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彷徨する自由帖

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週間日記・2023 9/18㈪~9/24㈰

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月曜日に記事公開。その後、1日ずつ順次追加されます

 

週間日記・2023 9/18㈪~9/24㈰

 

9/18㈪「もはや希死念慮の問題ではないのでは?」

 

 かつてないくらい死へ向かう意識が強くなっていて、自分に対して大変そうだなと思う。本当に。意味や理由のなさ(つまりは世界に存在するあらゆるものの宿命)が苦手なのと、自分が望む成果の出ない生活に価値を見出す才能が壊滅的にないので、もはや意識の側が問題なのではなく、単純に読む本の量を増やすのと、休まずに何かしていた方が良いのだと思う。

 嫌でも刺激を受ける場所にいないと起きて布団から出る理由が皆無になる。あと、友達と遊ぶ予定を入れた。楽しみ~。

 10代の頃に出会って影響を受けた学園・伝奇ものの小説があって、シリーズ大半の巻が加入しているサービスから読めるようだったため、再読を始めた。かつては電撃文庫、今はメディアワークス文庫から発刊されている「Missing」全13巻、著者は甲田学人。4巻まで進んだ。ついでに番外編という位置づけの「夜魔」も再読した。

 旧版から細やかに加筆修正されているようで、そのあたりの文章的な読みにくさを感じさせない手腕には感心する。

 そして本編自体は、たぶん、大人の視点からすると苦く感じる場面が多いと思う。私も十数年ぶりに手に取っていろいろ考えるところが増えた。同時にそれは重要な要素のひとつでもあり、この物語の中で主要登場人物が高校生であり、子供たちでもある部分は何より大切な部分なので、それも含めて再び結末を見届けることにする。

 電撃文庫版は翠川しん氏のコピックイラストも大好きだった。

 

購入した本:

カート・ヴォネガット「人みな眠りて」(人からのおすすめで)

大岡玲「新編 ワインという物語 聖書、神話、文学をワインでよむ

 

9/19㈫「世界の暴挙に抗うこと」

 

 レイ・ブラッドベリの「塵よりよみがえり」を読み終わった。同じ著者の「何かが道をやってくる」にも登場する〈秋の民〉の側から描かれた物語で、彼らに育てられたティモシーの様子や、最終的に彼が滅びを前にして何を感じたのかが印象深かった。

 そして、日記以下は上の物語と特に関係がない。

 何をやっても絵になってしまう人、また美しくなってしまう人、というのは確かに存在しており、そういう存在を目にするたび羨望を感じる。好きになる。同時に、私はできれば目にするものの全てを、実際にはどうであれことごとく「素敵なもの」に変えてしまいたいと願っている。見たものが嫌なものであったなら尚更。面白いものか、美しいものに、無理やりにでも変貌させてしまいたいのだ。記すことで。

 例えば、外で雨が降っていたからといって素直に「雨だった」と書く義理は別にないし、過去のある一点で体験した事柄を、さもさっき起こったように書くことも許されている。世界の側から私に。そのように記されたことしか本当にはならない。誰にも知られず、観測されなければ、ある事物は人間の前に存在することはできない。

 人知を超えた何かの存在を仮定するならば話は別である……。

 だとすれば、これは私自身の反抗なのかもしれない。世界に対する。あなたが私達へと勝手に与えたり、時には容赦なく奪ったりしてくる、そんな暴挙に対して、素直に従う理由などひとつもないと多分心の底で思っている。

 

9/20㈬「ようやく紅茶を買うことができた」

 

 頭の方が燃料切れを起こすと積極的に人生を続ける気力が衰退する。それ自体はあまりにどうでもよいことであるのに、気持ちの面で苦しいのは無駄、かつ著しい損害なので、図書館で規定の冊数いっぱいまで本を借りてきた。10冊あるので2週間はもつだろう。

 これまで、私はなるべく図書館の本を館内で読み切ってしまうことに心血を注いできた。帯出して家で紐解いたところで、あまり集中力が続かない気がしたし、別の場所にいるとまた別のやりたいことが浮かんできてしまうために。

 でも、それでは明確に「足りない」のだと最近分かってきた。心が飢える。何かを欲して。

 そして本を借り、返すことの身体的な利点というのも実際感じている。出不精なので仕事以外で外に出なくても良い日はできるだけ外に出ないのを選ぶところ、返却期限を迎えた図書は持参しなければならず、そこに体を動かす必要が生まれる。さらに、返却のために図書館をまた訪れれば、再び本を借りないわけにはいかない。横浜市中央図書館の166万以上の蔵書——その多くを無料で閲覧できる環境を前にして、何も借りない選択肢などないから。

 これを繰り返すと2週間ごとのサイクルができ、自分が毎日、常に興味のある物事についての書物に目を通している状況が、自然と形作られていく。かなり理想的ではないかと思った……。

 帰宅途中、横浜駅で紅茶を買う。TWGのシンガポール・ブレックファスト。ほんのりバニラの気配があるスパイシーなフレーバーなので、もう少し涼しくなったら頻繁に飲みたいのと、あと店頭に置いてあったおいしそうなクッキーも購入した。高島屋の一角にあるここのTWGはとても面積が小さいながら、店員さんも親切だし、選んだり買ったりしやすかった。茶葉によって50gから量り売り、あり。

 忘れずに立ち寄った京急線上りホームにある近沢レースの自販機では、お目当てのハンカチ製品が軒並み売り切れていたので、歯噛みする。しかしとても好きな試みなので、人気があるなら長く続いてくれるだろう。新商品が入荷したらまた見に行くことにする。

 それにしても連日の蒸し暑さよ。

 

9/21㈭「240円」

 

 小森陽一「漱石を読みなおす」を読了……思っていたよりもはるかに良かった。確実に、これまでより深い読解のための助けになった。

 著者の小森氏は作者と作品に対しての姿勢が真摯だと感じる。はなから分析しようとかかっていくのではなく、しっかり文章にあらわされたものを味わって、決めつけずにその暗がりへ分け入っている印象があり。

 私は夏目漱石の「道草」を手に取るまで彼の幼少期について漠然とした概要しか知らず、さらに目を通したあとは、そのあまりに理不尽かつ殺伐とした背景に恐れをなしていた。だから苦悩、とはいっても後期三部作に見られる個人的・精神的な苦悩の方に意識して注目していたのだけれど、やはりとある人間とその出自としての家とは切り離せないのだ。

 夏目家から塩原家へ、半ば隠匿されるように養子に出された末っ子の彼は、やがて夏目家の方の跡取りが次々と逝去したことでにわかに「利用価値」を与えられ、これまでの養育費という名目のもと今度は生家に買い戻される。

 その値段が、金弐百四拾円。

 当時の貨幣価値で、にひゃくよんじゅうえん、が、この時の彼の「値段」だった。ひどすぎる。

 元を辿れば「庚申(かのえさる)の日に生まれた子供は大泥棒になる」という迷信から、人様の金を盗ることがないように、と名付けられた夏目金之助。漱石の本名である。彼はもう本当に生まれた瞬間から金金金、と周囲の人間の思惑に振り回されてきた人だったのだ。

 その、根源的に懐疑を心に宿さざるを得ないような環境に思いを馳せて、泣きながらサブレを食べていた。神奈川県民の私は、甘いものが大好きだった漱石のところに鳩サブレーを持っていてあげたいのだ。

 

9/22㈮「生活の加工」

 

 久しぶりに意識の手綱を手放したこの感覚。いつ気絶したのか覚えていない。そんな風に朝まで睡眠せざるを得なかったので、実のところとても気分が良いのは皮肉な感じがした。かわりに頭痛が大変なことになっている。

 Fedibird(マストドン上のサーバーのひとつ)のタイムラインを眺めていたら読書タグで西加奈子「通天閣」を紹介している方がいて、これ、自分の部屋の本棚にもあるではないかと思って出してきた。読み始める。

 私が「描かれた生活」や「生活を描くこと」自体に多少なりと関心を向けられるようになったのはいつからだろう。昔は本当に興味がなかったけれど、今ではその些細な物事が丁寧に、豊かに、あるいは事細かに描写されているのを鑑賞するのは面白い。額縁の内側に目を向けているような感覚だから鑑賞と言ってもいいだろう。

 生活を生活そのものから切り離さず、しかしこれまでとはまた異なるもののように捉えられると、同じはずなのに幾分か印象を違えて感じられるから素晴らしい。起こったことをそのままにしておくのではなく、わずかに手を加えれば数段面白いものに変わる。

 別の目で捉え直す、という意味で、私は生活の加工に関心がある。生きる意思を持ち続ける工夫のひとつだと思う。

 誰かが生活の中で写真を撮ったり、それを公開したり、一日の中で遭遇した物事に対して感想を付与するのを見るのが好き。そしてどんな時間帯であっても誰かしらが起きていて、何かを考えていた奇跡が残っている、これが尊いのでインターネットやSNSの一側面を愛している。

 今、目の前にいない人間も確かにどこかで生きているのだ、と信じられるのが良いのかもしれない。奇跡みたいだから。ただ生きているだけでは会えなかった人たちに会うことができるから。

 Blueskyのアカウントを作成したので、そこをこれから少しずつ整備していく予定。物語を好んでいる人達の投稿を見る場所にしたい。オタクな話題が多くなりそう。

 

 

9/23㈯「星と購買意欲」

 

