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旧帝国ホテル中央玄関 - フランク・ロイド・ライト設計の見学可能な建築(2)|明治村に移築された重要文化財

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前回の記事:

 

公式サイト:

博物館明治村 | 愛知県犬山市の野外博物館

 

 

 

 大正12年に竣工した、フランク・ロイド・ライト設計の帝国ホテル中央玄関。

 開業日はなんと関東大震災の当日だったというから驚きだ。

 

 これは当時、東京都千代田区……かの鹿鳴館の真横に位置していたが、解体に伴って玄関のみ明治村に移設された。

 かつては全長150メートル、3階建ての客室棟、と大きなスケールを誇っていたホテルの全貌を目の当たりにできないのは残念であるものの、ライトのデザインの白眉である玄関部分だけでも残っているのは素敵なことだと思う。

 建物が国の有形文化財に登録されたのは、平成16年のことだった。

 

 

 旧帝国ホテルの建物は色々な作品の聖地としても知られている。

 例えば、ゲーム《明治東亰恋伽》では小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の滞在しているホテルとして描かれたほか、ロビーも背景スチルとして多くのルートに登場する。

 また、アニメ《Fate/Zero》の1話にて、時臣・璃正・綺礼が密談していた場所がここだ。彼らは確か、バルコニーにも出ていた。

 明治村ではそこに足を踏み入れることはできないが、ガラス越しにバルコニーも、その先の風景も眺められる。

 玄関前の池まで再現されているところが非常によかったポイント。

 

 

 重厚ながら、決して開放感を損なわない雰囲気が魅力的。

 一歩足を踏み入れると3階までが大きく吹き抜けになっていて迫力がある。当時は大食堂や劇場がこの玄関から一直線に連なっており、両翼の客室も合わせると、前述のとおりかなりの規模の建築だった。

 着工から完成には4年の歳月を費やし、総面積は3万4千平方メートルにもなったという。

 

 

 大谷石とスクラッチレンガの素材上に施された細工や、まるで何かを編む糸のように入り組んだ櫛目(くしめ)の煉瓦が、温かみのある空間を織りなす。内側から柔らかく発光しているかのような「光の籠柱」や、「孔雀の羽」と称されるブラケット部分も見応えがあって楽しかった。

 館内に設置してある椅子(ピーコック・チェア)は明日館にある椅子とも共通点がある。背が6角形になっているのだ。

 現在3階部分は喫茶室になっていて、そこで外を眺めながら紅茶を飲んだ思い出。

 

 

 金箔の貼られたマスがところどころに挟まれているステンドグラス。

 これ以外の窓ガラスにも細かな幾何学模様が描かれており、間近で観察するのが面白かったので、中央玄関訪問時にはぜひ上の階にも立ち寄ってみて欲しい。

 

 

 フランク・ロイド・ライトは米国ウィスコンシン州の出身で、浮世絵のコレクターだったこともあって日本にはたびたび足を運んでいた。

 代表的な作品にはニューヨークのグッゲンハイム美術館や、落水荘(カウフマン邸)、またロビー邸などがある。

 現在国内で見学できるのは前回の自由学園明日館と、この帝国ホテル中央玄関、そして旧山邑家住宅のみとなった。他にも林愛作邸(電通八星苑)が存在しているが、一般に公開されていない。

 

 

 ライトの建築見学記録は、次のヨドコウ迎賓館の記事へ続きます。