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彷徨する自由帖

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喫茶店「珈琲 琵琶湖」梅の屋敷から広大な湖面を想像する11時|東京都・大田区

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 滋賀から遠く離れた東京都にも「琵琶湖」があるらしい。

 それは喫茶店の姿をしていて、建物のように装っていながら、あの静かで広大な湖面に宿る心を内に秘めている。扉を開ければいつでも、あの場所の空気に包まれる……かもしれない。

 また近江八幡に行きたくなってきた。

 

 

 大田区、蒲田。

 このあたりの地域には何人か友達が住んでいるのに、その実これまであまり歩いてみる機会がなかったものだから、京急線の車両を降りてからずっと周囲を眺めてきょろきょろしていた。

 そうやってまわりの様子を観察するのに首や目がいくつもあったら便利そうだけれど、結局そこから得た情報を処理しているのは主に脳になるはずなので、たとえば眼球がふたつ増えたならその分だけ、脳を新たに外付けで追加しないといけなくなるような気がする。もしもそうなったら移動するのに不便そうだし、皆に怖がられてしまいそう。

 あ、いえ、あやしい物品じゃなくて臓器なんです、これ、ちょっと「目」が増えたから「脳」も必要で、……と身体に管で繋がった傍らの荷物を指し示してみても、きっと信じてもらえない。人々に忌避され逃げられてしまう。想像したら、にわかに寂しくなってきてしまった。

 梅屋敷駅は京急蒲田からひと駅分の距離にある。

 昔ここに存在した山本家の茶屋(今は、跡地の一部が梅屋敷公園になっている)がその駅名として残っており、何も知らなければ一体どこに何の屋敷があるのかと戸惑うところ、梅の要素に関しては大田区の「区の花」となっているのでピンと来る人も多いのではないかと思う。私にはなじみがなかったから、次は寒梅が見られる時期に散歩しに来るのも悪くないのではないか、などと考えている。

 少し北に歩けばしながわ水族館もある。そこも先日初めて訪れて、それなりに楽しんだ場所だった。雰囲気が好きだった。

 

 

 お目当ての喫茶店「珈琲 琵琶湖」を訪問したのは土曜日の11時ごろ。金に輝くドアの取っ手が曲線を描いているのが本当~に素晴らしいポイントだと思った。撫でまわしたい。

 窓越しに把握できる店内は賑わっていて、外には自転車も複数とめられていた。スタッフもかなり忙しそうだけれど対応は常に丁寧。私達は運よく席に座れ、キッチンの様子も観察しながら、メニューを眺めて注文をした。普段の仕事がシフト制なので曜日の感覚を忘れがちだが、土曜日のお昼、商店街の飲食店とくれば混むのは当たり前だろう。なんというか、久しぶりに一般の休日を感じた。文字通りの非日常体験で面白かった。

 あ……美味しそうな匂いがテーブルに近付いてくる。到着。

 ロースハムトーストは多分じゅわっと表面に染み込んでいるバターの風味なのか、とても軽やかな感じでおいしくて、癖になる。ハムを挟んだ食パン、というシンプルな食事からこんなに奥行きを感じられるなんて。嬉しいサラダ付き。

 そして飲み物、ミルクコーヒーにバニラアイスが浮かんだフロートは、液体部分に甘さがほとんど無いのが良かった。もしも甘さを足したければ別添えのシロップがあるため、調節できる。お好みに合わせて。私はそのまま少し飲んだあと、甘さを加えて味変を楽しんだ。

 

 

「琵琶湖」という滋賀にある湖の名を冠したこの喫茶店、果たして背景にはどんな由来があるんだろう……と検索してみたら、先代の方が滋賀県出身であるということらしかった。

 なんとも郷土への思いを感じる命名である。開業当時は乾物屋で、それが引き継がれて喫茶店に変身したのが、昭和54年の頃だとか。噂では100もあるらしい膨大な数のメニューも内容や材料が変化したり、時期によっては期間限定の品も登場したりして、変わらない良さと行くたびに変わる良さの両方があった。

 定休日は水曜日。営業時間は8:30~19:00で朝はモーニングセットがある。

 近い大森にある老舗「ルアン」とあわせて、大田区内の見逃せない魅力的な喫茶店だった。