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【宿泊記録】噂の《ピラミッド元氣温泉》に泊まってみた|東京から在来線で行く栃木・那須塩原(1)

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 事の発端は、少し変わった温泉旅館のサイトURLが友人から送られてきたことだった。

 その名前は《ピラミッド元氣温泉》という。検索をかけると元『気』温泉と表記されているものが多くあるが、実際には「氣」の漢字を使うのが正確らしいので、それに準ずることにする。

 公式Webサイトに記載されている紹介文の怪しさ・胡散臭さ(『ピラミッドで集めた宇宙エネルギー』など……)に惹かれていたのもあるが、実際に行く決め手となったのは手頃な宿泊料金

 6畳ほどの和室に1泊2食付きで、入浴税も入れて約5600円。他の宿泊客のレビューを見てみると「設備が古い」や「部屋が埃っぽい」という意見をいくつか確認できたが、何日も滞在するわけではないし、温泉の質自体はとても良いという評判に期待して予約を入れることになった。

 

 

参考サイト:

ピラミッド元氣温泉|総合宿泊施設(ピラミッド元氣温泉公式)

那須塩原市(那須塩原市のサイト)

 

 

目次:

 

  • 周辺の土地について

 栃木県・那須塩原市について調べていて、その範囲を含む「那須野が原」と呼ばれる扇状地が日本遺産に登録されていることを知った。

 そもそも日本遺産とは、2020年の東京オリンピックに向けて日本各地の文化財や土地にまつわる歴史を整備し、観光資源として役立てるため数年前に考案されたもののよう。私は今まで存在を知らなかったが、これから知名度が上がっていくのだろうか。

 

 

 日本遺産登録の決め手となったこの地のストーリーは、明治時代華族によって行われた大規模な農場の設置と、それによる那須野が原の開拓に関連が深い。

 今でこそ湯治場として人々で賑わう那須だが、当時は「不毛の地」と称されるほどに何もなく乾燥しており、ただ平坦に土砂や火山岩の海が広がっていたらしい。中には部分的に水が地下に浸みているため、場所によっては枯れているように見える「蛇尾川(さびがわ)」が今でもある。

 

 その後、政府によって殖産業の強化が図られた折には開拓地として注目され、特に明治13年から20年にかけて多くの事業が開始された。明治に作られた開拓事業の基盤は昭和から戦後へと引き継がれていき、軍用地や国有林づくりへの架け橋となったのだ。

 華族農場のうちの一つに数えられるのが、千本松牧場である。

 これはかつて総理大臣や大蔵大臣も務めた松方正義が設立したものであり、今回私たちも訪れることができた。ピラミッド元氣温泉からはとても近い場所にある。それについては次の記事で詳しく記載する予定。

 

歴史年表:那須塩原市の歴史|那須塩原市

 

 

  • 東京からのアクセス

 東京駅からは、新幹線ではなく在来線を使って那須塩原の方まで出ることにした。所要時間は約2時間30分ほど。

 まずはJR上野東京ライン(東北本線直通)に乗り、宇都宮駅で黒磯行きに乗り換える。金曜日のお昼ごろ出発したので車内の席は空いており、座って会話をしながら景色を眺めていると、目的地まではあっという間に感じた。

 ピラミッド元氣温泉の所在地は塩原市だが、那須塩原駅の手前の「西那須野」という駅で降り、バスかタクシーに乗るのが最短のルートになる。バスを選んだ場合、下車後に最低でも20分以上は歩くことになるので留意しておきたい(後述するが、私達はうっかり歩行に向かない道を選んでしまったせいで、服が草だらけの不快な状態になってしまった……)。

 西那須野の駅前からバスに乗車する。ここは初めに整理券を受け取る後払い制。

 

 

 さて、郵便局の前で下車し高速道路沿いに歩道を歩いていく予定だったのだが、この道が本当にひどかった。どう考えても通れないようになっている「やばい」箇所もあったので、それならそうだと地図に記載してほしい。分かっていれば避けたのに。

 表面は植物に覆われており、この場所を普段ろくに人が通っていないことを示している。

 単純に歩きにくいだけではなく、グーグルマップ上では表示されている場所が塞がれて無くなっていたり、知らぬ間に耐震関係の工事が始まったりしていて大きく迂回をする必要に迫られた。

 脇に立つ「動物に注意」の警告看板が折れかけの心をさらに殴打してくるうえ、どこまで行っても景色が変わらない。

 今後、公共の交通機関がなく慣れていない土地では、「時間はかかるが歩いていける程度の距離」だと判断した場合でも、素直にタクシーを拾った方が良さそうだと実感した。新しい学びだ。

 

 

 この回り道のために時間を食ったので「チェックイン予定時刻に遅れるかもしれない」という電話を温泉に入れると、とてつもなく怪しい(というか、通じない)日本語を話す人が出てきて、さらなる不安が募る。

 疲れ切った足を引きずって歩いていくと、やっと普通に車が通っているような場所に出る。そこまで辿り着きさえすれば温泉はすぐそこだ。

「身も心も活性化 世界初のピラミッド温泉」と書かれた小さな看板が、暗い道端で静かに鈍い光を放っていた。

 宿に到着後、草だらけになったズボンや上着をひたすら叩いて綺麗にする必要に迫られ、げんなりする。

 

 

 

 

 

  • ピラミッド元氣温泉

 

