昔は外で「ネギ坊主」を見かけるたび、単なる野菜ではなく何か特別な、魔法の植物だと思っていた。そもそも、彼らがネギだということすら知らなかった。畑のうねに沿って細長い緑の首が並び、先端にやわらかそうな白い花をつけている。近寄って吹けば、コロ…
横須賀市のショッピングモール《コースカ ベイサイド ストアーズ》の一角には、かつての米海軍EMクラブで使用されていた、一台のシャンデリアが今でも使用・展示されている。場所は、汐入桟橋から吾妻島の周囲を廻り、新井掘割水路を通って戻るクルーズ「YOK…
生まれてこの方、英国に留学していた数年を除いてはずっと住み続けている地元、神奈川県。代表的な横浜をはじめとした地域に、私の大好きな近代遺産が多く集まっている興味深い県なのだが、ではそのすべてに足を運んだことがあるか……と問われれば、答えは否…
まだ幼い頃、夢中になって読んだだけでなく、いまでも自分の心を捉えて離さない。もしもそんな児童文学作品をひとつ選んで挙げなさいと言われたら、私は間違いなく「シェーラ姫の冒険です」と答えるだろう。主に1990~2000年ごろ生まれた方々の中で、児童書…
生きて、何かをしようと思い立ったときに発生する意志は流動的だ。それは決して触れられないほど熱くはないまでも、ある程度の温度を持っている。たぶん、飲み頃のお茶よりも幾分かぬるいと言えるくらいには。だから注ぎ込む型によってその形状を変えられる…
最近、Zoffのブルーライトカット眼鏡(35%)を買ってみた。そもそもブルーライトとは可視光線の一種で、なかでも波長が短く、強いエネルギーを持っている光のことらしい。テレビやパソコン、スマートフォンの画面からも放射されており、場合によっては疲れ…
もう使いもしないのにずうっと部屋の中に置いてあるもの。そのうち捨てようとしているものと、結局は捨てられなさそうなもの。あるいは疎遠になってしまった友達や、知り合い。その気になれば連絡先を探し出すことは容易だが、わざわざ行動を起こしてまで維…
ポーラ美術館で2021年4月4日まで開催されていた企画展は、《Connections ―海を越える憧れ、日本とフランスの150年》と題され、19世紀後半から20世紀初頭にかけて、日本とフランスの二国でどのように文化の交換がなされていたかを美術作品から読み解くものだ…
定期的に人間関係をリセットする癖、あるいは症候群……とでも表現するべきか。今までかかわりのあった人達との連絡手段をとつぜん絶ったり、次の移動先を告げずに所属していた組織を去ったりして、その都度違う場所でまったく新しい関係性を築こうとする性質…
フランスの都市リヨン生まれのアントワーヌ・サン=テグジュペリ(1900~1944)は、優秀な成績を残したパイロットであり、また寡作ながら深く心に刻まれる作品を生み出した作家でもある。代表的な「星の王子さま」は私にとって本当に重要な物語で、今までに何…
港に面した土地には、故あって外国由来の名前を授けられた小路やら、橋やらが本当に多くある。南の長崎はオランダ坂、そして神戸は人名風のハンター坂にトーマス坂など、例を探せば枚挙にいとまはない。横浜・山手の一帯も例に漏れずそのうちの一つだ。なか…
泉鏡花の小説、また戯曲は、第一に取っつきにくい。そしてどうにか取っついたとしても、読み進めるのが難しく、かつては紐解こうとしたけど断念してしまった。あるいはとにかく表現が晦渋だ。……などなど。現代、令和の時代を生きる読者にとって、鏡花の作品…
具合が悪いといえど、目を開けていられないほどではなく、全く身体を動かせないほどでもない。その状態が、まるで免罪符のようだと思う。どこからか「お前は休んでも構わない」と告げられている気がする。今は行動を起こさなくてもよいのだと。特に異常のな…
売り言葉に買い言葉、勢い余って「家」を飛び出すことなど頻繁にある。それ自体は別に珍しくも何ともないし、大抵の場合しばらくすれば原因すら忘れてしまうものだが、今回は内容が内容なだけに簡単にはいかなかった。そういう心のまま「こちら側」に来るの…
横浜市中区には、現在《横浜三塔》の愛称で呼ばれている、見どころの多い代表的な歴史的建造物が建っている。神奈川県庁本庁舎、横浜税関本関、そして横浜市開港記念会館がそれにあたり、どうやら昭和初期のころに外国船員がランドマークとして名前を付けた…