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彷徨する自由帖

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珈琲茶論 - クリームソーダとトーストがおいしい駅前のレトロ喫茶店、漫画も読める|山梨県・富士吉田市

 

 

 

 開店は朝8時半。登山やハイキングをする客も利用する場所柄か、午前中まあまあ早めの時間帯に開いている喫茶店の例に漏れず、ここでもモーニングサービスが提供されている。店名は「珈琲茶論」と書いて、「こーひーさろん」と読むらしい。

 外出先で雨が降っていると、他に目的があっても屋内に留まって何か飲んでいたくなる傾向にある。とりわけ、もう少し時間が経てば晴れそうな気配がするときは。ずっと土砂降りなら早く自宅かホテルに帰りたいし、反対に快晴なら、大抵は歩いて回りたい場所の候補をいくつも持っているが故に。

 扉を押し開けると左手側に本棚があり、漫画が並んでいた。自由に手に取って読めそうだ。その向かいがカウンター席。スマートフォンの使い方をおじいちゃんがおじいちゃんに教えている。たまに、お試しで鳴らしているのか着信音が響いた。

 案内された奥のテーブルに腰掛けていると、今度は後ろの席から会話が聞こえる。しばらくして立ち上がった片方のおじいちゃんに「どこ行くの? トイレ?」と聞いたおじいちゃんが、すげなく「もうこんな時間だから帰るんだよ!」と返されて振られていた。まだ朝だが、平日だしきっと用事があったのだろう。

 

 

 モーニングセットにしたクリームソーダが運ばれてきた。

 ゆるやかな曲線を描くグラスのくびれが端正で、結露でぼんやりした表面を指でつつくと、中身の緑色がぱっと鮮やかになる。そこで気が付いた。液体に浸かっている2つの大きな氷が、球形なのだということに。そしてバニラアイスも球形である。アイスの下部はつぶれているが、上から水面に落とされる前は丸かったのだろう……。彼らは相似の関係にあった。硬さが違うだけで。

 溢れそうで溢れないきめの細かな泡が、絶妙なバランスで器のふちに盛り上がり、ぎりぎりで留まっている。洗練された職人の技。そこに頭を埋めている白いアイスの様子はさながら、寒い日に襟巻きをして、顔の半分をそこに隠している散歩者の姿を連想させる。坊主の。

 ストローで一口吸って、ここに配合されているのは明らかに、普通のメロンシロップだけではないと直感した。味が全然違うから。少し考えてみて、クリームソーダに添えられた一片のオレンジに目が行った。あ、これの味だ。おそらく。オレンジ果汁かオレンジ風味のシロップ、それがきっと混ざっているのだと思う。

 爽やかで濃く、美味しかった。炭酸も強めでしっかりしているタイプ。

 

 

 お楽しみの分厚いトーストは表面にバターがたっぷり染み込んでいて、歯ごたえや香ばしさよりも、しっとりした感じと柔らかさを求めている人におすすめ。食パンはほんのり甘い。バターはほんのりしょっぱい。引っ張ると千切れる生地の繊維、感触が心地いい何の変哲もないトーストは、当たり前に安心を誘った。

 そこかしこに置かれている外国の仮面や雑貨、または遠方の写真などは、店主の趣味だろうか。もしかしたら実際に自分で訪れた場所のものをお店に飾っているのかもしれない。

 平日の朝は席に余裕があるみたいで、けれど客足は絶えなかった。誰かが去ったら入れ替わりで誰かが来る。そういうところのようだ。

 ここから電車でひと駅離れた場所にある、ちょっと怪しい雰囲気のレトロな街並みが楽しい、月江寺エリアへ寄る際には電車を使う機会が多いだろう。大月方面から足を運ぶときなど、せっかくなので終点の富士山駅で降車して、珈琲茶論で何か飲んでいくのもきっと良い。