 黄色い三角形の山を背負うようにして、宿の入り口にはスフィンクスが佇んでいる。

 陽が落ちた後の時間帯だと特にその外観の怪しさが強調される。古代エジプトに関連したオブジェ仏像の組み合わせに加えて、赤と緑というクリスマスを彷彿とさせる色の電飾もきっとその一因だ。

 受付ではこれから帰宅するらしい人が手続きをしていて、私達がフロント前にある鉱石や金魚を撮影していると、その方が「あっちの方(館内)にもっと怪しいものがいっぱいあるよ」と教えてくださった。

 怪しいものとは一体――。

 

 

 各種展示物が並んでいるのは、大浴場へと向かう薄暗い廊下。流木のようなものや石、置き物の数々が並んでおり、その反対側が鏡張りになっていた。ここは夜9時以降になると照明が落とされる。

 ちなみにこの日の女性宿泊客は私達だけ(宿の人談)だったので、お風呂全体が完全貸し切りのような状態になっており、とても楽しかった。

 何から書いていこうか迷ったが、夜ご飯を食べる前に温泉に入ったので時系列順に写真を載せようと思う。

 

 まずは大浴場、下の写真の左側にある「氣柱」という文字を見てみてほしい。そもそも氣柱ってなんだ。氣の呼吸の使い手かな?

 辺りの白い煙はお風呂の湯気で、中には人っ子一人いない。

 壁に貼ってあった説明によると、この柱は外から見えたあのピラミッドの頂点へ向かって真っすぐに伸びているらしく、入浴しながら背中を柱に付けると何らかの「パワー」がもらえる…… と記載がある。

 

 

 見た目も触った感じも単なる柱だ。さらにその奥には謎の彫像が設置してあった。

 内風呂のお湯はぬるめ・普通・熱めの三つに分けられている。源泉かけ流し。露天風呂と、繭の湯と呼ばれる小さな洞窟風呂が外にあるが、それらの温度はとてもぬるい。

 サウナも蒸気があまり出ておらず物足りない印象を抱いたが、お湯自体はとても良い感じだった。久しぶりの温泉と長風呂が自律神経に作用したのか、翌日の午後に激しい頭痛があったので、そういった傾向がある人は少し注意されたい。

 

 その後頂いたご飯は夕飯・朝食ともに和食で、味は至って普通のもの。

 冷たいおかずが多いので好みが分かれるところだと思う。お味噌汁に関しては客が席に着いてから温かいものを配膳してもらえたのと、焼き魚がとても美味しく、白飯が進んだ。

 朝食・夕食のいずれも、量は平均的な成人女性がお腹一杯だと感じる程度でちょうどいい。

 

 

 ところで、このピラミッド元氣温泉には「瞑想室」と呼ばれる謎のスペースがあるのをご存じだろうか。

 フロントに行って入場料(!?)を払うと中に入れてもらえるのだが、その中央には大きな木の根のようなものと、女将が言うには日本で二番目に大きい(らしい)水晶が設置されている。室内での飲食は許可されているので、私と友人はここでお酒やお菓子を楽しみながら、湯上りにごろごろしてみることにした。

 電子音とも楽器の音ともつかない不思議な音楽が絶えず流れている。

 内部には椅子やソファなど、休むのに最適なものたちが壁に沿ってたくさん置かれており、小さな枕も部屋の隅に大量に積んであった。思わず寝てしまいそうになる。ちなみに私はアルコールを摂取すると眠くなる性質の人間である。

 

 

 瞑想室内の照明は少なく、目が慣れるまでわりと暗い。利用する際の足元や忘れ物には注意しよう。

 中央にある「黄金の根」にはたくさんの仏像が彫りこまれており、そこから何らかのスピリチュアルな効果が期待されているようだ。

 また、この空間にはピラミッドを含めたエジプト的な要素と仏教系のオブジェ、加えて床にはダビデの星(六芒星)を彷彿とさせる図形が描かれており、実に混沌としていた。コンセプトがつかみにくい。

 瞑想室の利用時間は一応決められていて、だいたい1組1時間程度、とのこと。

 

 その後、部屋に戻って温かいお茶を飲んだ。ポットや急須・茶葉などは備え付け。

 今回、客室は本館の二階にあるものを利用させてもらったが、とても清潔で快適、何も問題を感じなかった。廊下の足音や話し声などは少し響くが気にならないレベル。

 秋冬(特に朝の時間帯)は、室温が低く寒いと感じられるかもしれない。

 

 

 さて、そんな噂の「ピラミッド元氣温泉」に実際に宿泊してみて、比較的手ごろな値段で温泉につかり、ご飯も食べることができたので非常に満足している。

 怪しい展示物が気にならず、別段高いクオリティの食べ物や設備を期待しない人にはとてもお勧めできる場所だ。館内で対応してくれた従業員の方々も丁寧で好感が持てた(行く途中で電話に出た人が誰だったのかは分からない)。

 ちなみに、温泉内の売店には「女将のしずく」というお酒が売られている。

 これから那須塩原に行かれる方は、この温泉施設を気になる宿泊先リストに入れてみても面白いのではないだろうか……?

 

 今回はここで一度区切り、旅の続き(那須野が原公園、千本松牧場)については次の記事に記載しようと思います。

 

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 続きを書きました:

 

 エジプトで本物のピラミッドへ入場した時の記録はこちら: