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彷徨する自由帖

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ウズベキスタン旅行記(1) 古都サマルカンドのグーリ・アミール廟は星の洞窟のようで

目的地を頭に思い浮かべ、はぁ行きたいな......と念じ続けていると、いつのまにか航空券の予約が確定されている。口座からはその分のお金がしっかり減っている。つまり、どこかへ旅行するのを決めるというよりか、もう既に「決まっていた」と言う方が私にと…

無価値な現状を認め、受け入れる|自己肯定感を捨てて

人間はただ生きているだけで、そこに存在しているだけで価値がある――なんてものは嘘も嘘、大嘘だ。それは、世の人間のうちほんの数%が享受できる特権であって、残りの大多数は適切な努力をしなければ、同じ土俵にすら上がれない。確かに生きているだけで、…

元町公園・ジェラールの瓦工場と水屋敷跡、静かな近代産業の史跡|横浜山手の丘散歩Ⅰ

横浜元町は、明治・大正期の雰囲気や史跡が好きな人(私です)にはうってつけのお散歩スポットだ。西洋館をはじめとした異人達の暮らしの痕跡や、歩道の傍らに自働電話ボックスの復元などがあり、どのエリアを歩いていても当時の雰囲気を偲ばせる何かに出会…

マルタ共和国旅行(5) 首都ヴァレッタ編|戦火に耐えた世界文化遺産の街

1980年、その全体がユネスコ世界遺産に登録された町、マルタ共和国の首都ヴァレッタ。マルタ語での表記はイル・ベルト(Il-Belt)になる。宿泊していたスリーマ地区の岬に立つと、海を挟んだ向かいにカーマライト教会の象徴的な丸いドームを望むことができた…

来たる秋には、飽きのこない美味しさを:横浜「食」の散歩記録

自意識過剰なので、今週のお題の説明文にある「秋っぽい」という言葉が勝手に脳内で「飽きっぽい」に変換され、あっそれ私のことじゃん......と思うのだ。お題にこじつけられることが食欲の秋・味覚に関連した散歩の思い出くらいしかないし、もっと友達に地…

《死後の恋》夢野久作 - ロシア|近代日本の小説家による、外国を舞台にした短編のお気に入り(3)

王朝文化が栄華を極めた帝国から、ソヴィエト連邦への変遷をたどったロシア......この時期に囁かれた「アナスタシア伝説」を題材にした作品は多い。私の愛するミュージカルアニメ映画《Anastasia(1997)》や英国ロイヤル・バレエの演目のほか、最近ではスマ…

マルタ共和国旅行(4) 古都イムディーナ編|音を吸う石畳に導かれて中世の邸宅へ

かつてマルタ共和国の首都として栄えた古都、イムディーナ。21世紀の今は政治と文化の中枢を担う役割を終えて「静寂の町(Silent City)」の異名を冠し、多くの旅人を飲み込んでは吐き出しながら、歴史の一端を語り続けている。その平穏を守る強固な壁の内側…

マルタ共和国旅行(3) ゴゾ島徘徊編|街の城塞の軌跡、そして教会の奇跡の片鱗を辿る

マルタ本島からフェリーで渡ったゴゾ島。総面積がおよそ67平方キロメートルと、かなり小さい島だ。これは日本・神奈川県内に位置する平塚市の面積とほぼ同じ......なのだが、近辺に住んでいない人には絶対に実感として伝わらないので、全く役に立たない例え…

薪ストーブという魔法の箱

肌寒い季節が刻々と近づいてくると、私は「薪ストーブ」の火をしばしば脳裏によびおこす。有史以来、人間は炎に代わる様々な方法で暖をとってきた。直に焚き火のまわりを囲んでいた頃から、暖炉の発明、火を利用した蒸気や温水のシステムにつづき、新しく利…

マルタ共和国旅行(2) 古代の遺跡編|巨石神殿と巨人は言葉で語らない

一般には、マルタを訪れる人々の大半は遺跡ではなく、美しい海に囲まれたリゾートを目的にして来ている。彼らにとって古代文明要素はおまけだ。そのせいか一人で現地に降り立ち過ごしていて、正直なところ疎外感しか感じなかった。遊歩道に沿って歩き、何故…

東京都庭園美術館《1933年の室内装飾 朝香宮邸をめぐる建築素材と人びと》に見るアール・デコの結晶|建物公開展2019

白金台(しろかねだい)の西端を占める皇室の土地。そこに建つのが、旧朝香宮邸――現・東京都庭園美術館。昭和初期に日本で完成した数ある洋風の邸宅の中でも、いっとう美しい作品の一つだと私は思っている。クリーム色の外観は装飾の少ないすっきりとした佇…

《倫敦塔》夏目漱石 - イギリス|近代日本の小説家による、外国を舞台にした短編のお気に入り(2)

これを読んでいる方々の中に、空想を日常的に好んで行うと自認している人はどの位いるだろうか。もしくは、普段から意識していないのに頭の方が勝手に働き、色々な出来事がどんどん脳内で展開してしまう、という人。その数は決して少なくないと思うし、かく…

マルタ共和国旅行(1) 到着&青の洞門編|地中海に浮かぶ信仰の島々で

上の写真は夏・真っ盛りのマルタ。私は一体どうして、そんな時期にこの国へと足を運ぶことにしたのだろうか。理由は自分自身にも皆目分からないが、多分、何でもよかったのだ。本当になんでも。海の綺麗なリゾート地に滞在しながら一度も水遊びはしなかった…

遺志、あるいは石の亡霊|増える建物

あるとき、「建造物の増殖」としか表現できない現象が頻発するようになった。はじめにそれを観測したのは、欧州の片隅にある小さな国の農夫。曰く、街の教会の塔の高さが徐々に増していっている、とのことだ。彼は、朝の決まった時間に塔の階段を数えながら…

旧香港上海銀行長崎支店記念館~海沿いの洋館が留めた舶来の空気・人々の名残|長崎一人旅(2)

電気軌道を降り、グラバー園に向かって大浦海岸通を歩いていると、左手の側に灰色をした重厚な、金庫じみた風采の建物があるのに気がついた。入口のある正面は長崎湾に向いていて、他に目立つものは少ない。その横に立つ、ガス灯を模した街灯のある一角だけ…