 大澤千恵子「〈児童文学ファンタジー〉の星図 アンデルセンと宮沢賢治」を読了。私はもともと賢治の「よだかの星」とアンデルセン「みにくいアヒルの子」の間に勝手に共通点(強い憧憬の描写……という点)を見出していたので、これらの類似点についての研究があるのだと知って、納得した。

 さらに復習した「銀河鉄道の夜」で列車の停車駅に南十字(サザンクロス)が登場したのを思い出し、そう、先々月の香川旅行で私もサザンクロスに立ち寄っていたと思い返して楽しくなる。日本列島は北半球にあるので南十字星を拝める場所が多くなく、八重山諸島の方まで下らないと難しい。

 これからしばらく、半年くらいは身辺を整えたり掃除をしたりして過ごしたいので遠出をする機会は減らすけれど、いつもは見られない特定の星座を目の当たりにするためだけに赴く旅行も面白そうだと考えていた。

 星は、好きだ。自分の腕時計にも太陽と月と星々、すべて広義の「星」があしらわれていて、窓から時間ごとに顔を出す。たとえ空に雲がかかっていようとも変わらず。

 ……そういえば中央図書館へ行くのに使った京急線の、横浜駅の上りホームの自販機の話。そこには近沢レースの製品が買えるところが1か所あって、季節ごとのラインナップを確かめるのを心待ちにしていたのが、いつのまにか秋の製品のうち1種類が売り切れになっていた。人気なのだな……。ちなみにレースのハンカチ。私は夏のものは2枚、持っている。「入道雲」と「カクレクマノミ」を。

 なんだか買い物をしたい。服と、文房具と、あとはこまごまとしたもの。部屋を片付け始めたからそんな気分になれるのかもしれない。物を買うことは〈選ぶこと〉で、さらに〈選んだものを手に入れること〉だから、何というか趣味にバッチリ合った行為だと思う。

 身の回りにあると嬉しいものだけを集めて、理想の部屋を作ろうとするのがきっと面白いのだ。物もそうだし、人間関係も同じ。

 

9/24㈰「実存が本質に先立ってくれない」

 

 これね。

 ただ生きているだけで尊いのではなく、生きて何をするのか、の方が存在そのものより重要だとされる私の世界では、常に実存は本質に先立ってくれない。むかし教科書で見たサルトルの顔が今度はくしゃくしゃになった紙の上に印刷されている。本質を定義しなければ意味の所在がなくなり、実存が薄れて、消える。すなわち何もしないのならば生きていないのと同じことになる。

 だから生活を愛する才能、資質がなくて、楽しみのために楽しむことが得意ではない。できないわけではなく、苦手。

 自分がそういう価値観を内面化して育ってきているのだと実感するのは、主に、身体的な理由ではなく精神的な理由で起き上がれないときだ。起き上がれないというのは比喩ではなくて、言葉そのままの意味である。起きる気すら起きなくなる。

 なぜかというと己のすることなすこと全てが「無駄」だと感じられるから……であり、どうせ無駄ならば死んだように横たわっている方が都合が良かろう、酸素や食料の消費が少ない、とおそらく意識の根本が判断しているから。最後はじゃあ死んだ方がよかろう、と感じるようになる。そこにいても何もしていないのだから死体とさほど変わりない。

 つまりは、意味のあることがしたいのだな、と他人事のように思った。お前はそんなに「意味」が、あるいは「価値」が好きなのか? 多分、好きなんだろう。実際、無意識であってもそういう基準に基づいて行動しているのだもの。で、意味と価値とはなんなの? 誰にも分からない。

 それゆえ他人と遊ぶのが好きなのかもしれなかった。

 私は自分自身の行動に意味や目的を見出さずにはいられなくて、けれど他人はこちらの力ではどうすることもできない存在のため、一緒に過ごしているとあらゆる要素を成り行きに任せることになる。自分ひとりだけでいると「報酬としての結果」を得るためにしか行動できない。でも、他人というのは私の方の目的のために都合よく扱うことができない性質を持っているから、誰かと関わるのは面白くて、数十年後の滅びへ向かう束の間の退屈が紛れる。

 そういうことなのかな。

 でもあまりにも意に沿わない存在と共にいるとむしろ煩わしく、私はこんな気持ちになるために生きているのではない、という念がどんどん膨らんでいって、最終的にその人とはこの世界で関わることがなくなる。適度に振り回されたいし、あまりにも干渉されていると判断すれば消したくなる。

 ……物語の中の木こりやまぼろしの草原を歩いている羊飼いたちは、今日も自分自身の本質や意味などを全く意に介することなく、ただ「生活のための生活」をしていて、生きるために生きていて、しかもそれが美しい。現実世界の人間とは大きく違って。

 心から憧れるし、そうなれれば良かったのに、と思いながら、別になりたくないとも思っている。

 

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