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彷徨する自由帖

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旅行とお散歩

色々な世界の見聞録

とても端正な近代化産業遺産、桃介橋の尊顔 - 大正時代に竣工した美しい吊橋と木曽川|長野県・木曽郡南木曽町

整っている。あまりにも、顔が良い。これが第一の感想。そもそも南木曽に来た理由の筆頭は、付近にある福沢桃介記念館を訪問することであり、この橋の方はそのおまけくらいに考えていた。ところがどっこい。桃介橋、素晴らしいじゃん。こん……っなに造形が整…

スイートハウスわかば - 中央商店街アーケード内のレトロ喫茶店|静岡県・伊東市

お店の側面、緑のひさしが並んでいるのを見るとまさに若葉の葉を連想させられる。白いタイルの壁から生え、茂った工業的な草。なかなか魅力的だった。公式サイトによれば、創業は昭和23(1948)年とのことで結構な古さだ。アイスキャンディーやアイスまんじゅ…

さながら陸上の船舶、川辺の東海館 - 木造の旧旅館に混交する意匠|静岡県・伊東市

東海館は昭和3(1928)年、稲葉安太郎という人物によって創業された温泉旅館であった。彼は伊東の材木商。それもあってか、館内の各所に使われている木やその加工には確かなこだわりを感じるし、増築時にはわざわざ各階の意匠を評判のよい棟梁へ依頼しているよ…

台東区池之端「岩田邸」の洋館特別公開 - 改修工事前の様子と例の透明なドアノブ|大正期の文化住宅・東京都

大正期に建造された洋館付きの日本家屋は、時に文化住宅と呼ばれる。近代の文明開化期において、「文化」という言葉が最新だとか、あるいは先進的だとかいう意味も兼ねて使われていた頃の影響で。東京は台東区上野、池之端の三段坂に面する岩田邸は、和館部…

喫茶まりも - 新丸子駅にあるレトロ喫茶店|神奈川県・川崎市

新丸子駅東口から徒歩1分、友達と雑談するのに利用した喫茶店。建物は大きな窓の外側に鯉の泳ぐ細い池があって、交差点に面した角の部分には煙草販売コーナーもある。少し古い感じの趣がそれらしくて癒し。お約束のようなかわいい食品サンプルの棚の横、扉か…

【宿泊記録】憧憬を抱いて横手館 本館西棟客室「あららぎ」へ - 大正浪漫の趣ある木造旅館|群馬・伊香保温泉

今回は運良く、以前から入ってみたいと渇望していた客室、本館西棟の「あららぎ」に滞在することができた。横手館内でも最も格調高いとされている美しい部屋。値段は他の西棟の客室と特に変わらないため、偶然にも割り当てられたら、建物好きとしては実に嬉…

パインツリー(PINE TREE) - 熱海銀座の商店街にあるレトロ喫茶店|静岡県・熱海市

純喫茶パインツリーは、JR東海道線の熱海駅を出てからしばらく歩いて、銀座町の商店街に着いたらアーケードの中程に見つけられる。ガラスケースに並んだ魅力的なサンプルと、お店の正面上部にある緑色のリボンが目印。入口左側にはレトロなおもちゃを販売し…

純喫茶マイアミ - 箱根湯本駅にあるレトロ喫茶店|神奈川県・足柄下郡

塔ノ沢で日帰り温泉に浸かった帰り、午後に利用した喫茶店。箱根湯本駅の改札を出てから歩道橋を渡って、階段を下りるとすぐの場所にある。表に出ている看板の上部に大きなコーヒーカップ(MIAMIと書かれている)のレプリカが載っており、中から白い湯気がも…

旧公衆衛生院(港区郷土歴史館)- 円形の吹き抜けホールに心も吸い上げられる、昭和初期の「内田ゴシック」建築|ゆかしの杜

何度も訪れている地域だが、私がこの旧公衆衛生院の存在に気が付いたのはつい先日のことであり、こんなところに随分と大きな近代建築があったものだ、と感心して東側から正面入口の方に回った。昭和13年に竣工した鉄筋コンクリート造りの建物。設計は、かつ…

【宿泊記録】ホテルニューグランド本館ロビーと客室、ルームサービスの美味しい氷菓子|昭和初期の近代化産業遺産・横浜市

本館、正面入口から伸びる大階段。青いカーペットをできるだけ優しく踏んで上った先には、エレベーターの扉と、盤面の周囲に美しい石の彫刻が施された時計がある。壁の画は「天女奏楽之図」で、川島甚兵衛が製作した綴織だった。時計、といわれて私が真っ先…

