少し前に、古書店で「金の芽 インド紅茶紀行」という書籍を見つけて手に取った。
大好きで本当に毎日飲んでいる紅茶。その茶葉の産地のひとつであるインドや、実際の茶園の様子について、輸入販売者の目を通して詳しく知ることができそうだと思ったのがはじめの動機。
出版年は2002年、もとになった単行本は1998年の刊行としばらく前だが、参考にはなる。
ちなみに著者の磯淵猛氏は、日本のお店「紅茶専門店ディンブラ」の開業者である:
(イギリスの植民地支配からの流れを汲んだ、インドの茶農園の環境や現地の人々についての話で)一客が何万円もするウェッジウッドやロイヤル・ドルトン、ミントンの器で、豪華に華麗に美しく、何も考えないで飲んでいる人達にもその状況を知ってもらいたい。
(集英社文庫「金の芽 インド紅茶紀行」(2002) 著:磯淵猛 p.18)
読んでみた結果、紅茶の豆知識だけではなく旅行エッセイとしても魅力的な本だったせいで、この状況下なのにまたどこかへ出掛けたくなる強い欲求に苛まれてしまった。
本当に困ったもの。
はてなブログの今週のお題は「好きなお茶」であるそうなので、以下には家でも手軽にできる自分なりの紅茶の楽しみ方や、他にも外食の際とか、別の場所で出会った紅茶の種類などを書き残してみる。
おいしくて楽しい紅茶、私はきっと禁止されないかぎり、高齢になっても毎日飲み続けていると思う……。
目次:
家で楽しむ
日常的に紅茶を飲む習慣について考えると、しばらくロンドンに住んでいたときのことを思い出す。本格的に中国から茶葉の輸入が開始された、17世紀後半から現在に至るまでで、イギリスでは貴族も庶民も紅茶に親しむ文化が発展してきた。
私のまわりではコーヒー派の人も多かったけれど、やっぱり老若男女問わず紅茶は飲まれていて、ティーバッグの常備されていない家はほぼ無かった。猫も杓子もお茶が好き。
いつも優雅な感じなのかといえばそうでもなく、特に慌ただしくなりがちな朝には一杯のマグカップにお湯を入れて、ぞんざいにティーバッグを落としたかと思えば、スプーンなどで潰すようにつついて濃い液体を作ってしまう。最後に、適当な量のミルクをドバっと注いで終了……という場面もたくさん見られた。
まあ上の例は極端であるものの、自宅で飲む紅茶はこだわりを持って丁寧に淹れるも良し、最終的に飲めればOKの姿勢でいるのも良しで、自由かつマイペースに楽しめるのが嬉しい。
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ストレート+α
コンビニスイーツは、温かい紅茶の一杯と組み合わせると手軽なままでさらにおいしい。
お茶の持つ香りや風味を、そのまま贅沢に味わえるのがストレートティー。今ではインターネット上で検索すると「おいしい淹れ方の基本」について解説してくれているページがたくさんあるので、よく参考にしている。
大切なのは水と温度なのだという。あらかじめ温めておいたポットに適量の茶葉を入れ、できるだけ100℃に近いお湯を注ぐ。このとき茶葉が十分に広がるための空間を確保するのもポイント。最後にしっかり蒸らして、ポットの中を軽くかき混ぜたらティーカップに注ぐ。
蒸らす時間は紅茶の種類によっても異なるので、それぞれのパッケージを都度確認したい。
ちなみにここ数カ月で購入した茶葉の中で、自分用か来客用かを問わず、日常的にストレートで飲みたいと思ったものはこれだった:
【クスミティー サンクト ぺテルブルク】
ベルガモットの香りがするけれど、度合いは一般的なアールグレイよりも弱めで、その代わりに薄くほんのりとバニラやキャラメルの気配がする。強い癖がないので比較的多くの人に好かれそう。おいしい。
また、紅茶に加えて味の幅を広げられる、個人的なおすすめアイテムがこれ。
日本ではカルディコーヒーファーム等で取り扱われている、ドイツのメーカー・ミヒェルゼンの「キャンディス」。色々なフレーバーが付与された瓶詰の氷砂糖。
ときどきSNSでも話題になる人気の商品で、写真に写っているオレンジキャンディスのほか、ラムキャンディス、ジンジャーキャンディスとその種類は多岐にわたる。
