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彷徨する自由帖

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ロンドンの街で気軽にアート作品に触れよう【訪問したギャラリーまとめ・現代美術が中心】

 

 イギリスの首都・ロンドンには、優れた収蔵品を誇る国立美術館の数々に加えて、無数のアートギャラリーが存在している。特にモダンアートコンテンポラリーアートに興味があるなら、より訪れたいのは後者だろう。

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 広大な街のどこかで常に何らかの展示が行われていて、そのほとんどが無料で鑑賞できるのだから行かない選択肢はない。

 とはいえ私は渡航当初、ギャラリーの数が多いのは嬉しいがそもそもどこに何があるのか知らないし、どう回るかの目途も立てにくいと感じていた。一応、現地に行けばロンドン内のギャラリーマップが置いてあったり展示のポスターが貼ってあったりはするものの、もしも観光で来ていたら目が回ってしまったと思う。現代美術系の小さなギャラリー群は一般のガイドブックにあまり載らない。

 今記事では、自分がイギリスで美大生をしていた頃(2016~2018年)に比較的よく足を運んだアートギャラリー18カ所、美術館3カ所をエリア別にリストアップしてみた。写真が残っている展示があればそれも掲載しておくので、取り扱われている作品の傾向をなんとなく知りたい人には参考になるかもしれない。

目次:

ロンドンでよく足を運んだギャラリー

中心部

 PACEはロンドン以外にもニューヨークや香港、ソウル等の都市で展開している有名なギャラリーで、ちょうどロイヤル・アカデミー・オブ・アートの裏あたりに位置している。最寄り駅はグリーンパークピカデリーサーカス。月曜と日曜が通常の定休日だ(これはほぼ全てのギャラリーに共通しているが、たまに違う)。

 天井が高めで部屋も広いので、大型の絵画やインスタレーション、あるいは空間をそのまま生かした展示が多い印象を受けた。滞在中にここで鑑賞したのはナイジェル・クーク、タラ・ドノヴァン、そしてフレッド・ウィルソンの作品群。

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Nigel Cooke《Roman Willow》にて

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Tara Donovan《Composition》にて

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Fred Wilson《Afro Kismet》にて

住所:6 Burlington Gardens, Mayfair, London W1S 3ET, United Kingdom

  • David Zwiener

 ロンドンのDavid Zwienerは18世紀ジョージアン様式・3階建ての建物をそのまま利用したギャラリー。階段だけではなくエレベーターもあるので館内の移動を心配する必要はない。最寄りのグリーンパーク駅から徒歩約5分で、さきほど紹介したPACE Galleryにもほど近かった。

 壁面に展示する絵画や平面作品が主に取り扱われているここでは、ネオ・ラウフヨゼフ・アルバ―スの個展を見た。

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Neo Rauch《Rondo》にて

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Josef Albers《Sunny Side UP》にて

住所:24 Grafton St, Mayfair, London W1S 4EZ, United Kingdom

  • White Cube Mason's Yard

 街に2つある《ホワイトキューブ》のうち、街の中心に近い場所にあるのがWhite Cube Mason's Yardの方。最寄り駅はグリーンパークピカデリーサーカス。面積はさほど広くないものの、高い天井を持つ地上階と地下階、2つのフロアを持つ。

 抽象絵画や単色絵画を主に手掛ける韓国のアーティスト、朴栖甫の個展《ZIGZAG: Ecriture》を鑑賞した。

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Park Seo-Bo《ZIGZAG: Ecriture》にて

住所:25-26 Masons Yard, St. James's, London SW1Y 6BU, United Kingdom

  • Blain|Southern

  オックスフォード・サーカス駅で地下鉄を降りて、リージェント通りから少し逸れた場所にあるのがBlain|Southernギャラリー。人々が行き交う道に面した部屋が大きなガラス張りなので目立つ。地下にも部屋があるが、展示内容によって公開している時とそうでない時がある。

 ここでは《Revolt of the Sage》《Playground Structure》という2つのグループ展を鑑賞した他、ジョン・ホワイト、そしてティム・ノーブル&スー・ウェブスターの個展をそれぞれ見た。

