先月、5月の話。
ギリッ……ギリまで粘った同人誌(主催さんが企画してくださった合同誌、9月文フリ大阪で頒布)の原稿を提出して、締め切り明けの世界に来たら、もう6月になっていた。これを書いている今、時間はさらに経過していて、明日になったら7月だ。
先月は珍しく、関東圏から一歩も出ない日を過ごしていた。
でも、居住県内で福井出身の店主(かなり癖が強めだが……まあ、面白い方)が提供していたお蕎麦のおかげで、わずかに近畿地方の風を感じられたのが気晴らしになった。蕎麦という料理を普段あまり食べないので尚更。つくづく奥深い料理だなぁ、と思う。
この店は基本、土日も営業しているが不定休で、昼間の1時間半しか開けていない。営業しているかどうかは、のれんの有無が目印。風が強いと激しく風に揺られている。
入店すると「うちは『おまかせ蕎麦3種』のコースひとつしかメニューがございませんがよろしいですか」と聞かれたので、はい、と答えた。
また「温かいお蕎麦は鰊と鴨が選べますがどちらになさいますか」とも聞かれるので、次は鴨、と答える。
季節によって変わる冷蕎麦(5月)は茶蕎麦だった。
そば茶の提供のあと、最初に出てくる。白っぽい麺と緑色の麺、ふたつがうすい紙を貼り合わせたような形で打たれていて、切ると写真のような感じになっていた。食感は所謂コシがあり、硬め。個人的に冷たくて硬めの蕎麦が好きだと、最近気が付いた。
それから次の温蕎麦に入っているのは鴨の肉を切ったものと、肉団子。後者はつくねというのだろうか。汁の味が奥の方まで沁みていて、強い癖もなく食べやすい。
加えて、一緒に行った人に少し分けてもらった鰊は、30時間ほどかけて煮込まれていた。甘くてしょっぱい美味しさがある。少し七味唐辛子を入れると、さらにお箸が進む気がする。
最後に登場するのは越前そば(福岡県の嶺北地方で食べられてきたと言われるもの)。
これは大根おろしやしぼり汁の辛さが特徴の蕎麦らしいのだが、提供されたものに関してはこちらの地方に住む人々の舌に合わせて味を変えてあるのだという。葱の風味、香ばしいかつお節がたっぷり、冷たいつゆも相まって、夏場にはつい頂きたくなるような要素が揃っている。
いつまで営業されているか分からないけれど、また足を運ぶつもりなので、それまでは続けられていてほしい。
ご興味を持たれた方がいましたらぜひ探してみて下さい。