ものによってはアルコール成分が含まれているものもあり、寒い冬に一息ついて温まるのにも最適。
基本的に紅茶には砂糖を入れないのだけれど、これは別枠で、たまに味わいたくなる。アールグレイに入れるなら同じ柑橘系の香りがするオレンジキャンディスがいい。
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チャイ風ミルクティー
鍋を火にかけて牛乳で煮出す、チャイ風の濃厚なミルクティー(よく言われる「ロイヤルミルクティー」という呼称は日本特有のものだそう)も魅力的。
続く感染症蔓延の影響で在宅している期間が長くなってから、家にいるとき自分で作るのにおすすめの茶葉を調べていて、ロンネフェルト社の「アイリッシュモルト」に辿り着いた。
その名の通り、アイリッシュモルト・ウイスキーの香りづけがされた茶葉になる。
煮出す前、袋を開けると直接鼻に届くのがカカオで、印象は完全にチョコレート。それが、試しにストレートで淹れてみるとがらりと変わって、コクのあるウイスキー系の風味になる。癖が強めなので、このまま楽しめるかどうかは好みの分かれるところか。
反対に、牛乳を入れてミルクティーにしてみるとウイスキー風味がすっかり飛んで、なめらかなチョコと紅茶が調和するような感じに。こちらの方がいい、と個人的には思う。
以下のページに掲載されているレシピを参考にして、実際にチャイ風ミルクティーを作ってみた。
通常よりも多めの茶葉を使い、弱火でじっくり。カカオのものすごくいい匂いがする。
紅茶が十分に抽出されたら冷たい牛乳を入れ、ひと煮立ちさせたら、泡が出てきたところで早めに火を止めるのがよいらしい。そうしてしばらく蒸らす。
最後にあらかじめ温めておいたティーポットに注いで、お好みで砂糖や蜂蜜などを投入すると完成。
なんだかいくらでも飲めそうな感じがする。用いるのは牛乳の代わりに豆乳でも良いそうなので、今度試してみたい。
こうして、自宅でもこんなにおいしい濃厚ミルクティーを作れるんだ、と実感できたのは大きな収穫だった。寒い日の在宅ワークのお供にどうでしょう。
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変わり種、紅茶リキュール
いわゆる普通の紅茶以外でも紹介したいのは、フランスの食品店「フォション」が出しているティーリキュール。フォションは普通の紅茶もおいしいものが多いけれど、こういった変わり種も捨てがたい。
割って飲んだり、紅茶に混ぜたりといろいろ楽しめる。
甘さとアルコールで体を温める紅茶のリキュールは、これからの季節、家でゆっくり過ごす時間にぴったりだと思う。冬休みの時期や年末年始の夜更かしにも。飲むと内側からぽかぽかする。
なかには薬っぽい風味が苦手かも、という人もいるので、好みに合うかどうかをぜひ試してみてほしい。私はお菓子などの食品に使われている以外のアルコールがそこまで好きではないのだが、これは抵抗なく飲めた。
アマゾン限定で販売されている上の二本が量的にも価格帯的にも手に取りやすい。
外で楽しむ
家ではなくどこかのお店で飲む紅茶の醍醐味はなんだろう。
たとえば、メニューに載っているまだ飲んだことのない名前の茶葉を探したり、家では面倒でやらない(もしくはできない)淹れ方のものを注文してみたり、はたまたできたてのご飯やお菓子と一緒に頼んだりすること……と無数に挙げられる。
自分で淹れるのも安らぐけれど、席に案内されて、誰かに用意してもらう紅茶もまた格別。雰囲気のよい喫茶店やラウンジだとまた嬉しい。
特筆すべきなのは、ある程度紅茶のおいしさを売りにしているお店には、大抵の場合「オリジナルブレンドティー」という選択肢があるところ。文字通り、独自に配合した茶葉から抽出される無二の味と風味がどんなものなのか、素通りせずに確かめたくなる。だからメニューにあると必ず一度は注文してしまう。
ちなみに、チェーン店で飲めるオリジナルブレンドの紅茶で私がいちばん推しているのは椿屋珈琲店のもの。ライチの香りが好みにドンピシャで。
というわけで、ここからは家族や友人と訪れた場所で満喫した紅茶を記載します。
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アフタヌーンティー形式