アール・ヌーヴォーの運動と時代背景 - 洋館長屋 / 仏蘭西館(旧ボシー邸)内を歩きつつ|神戸北野異人館

洋館長屋で見ることができる家具類や工芸品の目玉は、アール・ヌーヴォー(Art nouveau)の流れを汲んで19~20世紀に制作されたものの数々。アール・ヌーヴォーは表面的に言うと、多くの機械工業的製品とは対照的な、植物や生き物を思わせる造形と、そこから…

うろこの家(旧ハリヤー邸)の外壁を覆う薄い石の板は人魚の尾鰭|神戸北野異人館

神戸の異人館街には、瀟洒な下見板張りや、暖かみを感じさせるハーフティンバー風の外壁を持った近代の洋館がたくさん建っている。だから初めて「うろこの家」を目の当たりにしたとき、きっとこの邸宅の特徴的な壁——愛称の示すとおり、魚の鱗に似ている——も…

山本亭 - 大正末期から増改築を重ねた和洋折衷の館|東京都葛飾区・柴又の有形文化財

京成電鉄金町線、柴又の駅から徒歩約6分。東京と千葉の境を流れる江戸川、その矢切の渡しにほど近い、柴又寅さん記念館と通りを隔てて建っている施設が「山本亭」だった。もとは、合資会社山本工場を創立し、カメラの部品を製造していた山本栄之助という人物…

【宿泊記録】プリンス スマート イン熱海 - シンプルな次世代型のホテル、朝食付き

古いものと新しいものがごった煮のように混在する最近の熱海にて、2021年の春にできたばかりのホテル「プリンス スマート イン」に泊まってみた。株式会社プリンスホテルが経営しており、この熱海にあるのは、東京都・恵比寿に続いて2番目に開業した店舗。か…

プラトン装飾美術館 / イタリア館(旧アボイ邸)には今も実際に人が住んでいる|神戸北野異人館

受付に座っていたのは、随分とクラシカルな服装に身を包んだ小柄なメイドさんだった。彼女の佇まいに少し驚きつつ入場券を買ったとき、「この異人館には、他とは大きく違う特徴がひとつございます」と言われて、まばたきをする。さて一体なんのことだろうか…

牛久シャトー(旧牛久醸造場・シャトーカミヤ)の見学 - 近代化産業遺産・国指定重要文化財|茨城県

伝兵衛が東京都浅草で「みかはや銘酒店(現・神谷バー)」を開業してから、かねてより計画していた醸造場の建設に踏み切り、それを完成させたのが明治36(1903)年のこと。彼は茨城県、牛久市の一角(昔の稲敷郡岡田村、女化原)を開墾してブドウ園とし、醸造…

葡萄の意匠とタイルが光る「旧神谷伝兵衛稲毛別荘」そして電気ブランのこと|千葉県にある国の登録有形文化財

稲毛に別荘を建てた神谷伝兵衛(傳兵衛)は牛久シャトーや、電気ブランで名を馳せた神谷バーの創設者であり、商才を持つと同時に洋酒への比類なき情熱を抱いて生きた実業家だった。建物は平成9年に国の有形文化財に登録されている。正面の外観を視界に収めて…

修善寺駅前の「純喫茶あぐり」と奇妙な資料館、極楽苑 - 静岡県・伊豆市

駅の前にある喫茶店は、ときどき安心の象徴みたいに思える。バスや電車が来るまでの暇つぶしに、あるいは不意に降ってくる雨の冷たさを避けるのに便利な場所というのは当然なのだが、もっと、それ以上の恩恵を与えてくれる「何か」が確実にあると感じずには…

【宿泊記録】昭和への懐旧を抱く宇宙船、ハトヤホテルの廊下を渡る|伊東のレトロ豪華な大型施設

伊東のハトヤホテルに泊まってみようと思ったのは、今度は営業中の豪華ホテルの館内を見て回り、感想を綴りたくなったから。その存在は友達に教えてもらって知った。立地的に、ニューアカオが海なら、ハトヤは山……そんな印象を受ける。ちなみに昭和50年に新…

旅館時代のバーを利用した喫茶室「やすらぎ」- 起雲閣・再訪の記録|熱海の近代建築(大正~昭和初期)

先日、熱海の起雲閣にもう一度足を運ぶことができた。ちょうどよい機会があって。内田信也の別邸として大正8年に竣工、その後、根津嘉一郎の手に渡ってから大幅な増築が行われた和洋折衷の館は、玄関にあたる表門から庭園に至るまで余さず魅力だらけの場所。…

