・ロンドンの中心部にあるハイド・パーク内では、ある巨大な現代美術作品を見ることができた。プロジェクトのタイトルは《The London Mastaba(ロンドン・マスタバ)》といい、二つの側面が等脚台形になるよう大量のドラ…

ロンドン芸術大学のようす:チェルシー・カレッジのファインアート学部

私は2016年の秋から美術(Fine Art)を学ぶ正規留学生として、イギリスの首都・ロンドンに2年と少しの間滞在していた。学校名はロンドン芸術大学で、セントマーチンズ・カレッジのファウンデーションコース修了後に、チェルシー・カレッジの学部(BA)へと進…

謎多き世界遺産《ストーンヘンジ》を訪れる - 当時のイギリスに思いを馳せて

はるか昔に人為的に造られたものらしい、ということは判っているが、その目的が未だに不明な遺跡はこの地球上に無数に存在している。例えばイースター島のモアイ像、古代エジプトのピラミッド、ジャームのミナレット等――そして、英国の平野にのこる「ストー…

ロンドンミュージカル《ウィキッド(Wicked)》とウエスト・エンド周辺のお手頃なレストラン

名作児童文学《オズの魔法使い》に登場する、「南の善い魔女」グリンダと「西の悪い魔女」エルファバ――。これは、少女ドロシーがカンザス州からオズ王国にやってくる以前のお話。大衆から邪悪な存在だという烙印を押されることになってしまった、エルファバ…

オックスフォードの街で:数々の博物館や植物園、スロバキア料理を楽しむ

権威ある大学が位置する場所として名高く、"夢見る尖塔の街"という優美な愛称でも呼ばれるオックスフォードの街は、ロンドンからは電車でたった1時間ほどと気軽に散策をしに訪れることができる。ここにはいちど気の向くままに歩き回った時の記録に加えて、そ…

留学中のロンドン "借り暮らし" 遍歴~ホームステイから学生寮、フラットシェアまで

私がイギリス、ロンドンで2018年の秋まで暮らしていた家の最寄り駅周辺では、そこに足を運ぶたび、路上で寝ている人達を真冬でもたくさん目にした(線路の高架が屋根代わりになっていたので特に多かった)。別に珍しいものではない。世界中のあらゆる国、も…

ブレナム宮殿と羊 - ウッドストックの世界遺産へ足を延ばす

かの偉大な英国元首相、ウィンストン・チャーチルの生家であり世界遺産にも登録されているブレナム宮殿――オックスフォードシャーの片隅にある、その広大な庭の発展に大きく貢献したのもまた、ケイパビリティ・ブラウンなのだ。ブレナム宮殿は、アン女王の時…

イギリス留学と私生活の転機:他人のお金で大学に行くのはやめる

確かに、幼少期からある種の「生きづらさ」はずっと抱えていた。それでも人生の中で、自分が精神疾患と名の付くものの当事者になることがあるとは全く思いもしなかった。経済的な自立をしていないことから引き起こされた抑うつと、気分障害の著しい悪化にと…

南西ロンドン散歩:リッチモンドからキングストン、そして宮殿の前まで

南西ロンドンにはいろいろなものがあるが、最近ではテニスの大会、ウィンブルドン選手権の話題を頻繁に耳にするようになった。試合はその名の通りにウィンブルドンのエリアで開催されている。他にも周辺地域は川沿いの宮殿や植物園、マーケットなど見どころ…

イギリス風景式庭園の代表格《ストウ (Stowe)》その発展と景観について

イギリス風景式庭園と呼ばれる様式のなかでも、ジョージアン時代の傑作であるストウ庭園を探索するのは楽しい。思えば私はイギリスに来てからというもの、晴れた日に公園を訪れることがすっかり好きになってしまった(正確には、数少ない晴れの日に外へ出て…

ロンドン・ハムステッド周辺散策:ケンウッド・ハウス、フロイト博物館とジョージア料理店

ここには北部に広がるハムステッド・ヒースをはじめとし、その端にある17世紀の邸宅や住宅街の隅の博物館、そしてジョージア(グルジア)料理店などについて周辺地域の散策や施設訪問の記録を残しておく。また新しい場所を見つけ次第、記載する項目が増えて…

コッツウォルズ南部でのイースター休暇|バイブリー、カッスル・クームとテットベリー周遊

三月の中旬から四月の頭にかけて、英国の街のあちこちで徐々に見かけるようになるのが卵やひよこ、ウサギ、そして羊といったようなモチーフやそれを用いた製品の数々だ。磔刑にされたキリストのその後の復活を祝うとされるこの春の行事は、イギリスだけでは…

ストラトフォード=アポン=エイヴォン周辺で過ごす週末

敬愛する、小説家でもあり文学研究者でもある人間の作品からの引用で自分の旅行記を始めるというのは、何とも恐れ多いことだ。心からそう思う。ちなみに、上に引用されている文章のうちの「御祭」はキリスト教における復活祭であるイースターのことを指して…

ウォレス・コレクション(The Wallace Collection):貴族の邸宅で触れる古典絵画の世界|ロンドンの美術館

ウォレス・コレクション(The Wallace Collection)はロンドンにある類似の施設の中でも、ナショナル・ギャラリーやヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A)などに比べると大きく取り上げられることの少ない美術館のうちの一つだと思う。その存在に気…

ヨークシャー・デイルズ国立公園:イギリス留学中のクリスマス休暇旅行(2)

ブロンテ姉妹の出身地であるハワースの村や日本の皇族である佳子さまの留学した都市であるリーズを内包しているのが、イングランド最大のカウンティ、すなわちこの旅の後半に私たちが動き回った地域であるヨークシャーなのである。

湖水地方の宝石・バターミアへ辿り着くまで:イギリス留学中のクリスマス休暇旅行(1)

昨年の年末に訪れた、著名な湖水地方とその隣に広がるヨークシャー・デイルズ国立公園はイングランド北部のスコットランド国境にほど近い場所に位置しており、実に素晴らしい景観を楽しむことのできる場所だ。特に湖水地方は数多くの観光客が年間を通して足…

コッツウォルズ北部の街と村めぐり・アフタヌーンティー

昨年9月の頭、本格的に大学の授業が始まる少し前の時期に、私は幸運にもコッツウォルズの方面へと足を運ぶ機会を得ることができた。その際に訪れたのはチッピングカムデン、ブロードウェイ、ストウ・オン・ザ・ウォルド、そしてボートン・オン・ザ・ウォータ…