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James White《BODIES》にて

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Tim Noble and Sue Webster《Sticks with Dicks and Slits》にて

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グループ展《Revolt of the Sage》より

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グループ展《Playground Structure》より

住所:4 Hanover Square, Mayfair, London W1S 1BP, United Kingdom

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トラファルガー広場から

 言わずと知れたナショナルギャラリーは建物そのものも(外観・内装ともに)美しい。収蔵品は古典絵画だけでなく、印象派など20世紀ヨーロッパで生まれた作品もかなり充実していて見応えがある。個人的に好きなのはゴッホの描いた蟹やボナールの絵。

 最寄りのチャリング・クロス駅を出てすぐ、トラファルガー・スクエアの真後ろに位置している。

住所:Trafalgar Square, Charing Cross, London WC2N 5DN, United Kingdom

  • Wallace Collection

 住宅街にひっそりと佇む、貴族の旧邸宅を利用したギャラリーのウォレス・コレクション

 過去記事でまとめているので詳細は以下に:

  • Herrick Gallery(現在閉業)

 さきほど調べたところ、何度か足を運んだギャラリー・Herrick2019年の春ごろ閉業していたと判明した。グリーン・パークの駅を出てすぐの場所にあるスペースで、1階と地下の展示室があったのを覚えている。レンガの壁が特徴的で雰囲気があった。ここではグループ展ひとつと、イルミナティ・ネオンというアーティストの個展を鑑賞。

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Illuminati Neon《Follow the Light》にて

旧住所:93 Piccadilly, Mayfair, London W1J 7NQ, United Kingdom

 

東部エリア

 オルドゲート・イースト駅に近いホワイトチャペルギャラリーは1901年の開館以来、地域の若手アーティストを積極的に支援している。初訪問時は周囲に溶け込みすぎていて見逃しそうになった。少し荒んだ、治安の悪いイメージが未だ拭えない東ロンドンにおいて、誰でも(基本)無料で入ることのできるギャラリーの持つ意味は大きい。

 ここでは《The London Open 2018》をはじめとした幾つものグループ展を鑑賞した。

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Leonor Antunes《The frisson of the togetherness》にて

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グループ展《The London Open 2018》より

住所:77-82 Whitechapel High St, Shadwell, London E1 7QX, United Kingdom

Web: Whitechapel Gallery

  • BEERS London

 BEERS Londonオールド・ストリート駅の北、路地を曲がった目立たない場所にある小さなギャラリー。主に中規模の絵画作品が取り扱われている。写真の絵があったアンドリュー・サルガドの個展で面白かったのは、会期中、床全体に緑の人工芝が敷かれていたことだ。

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Andrew Salgado《NATURE BOY》にて

住所:1 Baldwin St, London EC1V 9NU, United Kingdom

  • Victoria Miro

 エンジェル駅オールド・ストリート駅の間にある、このVictoria Miroギャラリーにはスゥ・ドーホーの展示(とても良かった)を見に行ったのだが、残念ながら写真が残っていない。代わりにアーティスト紹介のページを下部に貼っておく。

 ギャラリーは、昔の家具工場を利用した空間。付随する中庭の池にもインスタレーション作品が設置されることがある。おそらく、代表的な過去の展示は草間彌生《Where the Lights in My Heart Go》で、これは水面に銀のステンレス球を無数に浮かべるものだった。風が吹くと球がぶつかり合って涼し気な音を立てる。

住所:16 Wharf Rd, Hoxton, London N1 7RW, United Kingdom

  • White Cube Bermondsey

 街に2つある《ホワイトキューブ》のうち、タワーブリッジに近い場所にあるのがWhite Cube Bermondseyの方。とても面積が広くて展示室の数も多い。お手洗いもある。

 ケリス・ウィン・エヴァンスのインスタレーションのほか、2017年に開催されたアンゼルム・キーファーの大規模な個展はかなり見応えがあった。廊下にずらりと並ぶベッド、散乱するセピアのフィルム、爆撃に遭ったかのような建物の絵――その全てが重々しい歴史や記憶を喚起するようで、北欧神話で戦士が死後に向かう場所《ヴァルハラ》が題として選ばれた意義を思った。