旧山邑家住宅(ヨドコウ迎賓館)- フランク・ロイド・ライト設計の見学可能な建築(3)|兵庫県・芦屋市の重要文化財

大昔の遺跡か、未来の何かの基地。面白いことにどちらともとれる外観の建物は、海の側から川に沿って道を歩いていくと、丘の中腹に見えてくる。不思議な四角い形の塔がその屋根から空に伸びていた。ざらついた大谷石の部分に施された、幾何学模様の装飾がす…

透明なクリスタルのドアノブ - 旧前田家本邸・再訪の記録|駒場公園の洋館

過去に内部を歩いた近代建築を再び探索するのはかなり面白かった。昨年は思いもよらなかった箇所に目が行ったり、隣に立つ誰かの意見を聞いたりと、初見の時には咀嚼しきれなかった要素をたくさん味わえたために。普段は新しい邸宅の魅力を探すのに血眼にな…

神戸文学館 / ラムネの色の窓ガラス

現在神戸文学館として公開されている建物は、明治37年に建てられたものだ。もとは関西学院の礼拝堂、ブランチ・メモリアル・チャペルで、イギリス人建築家ヴィグノールの設計と、吉田伊之助の施工で完成したものだった。それから関西学院が上ヶ原へ移築され…

旧田中家住宅 - 高さと奥行きに魅了される洋館・和館:大正12年竣工|埼玉県川口市の重要文化財

大正10年から建設が始まり、同12年に竣工した、旧田中家住宅。国の重要文化財に指定されている。スパンドレルのある窓の並び方も、壁の飾りも実に魅力的で、この館の付近で暮らすことを夢想せずにはいられない。私は朝早く起きて一度、また夜眠る時にも一度…

日帰り滋賀県・近江八幡散策(4) 明治に建てられた小学校の疑洋風建築 - ステンドグラスのある白雲館

八幡堀の手前には旧八幡東学校の校舎が残っている。現在では「白雲館」と呼ばれている、疑洋風建築である。白雲館(旧八幡東学校校舎)は近江商人の集めた資金により明治10年に建てられた。そのほとんどが寄付で、当時の値段にして約6000円だったという。設…

クラタビル11号館の風情|神戸市中央区・レトロ建物

ある縦長の入り口から変な引力を感じる。誘われるまま不用意に近付いたら、もう中を覗いただけで大変だった。煉瓦の外壁、洋風の電燈、奥の方に伺える複数の入り組んだ通路の気配。本当に危ないところだ。心を捕捉されて、離れられなくなる。絶対、陽が沈ん…

日帰り滋賀県・近江八幡散策(3) 水路のある商人の町へ - 八幡堀と日本家屋

八幡堀の南側に広がる区域は特に整然としていて、碁盤の目とまではいわないが、地図を眺めてみると似た形の四角がたくさん並んでいる。JR近江八幡駅から徒歩約30分。体力温存のためにバスに乗っても良いけれど、運河に至るまでの周囲の様子を肌で感じながら…

日帰り滋賀県・近江八幡散策(2) レンガ塀の住宅街と趣深い洋風建築 - ヴォーリズ(一柳米来留)という人物の軌跡

明治38年、24歳の頃に来日してから近江八幡に居を構え、生涯を通して建築家や伝道者として熱心に活動した人物——ウィリアム・メレル・ヴォーリズ。彼の自邸は現在、ヴォーリズ記念館として予約制で公開されている。電話での予約のみ受け付けがされており、弾…

日帰り滋賀県・近江八幡散策(1) 旧八幡郵便局 - W・M・ヴォーリズの設計した大正時代の建築

この建物のある「仲屋町通り」は「すわいちょうどおり」と読む。歩いていると出会うのは、決して派手ではないが堂々とした堅実な印象のファサード。郵便局の機能にふさわしい外観だと思うし、設計者の気質のようなものも反映されているようで、好感が持てた…

泰明小学校、数寄屋橋公園に隣接する校舎 - 近代建築|大正~昭和初期に建てられた「復興小学校」とは

市街地を歩いていると、流れる水の音はなく、気配すら感じられないアスファルトの海上にも「橋」の文字を冠した地名が散見される。その多くは、かつて存在した河川を埋め立てて整備した痕跡。周囲を散策すれば橋のたもとを飾った親柱や、江戸時代の火事防止…