わくわく楽しいお茶会といえばまさにこれ、いつでも大好きなアフタヌーンティー。
写真は、神奈川県にあるホテル内の「ひだまりのレストラン Le Ciel Molino ル シェル モリノ」で開催されていた、桃のアフタヌーンティーにて提供されたメニュー。前菜にはこれと別にサラダとポタージュも出てきた。
1段目のキッシュ、ちょっとしょっぱいな? と思ったけれど、他の甘味との兼ね合いを考えると丁度良かった気がする。きっとそんな風に味は計算されている……。
ポットで出てくる紅茶はやはり飲み放題なのが素晴らしく、とりあえずダージリン、アッサム、アールグレイと定番のものを注文してから、最後にマルコポーロという名前のものを飲んでみた。
あの有名なマリアージュ・フレールの商品と同じ名前なので、そうかと思いきや全く異なり、苺のフレーバーが付いている紅茶だった。どれも美味しかったけれど、特にマルコポーロとアールグレイのふたつが私はおすすめかもしれない。
また、アイスティーもおいしかったし、コーヒーやハーブティーにもそれぞれ多様な選択肢がある。その時の気分や舌の主張に合わせてなんでも豊富に選べるのがいい。
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ウインナーティー
このメニューに初めて出会ったのは、新宿にある24時間営業の喫茶店「珈琲貴族エジンバラ」だった。
ウインナーコーヒーはわかる。大抵のカフェで提供されているものだし。でも、果たしてウインナーティーとは? コーヒーの紅茶バージョン……クリームが付いてくるのだろうか、と頭をひねっていると本当にその通りの品が出てきた。
甘くないクリームで、スプーンですくって乗せるようにしてカップへ投入すると、じんわり溶ける。飲んだ時の印象は、牛乳を使った通常のミルクティーに比べてすっきりしていると感じた。フレッシュ(ポーションクリーム)を混ぜたコーヒーと似ているかもしれない。
重たい食事の後にひと息ついたり、これ単体でクリームの深みと紅茶の風味の組み合わせを楽しんだりと、定期的に飲みたくなる。
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ティーレモネード(炭酸入り)
冷たい紅茶と炭酸の組み合わせ、これを許すか許さないかは大きく意見の割れるところ。私は夏になると無性に惹かれてしまう。
横浜の馬車道十番館で提供されているティーレモネードは、アイスティーをベースにレモン果汁と蜂蜜を加え、炭酸水と組み合わせたものになる。下の方に紅茶味の液が沈んでいるので軽くかき混ぜるといい。
添えられたミントの葉と輪切りのレモンがさらに爽やかさを強調している。
メニューには他にもオリジナルブレンド紅茶や、ジャム付きのロシアンティーがあり、馬車道付近は散歩していても面白い場所なので休憩がてらティータイムで立ち寄るのがおすすめ。
最後に - いつでもそばに紅茶を
せっかくこうして記事にまとめるなら……と過去の紅茶写真をいろいろ引っ張り出してみたが、それを売りにしているカフェ等に限らず、とにかくどんな飲食店であってもだいたい紅茶を飲んでいることが判明した。
これは新宿にある「らんぶる」のボリュームたっぷりサンドとミルクティー。サラダと卵もついてくる。
家でも、手軽な日東紅茶の100個入りティーバッグの箱を常に常備してガンガン消費しており、もはや立ち位置が水のよう。おいしいなぁとしみじみ思う。
同じくカフェインの中毒性が発揮されている緑茶やコーヒーも大好きだけれど、この紅茶独特の魅力はどこから来るんだろう。
毎日のお供だけでなく、時間のあるとき特別丁寧にじっくり味わう種類の茶葉もいいし、状況に応じて常に紅茶を生活の中に置いておきたい。
ところで筆者は旅行が好きなのですが、宿泊先のホテルにアメニティとして常備してあるティーバッグ紅茶を使って一息つく瞬間、本当に安らぎませんか。あれ、大好きなんです。
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はてなブログ 今週のお題「好きなお茶」