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Anselm Kiefer《Walhalla》にて

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Cerith Wyn Evans《Neon Forms after Noh IV》にて

住所:144-152, Bermondsey St, Bermondsey, London SE1 3TQ, United Kingdom

  • Tate Modern

 ロンドンで近現代のアートに触れるならテート・モダンは外せない。

 最近開館したスイッチ・ハウスと従来からあるボイラー・ハウスの2館をあわせて、半日以上かけてやっと回り切れるような量の作品に出会える。下の写真は文字を扱うアメリカ出身のアーティスト、ジェニー・ホルツァーの展示を鑑賞した際のもの。また、入口付近のタービン・ホールでは定期的に観客を巻き込むタイプのプロジェクトが行われており、そちらも必見だ。

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Jenny HolzerのARTIST ROOM

 かつて発電所だった施設を改装している美術館なので、煙突などを含めた当時の名残りを探すのも楽しい。

住所:Bankside, London SE1 9TG, United Kingdom

Web: Tate Modern

南部エリア

 ヴィクトリア朝時代の建物を利用した南ロンドンのギャラリー。位置はロンドン芸術大学キャンバーウェル・カレッジのすぐ横だった。天窓から光の入る広めのスペースが1階に、そして小さな展示室が2階にあって、それぞれの空間を活かした展示が行われている。

 ここではカタリーナ・グロッセの作品《This Drove my Mother up the Wall》を見た。壁や床の一面をペイントしてしまうなど、かなり思い切った行為も許容されている模様。勢いがある。

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Katharina Grosse《THIS DROVE MY MOTHER UP THE WALL》にて

住所:65 Peckham Rd, London SE5 8UH, United Kingdom

 インターフォンを押して入るタイプのギャラリー。一角がガラス張りになっていて、外からも作品を少し覗くことができる。最寄り駅はオーバーグラウンド線かナショナルレイルのペッカム・ライだ。通常のロンドン観光をしている人はまず足を運ばないであろうエリアだが、上のSouth London Galleryも含め、面白いコンテンポラリー系のギャラリーが南ロンドンには多い。

 マリー・ジャコティのドローイング展《Morning Defeats》を鑑賞した。

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Marie Jacotey《Morning Defeats》にて

住所:4 Holly Grove, Peckham, London SE15 5DF, United Kingdom

  • Tate Britain

 イギリス出身か、浅からぬ所縁のあるアーティストの作品が集められた美術館、テート・ブリテン。ロンドンに来る人なら誰もが知っている。ここは真横に位置するロンドン芸術大学チェルシー・カレッジ・オブ・アーツとともに、かつてのミルバンク刑務所の跡地に建てられた施設だ。最寄り駅は地下鉄ヴィクトリア線のピムリコ。

 過去にはレイチェル・ホワイトリードの特集やフランシス・ベーコン、ルシアン・フロイドの作品を前面に押し出した企画展が組まれていて、いつ行っても飽きない。また、ラファエル前派関連の近代絵画も沢山あるので、それらが好きな人にもおすすめ。

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Anthea Hamilton《The Squash》開催時

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企画展《ALL TOO HUMAN》より

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David Hockneyの絵画

住所:Millbank, Westminster, London SW1P 4RG, United Kingdom

Web: Tate Britain

 ランベス地区にあるニューポート・ストリート・ギャラリーは、レンガ造りの建物が並ぶ狭い通りにある。2階建てでそれぞれの部屋はかなり広く、比較的大きな規模の作品が多々展示されていた印象。どこの駅からも遠いので、テート・ブリテンなどに寄った後、テムズ川沿いを散歩がてら訪れるのが楽だろうか。

 特にジェフ・クーンズダン・コーレンの展示が記憶に残っている。

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Jeff Koons《Now》にて

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Dan Colen《Sweet Liberty》にて

住所:Newport St, Lambeth, London SE11 6AJ, United Kingdom

 

西部エリア

 場所はハイド・パークのど真ん中。このサーペンタイン・ギャラリーは本館と、後述する別館サックラー・ギャラリーで構成されている。季節ごとに開催されているイベントの中に《サーペンタイン・パビリオン》と呼ばれるものがあって、様々なアーティスト達が中規模の建築物を設置していた。

