昨年から日常的に使い始めた万年筆。
所持している本数もインクの種類も決して多くありませんが、用途によってそれぞれを使い分け、毎日書き心地を楽しんでいます。
適切な手入れを続ければ本当に長く使えるものなので、愛着が湧きますね。
なかでも、特にたくさん文字を書く職場で手に取る頻度が多いのは、上の写真のスーベレーン。
ドイツの老舗文房具メーカー・ペリカン社のもので、キャップの頭に付いている冠にはそのシンボルマーク(ペリカンの親子)が刻まれているのがわかります。
同名の製品でも色や大きさの異なるものが複数あり、私が使っているのはM400の青縞で、ペン先の太さはFの細字。他と共通しているのは、インクの補充方法が回転吸入式であること。
それ以外にも、たまに数量限定で特別なデザインの軸も製造されているようです。以下のバイオレット&ホワイトとか、グリーン&ホワイトとか。大人気を博したターコイズはもう見つかりませんでした。
スーベレーンは非常に評判のよい万年筆のうちのひとつ。
具体的にどのような特徴があるのか、また実際に1年ほど使用してみてどんな部分が印象に残ったか、以下に記してみます。
まずは大きさと重さについて。
私の購入したM400は全体の長さが約14.9cm(軸の寸法は約12.7cm)、幅は約1.2cmとなっています。
そのままだと身の周りにある多くのペンと比較しても数センチ短いのですが、筆記の際はキャップを本体の末尾の部分に差し込むため、持ってみると丁度良いと感じました。
スーベレーンは商品名の数字の頭がサイズを表していて、例えば300ならこれよりも小さく、反対に600、800、1000と大きくなるにつれて万年筆のサイズも大きくなります。比例して、本体の重さとインクの吸入量も。
このM400の重さは約15g。最も大きいM1000が約33gなので、それの半分以下です。実際に持ち上げてみると軽さがよくわかります。
軽いと手指への負担が減って書きやすいと思うか、あるいはもっと重たい方が安定して書けると思うかは、使用者の好みや筆記の状況によって異なるでしょう。
私の場合は取材しながらメモを取る頻度が多いため、なるべく素早くペンを走らせることができる点がありがたく、M400の軽さにはいつも助けられています。動かすときに最小限の力しかいらないので全然疲れないのが嬉しいところ。
持ち歩くにも適した大きさです。
それから、肝心の書き心地について。
ペン先は14金にロジウム装飾です。
スーベレーンを使って筆記するうえで、何か問題を感じたことは今までありません。引っかかりが全くなく、インクのフローも滑らかで、かすれるような気がするときはうっかり軸内にインクを補充し忘れている場合のみ。
私が選んだペン先の太さは「F」で、極細字、細字、中字、太字……とある中の「細字」に該当しています。この区分はペリカンでも他社の万年筆でも共通です。
ただし、万年筆のペン先の太さの基準は製造するメーカーによってかなり幅があります。
文房具店の店員さんいわく、一般に日本製のものの方が、漢字など画数の多い文字を筆記するのに対応してか、同じF(細字)でも特に細めになる傾向があるとのことでした。
さて、スーベレーンを作っているペリカンはドイツの文房具メーカー。同じFでも、例えば日本のセーラー万年筆の細字などと比べると、やはり太めです。
なので私は取材のメモをとる際や下書き、自由なアイデア出しなどにスーベレーンの細字を使って、楷書で何かを記入する際には他のFかEFの万年筆を使っています。
ゆったりとした書き味を優先するならF(細字)で、基本的に小さな枠内へ文字を書く頻度が高い、という人ならEF(極細字)がおすすめ。
そしてインクの吸入に関してですが、スーベレーンはカートリッジでもコンバーターでもなく、回転吸入式の万年筆です。
軸に直接インクを吸わせていく形式で、洗浄の際も内部のパーツを分解して取り出す必要はありません。ただし軸全体を濡らさないように注意。軸の胴体(ストライプ部分)に使用されている、セルロイド・アセテートが膨張してしまう可能性があるためです。
インクを入れるときはまずキャップを外し、軸の尾にあるノブを反時計回りに目一杯回しましょう。そうしたらペン先をインクに浸し、今度は反対に向けて、再びノブを回します。これで吸入ができます。
回転が止まるところまできたら、何滴かインクを落として終了。汚れた部分を拭いてさっそく筆記することが可能に。
敷居が(あとお値段が)高いと敬遠されがちな万年筆、実際はとても親しみやすく、きちんと管理すれば長持ちするので経済的でもあります。
日々の仕事を通して使うだけでなく、趣味の執筆作業にも、あるいは試験勉強などにも広くおすすめできる品物。
特に上で紹介したスーベレーンは、これからもたくさん活躍してくれそうな頼もしい一本です。
手元にあると、紙に「書く」行為がもっと楽しく快適になります。