まゆのやま……。その「形状」から眉山と名付けられた山だと聞き、新町橋の側に立って、泰然とした姿を見上げた。手前にあるビルの「探偵社」や「カメラ高価買取」などという文字列につい気を取られてしまうが、違う違うそっちじゃないよと自分に言い聞かせる…
SEA GLASS CANDY、しおサイダー、スイカのカクテル。最近出会った「塩味」がきいているもの。
耳は聞こえるが声を発することができぬ唖者のため、手話を用いて意思の疎通を行う《図書館の魔女》、名をマツリカ。そして、常人よりはるかに鋭敏な感覚を持っているものの、文字の読み書きができない少年キリヒト。1の言葉で100を想像させる表現があるとす…
分散型、時に連合型とも呼ばれるSNSのなかでも、ActivityPubという通信プロトコルを使用している「Mastodon(マストドン)」に触り始めて数か月が経った。初めは「分散型? ううむ……中央集権型の対極に位置するのは分かるけれど、具体的な『感じ』は一体どうな…
時代や地域を特定させる固有名詞が意図して省かれているにもかかわらず、読んでいれば、舞台が第二次世界大戦中のヨーロッパのどこかであることはすぐ明らかになるだろう。アゴタ・クリストフ「悪童日記 (Le grand cahier)」は、3部作を構成するうちの初めの…
言問団子の店舗から桜橋方面に向かって3分くらい歩くと、交差点に面した位置に、文字通り「カド」という飲食店があった。季節の生ジュースとくるみパンの店。この、盾のような看板には思わず足を止めてしまう。お店の公式Instagramを参照すると制作者の方々…
2023年8月14日㈪~8月20日㈰の日記(順次追加)
「批評誌『Silence』Vol.2 ~病いとともに。~」にエッセイを寄稿しました。タイトルは「記憶 - 病と病院、本にまつわる六つの章 -」になります。来月開催の文学フリマ大阪11、会場のK-53ブースにて頒布される予定です。
はじめての繭期とは、脚本家の末満健一氏が手掛けるオリジナルの舞台「TRUMPシリーズ」から、数作品が不定期に無料配信される企画。まだ作品を知らない人への入口として、気軽に内容に触れる機会を設けてくれているのは大変ありがたい……! 私は友達に「好き…
向島の和菓子の店「言問団子」は店内に椅子と机が置かれていて、団子か最中(もなか)を注文したら座ってすぐ食べることができる。峠の茶屋みたいな趣、壁の2面が硝子戸で明るく、春先に訪れた際は吹き込む風も心地よかった。でも季節柄なのか相当に強い風で…
あるものが、確かにそこにあったと示すもの。仮に失われれば、確かに存在していたという証拠が揺らいでしまうもの。この場合の「痕跡」というのはなんと表現すればよいだろうか。文字や図画などはほとんど記録そのものだといえそうだけれど、例えば目に見え…
つめたいカフェ・アマレットは、炎天下の砂浜に3時間もかがみ込んで、無心でガラスの欠片を拾っていた身体によく沁みた。爽やかでほんのりと甘い。表面のクリームを落としてかき混ぜると、よりまろやかになる。その大きなグラスに浮かぶ砕氷が奇しくもシーグ…
絶版の日本語版は手に入らなかったので、原著の電子書籍を購入して読む。「オドの魔法学校」は何より、ヌミス王国の都ケリオールに存在する区画のひとつ、トワイライト・クォーター(Twilight Quarter, 原島文世氏訳だと「歓楽街《黄昏区》」となっている)…
地上に張りついたレールを基盤として、暁を待つのではなく、そこへ向かってひたむきに走るのが夜行列車だ。そう、真面目かつ「ひたむき」に、自らに与えられた職務に忠実に、両脇から迫る闇を振り切っていく。それは夜に属し揺蕩うものというよりかは、夜を…
私が嫌いなのは、web上で特定の語句を入力して検索を行うと、結果の一番上にまるで広告のように厚生労働省の「自殺対策 - 電話相談」というページが自動的に出現する現象。タイトルからページの内容に飛ぶと、そこにはなんとかSOSとかなんとかホットラインと…