 ここではグレイソン・ペリーによる展示や、2018年夏に公園内の湖にも巨大作品を展開したクリスト&ジャンヌ・クロードのプロジェクトを見た。

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Grayson Perry《The Most Popular Art Exhibition Ever!》にて

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ある年のサーペンタイン・パビリオン

過去のブログ記事も参照:

住所:London W2 3XA, United Kingdom

 2013年にオープンした、橋の向かい側に建つサーペンタイン・ギャラリーの別館で、旧火薬庫を改装し利用している空間。主に現代の絵画、たまに映像作品が取り扱われていた。中でも印象に残ったのはザハ・ハディドの初期のドローイングとトマ・アブツ、ローズ・ワイリーの展示。他の多くのギャラリーと同じく月曜日は閉館している。

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Zaha Hadid《Early Paintings and Drawings》にて

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Tomma Abts Solo Exhibitionにて

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Rose Wylie《Quack Quack》にて

住所:W Carriage Dr, London W2 2AR, United Kingdom

 サーチ・ギャラリーでは現代美術のほか、ファッションブランド「シャネル」と創設者の軌跡を辿る《マドモアゼル・プリヴェ》や、エジプトのツタンカーメンに関連する遺物の展示も行われたことがある。ジャンルの幅が広い。基本は無料で入れるが、チケットが必要になる場合もごく稀に。地下鉄スローン・スクエア駅が最寄りになる。

 普段は単独ではなく、異なる沢山のアーティストたちがグループになった企画展が多い。個人的にここで見た絵画群は気になるものが多かった。

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グループ展《Painter's Painter》より

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グループ展《From Selfie to Self-Expression》より

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グループ展《CHAMPAGNE LIFE》より

住所:Duke of York's HQ, King's Rd, Chelsea, London SW3 4RY, United Kingdom

北部エリア

  • Wellcome Collection

 医療系の財団が運営するウェルカム・コレクション。

 19世紀のコレクター、ヘンリー・ウェルカムが集めた物品の数々が常設で見られる。施設の1階はいわゆる美術を専門にしたギャラリーではないものの、医学とアート&デザインの分野を横断し繋ぐような企画展がしばしば行われており、興味深い作品もあった。場所はユーストンユーストン・スクエア駅を出てすぐの場所。

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John Walter《Alien Sex Club》にて

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グループ展《Can Graphic Design Save Your Life?》より

住所:183 Euston Rd, London NW1 2BE, United Kingdom

  • Camden Arts Centre

 ロンドン中心部から離れたカムデン・アーツ・センターは、現代美術を取り扱う小さなギャラリー。最寄り駅は地下鉄フィンチリー・ロードかオーバーグラウンドの駅になる。建物はもともと19世紀末、ハムステッド中央図書館として造られたものだった。

 ここでマット・ムリカンの展示《The Sequence of Things》とボニー・キャンプリンの展示を鑑賞。作品の傾向としては難解かつコンセプチュアルで、考えることが好きな人には特におすすめ。今まで全く触れてこなかった視点を提示される経験は楽しく、なかなかやめられない。

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Matt Mullican《The Sequence of Things》にて

住所:Arkwright Rd, London NW3 6DG, United Kingdom

 以上になる。アート好きな人はもちろん、今まであまり興味がなかったという人も、機会があればいずれかのギャラリー・美術館に足を運んでみてはどうだろうか。

 現在、美術における作品の表現方法は多岐にわたっている。絵画彫刻、写真だけではなく、インスタレーション、映像、詩、あるいはパフォーマンスなど枚挙に暇がない。人によって面白いと思うもの・つまらないと思うものは様々なので、どこか心を動かされる作品に出会うためだけに適当なギャラリー巡りをするのも一興だ。

 その結果、何も気に入るものが無かったな……とぼやくのも、全く鑑賞者の自由なのだから。

 当記事で紹介したギャラリーの大部分は以下のリストにまとめたので、ロンドン旅行&散策の際にでもご利用いただければ。ぜひ、現地での滞在を楽しんでくださいね。

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