静岡の熱海にある近代建築でも、とりわけ好きな起雲閣。何度か足を運んでいる。
JR熱海駅からだとしばらく歩く必要があるが、本当に散策が面白い土地なので、それ自体は全く苦にならないのであった。駅側からだと下り坂なのも影響するのか、あっという間に着く。
ちなみに、もう1駅先の来宮駅の方から行くのも裏道散歩の楽しみが増えるので個人的にはおすすめ。派手さはないけれど、住宅地付近を流れる水路などは心惹かれる要素のひとつだ。道幅が狭いので車などには注意するといい。
最も賑わっている場所からは離れて存在しているのにも、昔の別荘、後に旅館にもなった建物らしさを感じさせられる。表通りからだとその内装の豪華さは伺えない。入ってみないことには。
そんな起雲閣の玄関に続く薬師門を出たところ、道路を挟んだ向かいに甘味処があるのは以前から知っていて、けれど実際に入ってみたのは初めてだった。
付近を通るたび視界に入っていたのは、スピルバーグ監督の映画「E.T.」に登場する宇宙人を象った人形の存在。そう、奥まった入口の手前に和服の大きな宇宙人がいるのが特徴で分かりやすい。かなり印象的な、バシバシのつけまつげをしている……。
店舗の前には、起雲閣への入館を証明(領収書の提示)すると50円引き、とあった。なるほど。
入店するととてもこぢんまりとした店内にいくつかのテーブルが置かれており、一部販売されている民芸品や、旅の本などが壁際に並べられていた。カウンターにも数席。道路に面した側の窓のところには植物の鉢が置いてあって、透けて射しこむ冬の光が柔らかい。だんだん春も近付く頃だった。
この時は伊東のハトヤホテルで朝食を食べてから熱海に移動し、まだお昼をとっていなかったので、とりあえずざるそばを注文することにした。
メニューを見ると他に温かいうどんなどもあるらしく、友達はそれを。甘いものも食べたいけれど、お腹が空いていたらまず何かしらご飯を胃に収めずにはいられない。
店内には他にもうひと方、ご近所さんと思われるお客さんがいるだけで、とても静かだったのを記憶している。ちょうど梅の花が咲く季節だったから、そのお話をされていていたような気が。梅園に観光客がたくさん来るとか。
冷たいお蕎麦はつるつるしていて美味しかった。適度に弾力があり、伸ばしてもぶつ切りにならない。量も適度で、この後お菓子を食べたりお茶を飲んだりしたい、と思える程度に満腹になる。私は麺の上に載っている細切りの海苔と練りわさび、ねぎとめんつゆも含めてざるそばが好き……。
食後には一息つこうとティーフロートを。
綺麗に乗せられたアイスがまんまるの白い頭のよう。衝動的につつきたくなる。もちろん、銀色のスプーンの腹で撫で回していたら、たちまち溶けてしまうのだけれど。
組み合わせとして、アイスティーにアイスのフロートだと舌が冷え切ってしまうのでは……と思うけれどご心配なく、添えてもらった「ロータスビスケット」をかじればシナモン風味で味覚が少し戻り、ふたたび美味しくティーフロートを味わうのに集中できるのだった。パフェに刺さったウエハースと同じ役割を果たしてくれる。
ところでこの器、焼き物なのだろうか。とても可愛い。ごん太の持ち手がかりんとうみたいでたまらなかった。
熱海散策と起雲閣訪問の際におすすめの飲食店。
次は、お団子とクリームあんみつなどを食べたい。