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彷徨する自由帖

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猛犬注意

宿屋か雑貨屋か、飲食店か分からないけれど、とにかくもう営業をしているようではなく、ただ奥の方が引き続き住居として使われているみたいな印象を受けた。ガラスの内側、手前には段ボールが置かれていたり、簡易的な椅子や机が見えたり。そこに1匹の犬がい…

西加奈子《通天閣》名も知らぬ他人には取るに足らない自己という物語|ほぼ500文字の感想

マストドン上の読書タグの投稿を見て、そういえばこちらのタイトル、確か自分の本棚にも(かなーり前から)放置してあったのでは……と積読していたのを出してきた。表紙が真っ赤。西加奈子「通天閣」は、果たしてどこで買ったのか覚えていない。

小川洋子《密やかな結晶》失われる、とはどういうことか|ほぼ500文字の感想

作中で「消失」と称される現象。これは一部の例外を除いた人々から、特定の物事に対する感慨を取り去る。そして「秘密警察」なる組織はそれを推し進める……。例えば香水が消失を迎えれば皆、香水を前にして何の香りも思い出も喚起できなくなり、さらには香水…

鎌田共済会 郷土博物館 - 大正時代に建てられた旧図書館|香川県・坂出市の近代建築

電車の窓からこの建物が見え、それで気になったのがきっかけで、わざわざ足を運ぶ人の数も多いのだと職員さんが言っていた。私達も岡山から快速マリンライナーに乗って来た。方角からすると、坂出駅に停車する直前で気が付く機会があったはずで、けれども白…

週間日記・2023 10/2㈪~10/8㈰

2023年10/2㈪~10/8㈰の日記(順次追加)

レイ・ブラッドベリ《塵よりよみがえり》魔族の館と人間の子供|ほぼ500文字の感想

同じ著者の「何かが道をやってくる」でも描かれていた〈秋の民〉。邪悪な存在と推測され、魔力を持ち、死なず永遠に存在し続ける闇の住民たち。どうやら「塵よりよみがえり」の方では、この秋の民の一族から見た情景や、さらにその屋敷に置き去りにされた『…

レイ・ブラッドベリ《何かが道をやってくる》怪しい移動遊園地、幼少期の転機|ほぼ500文字の感想

ブラッドベリは幼少期から、遊園地や道化師がもたらすイメージを恐れつつ、心の一部を囚われてきた。怪しげな存在に翻弄される2人の少年・ジムとウィルはある意味で著者の分身ともいえる。原題にある"Something Wicked"……何か邪悪なもの、というのはシェイク…

喫茶店 サザンクロス - 南十字星の山盛りクリームソーダ|香川県・坂出市

この北半球にいて、南十字星(Southern Cross)を拝める場所というのはさほど多くない。首都圏から南西の方角に下った四国も例外ではなく、けれどそこには、実際見えるはずのないサザンクロスが存在して人間を招いているのだった。道路際で、きちんと光を放つ…

週間日記・2023 9/18㈪~9/24㈰

2023年9月18日㈪~9月24日㈰の日記(順次追加)

四谷シモン人形館 淡翁荘 - 昭和初期の洋館、旧鎌田勝太郎邸が内包する幻想世界|香川県・坂出市の近代建築

現在「四谷シモン人形館」として門戸を開いている建物は、かつて鎌田醤油の4代目、勝太郎が坂出に建設した居宅。彼の号にちなんで「淡翁荘」と呼ばれていた。戦前の昭和11年に竣工した洋館で、現在は広い駐車場となっている横の土地から見ると実に四角く簡素…

小川洋子の短編集《薬指の標本》《海》とサイダー的官能|ほぼ500文字の感想

2冊のどちらもいくつかの話に(「薬指の標本」表題作では特に印象に残る存在として)『サイダー』『ソーダ』など炭酸水が登場する。炭酸飲料は性質からして官能的な気がする。サイダー類の液体がたとえば、あの大小の泡で上唇や口内、舌の先や表面、歯茎、喉…

F・ボーム《オズの魔法使い》エメラルド・シティの着想源 - 白の都(White City)と緑のゴーグル(Green Goggles)

単色に輝く建造物によって構成された壮麗な「白の都(White City)」。また、現実を変容させる道具としての「緑色をしたゴーグル(Green Goggles)」。ボームがこれらを目撃したことは、世界で長く読み継がれている《オズの魔法使い》の根本に今も息づいている。…

週間日記・2023 9/4㈪~9/10㈰

2023年9月4日㈪~9月10日㈰の日記(順次追加)

ホテルニューグランド「ラ・テラス」の緑色・黄色・酸味が爽やかなサマーアフタヌーンティー|神奈川県・横浜市

8月31日㈭まで。なみに17時以降に予約をすると「スイカのカクテル」が無料で付いてくるため、都合が合うなら断然夕方に行くのがおすすめだった。陽が傾いてからの方が少しだけ涼しいし、それから徐々に薄暗くなっていく中庭を窓から眺めるのもわりと好き。今…

夏目漱石《夢十夜》第二夜 より:和尚(宗教)と時計(文明・学問)のあわいに座して悟りを求めた意識

なぜ、和尚なのか。なぜ、時計なのか。なぜ「何か」がそれらの姿をとって現れなければならなかったのだろうか……侍(さむらい)も夏目漱石自身も、宗教と文明というふたつの要素に引き裂かれていた。それらを象徴する「和尚」と「時計」のイメージ。