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彷徨する自由帖

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旧本所の喫茶店にて|ほぼ500文字の回想

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 東京、墨田の旧本所で「豆板」というお菓子を作っている会社の、周囲から会長と呼ばれていたおじいさんと話した。

 初めて訪れた喫茶店の常連さんだった。

 

 会長……とは何をする役職なのだろう、私はよく知らない。

 その人のお父様が昭和2(1927)年に創業した製菓会社だと仰っていたので、もしかしたら2代目社長で、今は席を後継の3代目に譲って会長を務めているのかもしれない。

 そのあたりはどちらでも会話に影響しないので、聞かなかった。

 

 面白かったのが、若い頃に色々スポーツに取り組んでみた結果、チームプレーというものが持つ「しがらみ」の要素がどうしても気になるようになってしまい、最終的に個人で黙々と斜面を滑る「スキー」に落ち着いたと言っていたところ。

 スキーか。

 あれこれやったのは良いけれど、特にどれも極めることなく終わったと笑っていた。

当初70代くらいの方かと思っていたら「89歳」と教えられて、単純に驚く。とてもそうには見えず、尋ねた質問にも丁寧に答えてくれ……。

 

 肝心の豆板(初めて食べた)は、煮詰めた糖蜜のコクと、丹念に炒られたピーナッツの香ばしい風味がさくさくした生地に練り込まれ、凝縮されていたのが美味だった。

 硬めの本体をゆっくりじっくり噛むと、口の中に濃厚な味が広がっていく。

 

  ◇   ◇   ◇

 

 以下のマストドン(Masodon)に掲載した文章です。