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彷徨する自由帖

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シャーリイ・ジャクスン《The Haunting of Hill House (丘の屋敷)》「誰かにとっての現実」を前にして、真実の存在は霞にも等しい

かのスティーヴン・キングにも大きな影響を与えた小説、「ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス (The Haunting of Hill House)」を原文で読んだ。1959年に米国で出版されたもので、ゴシック・ホラーやサイコ・ホラーの枠に分類されることが多い。著者はサン…

回答しました:はてなブロガーに10の質問|10周年特別お題

はてなブログ10周年特別お題「はてなブロガーに10の質問」企画が開催されていたので投稿してみます。

オーレ・ルゲイエ兄弟との戯れ

// はてなブログ10周年特別お題「10年で変わったこと・変わらなかったこと」 むやみに抵抗するのをやめた。 その柔らかい、見えざる空気の手のような、ふとした瞬間に眉間と側頭部を撫でまわしてくる強い眠気に対して。 特に休みの日は少しも抗わない。ただ…

清めたり呪ったり - 日本語と英語にある「地面に塩をまく」にまつわる慣用表現の違いについて

葬儀業界の片隅で仕事をしていると、お清めの塩の存在について思いを巡らす機会がたびたびある。現在ではさまざまな理由で、会葬後の参列者に塩を配らない場合も増えているようだが、ひと昔前はより一般的な風習だっただろう。死にまつわるものを不浄、穢れ…

蜘蛛がだんだん大きくなる(ような気がする)/ 26歳の誕生日

何かに没頭すること、またはその様子を指して、慣用的に「時間を忘れる」と表現する場合がある。「集中していたら、いつの間にか時計の針が円を半周していた。すっかり時間を忘れていた」……のような具合に。けれどもしもほんとうに時間を忘れるなんてことが…

魅惑のラム酒とバニラ、秘密の女・クララ|ペンハリガン (Penhaligon’s) のポートレートから

英国、という以外には場所も時代も不明などこかに佇む、中世盛期に建てられた大きな邸宅にはある貴族の一家が住んでいた。彼らはそこで多くの使用人を抱えながら、実にイギリス上流階級らしい生活を送っているそうだ。一見すると単に優雅で平穏な毎日が営ま…

丘をふたつ越えて鉄道駅まで

一歩ずつ坂を上りながら、まるで深皿の底にあるような場所だな、と思う。普段自分の暮らしているところは。まあまあ高さのある丘に、四方を囲まれている。外へ出るにはそれを越えなくてはならない。丘のてっぺん、皿のふちに立って内側を見下ろすと、ちょう…

「願望の成就」と「幸福」の一筋縄ではいかない関係《幸福の長靴》ハンス・クリスチャン・アンデルセン - 近代の童話

この世界で、全てにおいて心から満足している誰かがいたとすれば、その人間は「幸福とは何か」を考える必要性には迫られない。また「理想」について、あえて言葉で語ることすらないだろう。言うまでもなく、現状こそがそのまま完璧を体現しているに等しいか…

緑色の袖の君に焦がれて - 電話の保留音 グリーンスリーヴス

勤務中、一日に一度は必ず、言い知れぬ切なさと正体不明の愛情で、心をきつく締め付けられる羽目になる。自分には全く関係のない時代、関係のない場所の風景、そして関係のない「はず」の、誰かの姿がぼんやり浮かんで。これもすべて、ある歌のせいだ。緑色…

英国ペンハリガン (Penhaligon's) のフレグランス、ルナの香り|愛用品たち(2)

いろいろな香水を楽しむのが好きだけれど、基本、使う頻度も量も少なくて、集めたアトマイザーのサンプル(2mlくらい)ですらぜんぜん減らない。一般的に売られているものは50~100mlのものが多く、とても新鮮なうちにすべてを使いきれない……。そんな筆者で…

ペリカンの代表的な万年筆「スーベレーン (Souverän)」M400青縞の使い心地|愛用品たち(1)

昨年から日常的に使い始めた万年筆。所持している本数もインクの種類も決して多くありませんが、用途によってそれぞれを使い分け、毎日書き心地を楽しんでいます。適切な手入れを続ければ本当に長く使えるものなので、愛着が湧きますね。なかでも、特にたく…

トナカイ肉の味が忘れられない

暑さがしぶとく居座る夏の終わり、アスファルトの隙間から生えた雑草の先が足に当たるほど伸びている時期には、不意にトナカイ肉の味を思い出す。服の下で汗が背中を伝う瞬間、とりわけ鮮明に。初めて食べたのは、ここからは遠い北方にある国だった。旅行中…

紅茶はおいしくて楽しい。場面や好みに応じて色々な種類・形式で

はてなブログの今週のお題は「好きなお茶」であるそうなので、以下には家でも手軽にできる自分なりの紅茶の楽しみ方や、他にも外食の際とか、別の場所で出会った紅茶の種類などを書き残してみる。おいしくて楽しい紅茶、私はきっと禁止されないかぎり、高齢…

中島敦の《狐憑》に描かれる詩人(作家)の姿 - 連作短編「古譚」より|日本の近代文学

中島敦の連作「古譚(こたん)」のうちのひとつ、狐憑。かつて中央アジアに国家を形成していた遊牧騎馬民族、スキタイ(スキュティア)人のとある部族に生まれた一人の男と、彼の辿った運命の物語。それが、人間社会のなかに存在する芸術家(作中では「詩人…

美術系の専門コースがある高校に通っていた|カリキュラム・良かったこと・思い出など

ここでは個人的な振り返りも兼ねて、私が通っていた高校の専門コース(美術系)が一体どんなところだったのか、また、どのような部分が良かったのかを紹介してみようと思う。残念ながら、母校に存在していた美術コースは既に募集を停止し廃科となっているた…