chinorandom

彷徨する自由帖

MENU

ご挨拶:当ブログの概要、お仕事について

ライティングのお仕事に関してはメールにて詳細をご提示の上、ご相談ください。仕事内容・掲載媒体と形式・締切・報酬額と振込時期など、詳細な情報のご記載がないメールにはお返事をしかねる場合が多いです。申し訳ありませんが、あらかじめご了承ください…

宇田和子「ブロンテ姉妹の食生活:生涯、作品、社会をもとに」プディング、は料理かデザートか?|ほぼ500文字の感想

イギリス文学に頻繁に登場するプディング(pudding)とは一体何なのか。物語の舞台や年代によって、それは肉料理であったり、デザートであったりする。基本的に「蒸した料理の総称」であるプディングはどちらの姿でもあり得る。私が現地で食べたヨークシャー・…

角を曲がればネッスルコーヒーに当たる

もう営業されていない商店の建物だった。道路に面したファサードの上部が平たくなっていて、大きく店名が書いてある典型的な造り、これは誰が見てもそうと分かる「らしい」佇まい。つやのある、たばこ小賣所と書かれたホーロー看板(琺瑯風の看板)。周辺は…

昭和後期×オカルトブームADV「パラノマサイト FILE23 本所七不思議」感想

ホラーミステリーADV「パラノマサイト FILE23 本所七不思議」をプレイした。いつもは明治・大正時代から昭和"初期"にかけて生まれた近代遺産を巡ったり、当時の文化に思いを馳せたり、関連する文学作品などを楽しんだりしているこのブログの管理人。パラノマ…

鉄道、辨當、食堂車|ほぼ500文字の回想

お弁当に限らず、旅客を乗せ中距離以上を走る鉄道と食事とは不可分で、現在と異なり20世紀までは多くの路線で「食堂車」を有した列車が運行していた。在来線の特急でも。まるっきり私の記憶にはない時代。夏目漱石の小説「虞美人草」にも食堂車の「ハムエク…

身不知(みしらず)の柿を食べた夜 - 居酒屋《ぼろ蔵》福島県・会津若松

明かりの灯った小さな店舗。古い蔵を改装し営業している居酒屋で、名前もそのまま「ぼろ蔵」という。飲みながら食べたものは揚げ餃子、ほっけの塩焼き、そして玄米おこげのチーズ焼き。どれも日本酒に合う美味しい料理だった。玄米おこげのチーズ焼きに関し…

小説作品が「不快なものを見て消費したい方にオススメ」という言葉で紹介され、出版社側のKADOKAWA公式がそれを特に是正せず引用していたこと

「限られた人生の時間を、わざわざ不快なものを見て消費したい方にオススメ」……この言葉が組み込まれた投稿を引用し、それに便乗する形で、公式アカウント「KADOKAWAさん@本の情報」により6つの作品が紹介された。これといった語句の訂正などが行われること…

あまいは砂糖の甘さに非ず

芳春が過ぎゆくと、徐々に桜の枝先から萌す新しい青い芽。それは、この時期に見られる中でも「あまい」ものの筆頭である。確かな光沢があるのに、どこかしっとりとした風貌。ごく細かい産毛でも生えているかのような表面。ある程度面積が増えると葉の表と裏…

【宿泊記録】窓に障子、中町フジグランドホテル - 七日町や栄町散策の拠点として|福島県・会津若松

11月の会津若松では、夜の空気は刺すような冷たさだった。文字通りに痛いくらいの。過ごしやすかった昼間の日差しが嘘のように、みるみるうちに天が青く、暗くなり、やがて思わず首を引っ込めてしまう程の容赦ない風が顔に吹きつけるようになる。宿泊したフ…

【宿泊記録】デュークスホテル博多にて - 和・洋・粥から選べる朝食、駅西側から徒歩2分|九州・福岡ひとり旅

羽田を出、博多空港に到着してから筑豊の新飯塚に向かった日、旧伊藤伝衛門邸を見学してから夜にまた博多駅まで戻ってきた。翌日朝に小倉へ移動して、今度は田川伊田の三井炭鉱跡まで行くために。デュークスホテル博多は、予約サイトで見たロビーの写真がな…

文明と「非人情」とつやつやの羊羹 - 夏目漱石《草枕》日本の近代文学

「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい」この作品の冒頭は至るところで引用されている。……が、せっかく「草枕」が全体を通して大変にキレッキレで面白い文章の集積であることを考えると、冒頭だけが…

水の町・大垣に建つ城と、謎多き関ケ原ウォーランドへ……|岐阜県南部旅行(4)

外を歩けば目に入るのは、町並み全体を俯瞰する城が一つ。言うまでもなく大垣城である。今では本丸と天守の周辺が公園となっている程度の広さだが、かつてはその三倍以上もの面積を誇る、堅牢な一大要塞だった。町中にグルグルと張り巡らされた水路もその名…

体感するモダンアート《養老天命反転地》と大正時代の擬洋風駅舎|岐阜県南部旅行(3)

目指すは養老—―鎌倉時代に編纂された古今著聞集内の「養老孝子伝説」で語られ、後に名水百選にも選出された美しい滝と、名産品・瓢箪(ひょうたん)制作の文化が脈々と受け継がれている土地。 実は出発前、そこには不思議な芸術作品があると小耳に挟んでいた…

記事を寄稿しました:以前は名の知れた歓楽街、柳ヶ瀬。その隆盛を偲びつつ商店街の小路を歩く - WEBメディア〈すごいお雑煮〉へ

久しぶりに外部で執筆した記事の紹介です。先日、webメディア〈すごいお雑煮 - 地味に役立つニュースサイト〉さんにて、岐阜旅行中に見つけた一角「柳ヶ瀬商店街」を紹介したものを掲載していただきました。以下が記事へのリンクになります。まず、念願だっ…

金華山に鎮座する岐阜城、正法寺の籠大仏、伊奈波神社めぐり|岐阜県南部旅行(2)

特に斎藤道三と織田信長にゆかりあるこの山と城は、名を変えたり焼失したりしながらも、戦国の時代から続くこの岐阜の地を俯瞰し続けてきた。しかし、美濃を制す者が天下を制す――とまで言われた難攻不落の城といえど、決して不滅ではない。現在の天守は昭和…

川原町の情緒ある風景と喫茶店、そして近代の洋風建築を見に|岐阜県南部旅行(1)

日本三大河川の一つに数えられる美しい長良川は、毎年5月から10月頃にかけて、伝統的な鵜飼(うかい)の行事が行われる舞台でもある。その静かな流れと深い青緑色には用が無くても足を止めざるを得ない。豪雨が降れば水位は増し、古来から災害を恐れてきた人…