以下の記事の続きです。
参考サイト:
VisitOSLO(オスロ観光情報)
Life in Norway(ノルウェー情報)
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入国審査、そして市内へ
この旅行で利用した空港は、スタンステッド空港とガーデモエン空港だった。
お昼ごろにロンドンを出発して到着は夕方。オスロで飛行機から降りた後に並ぶ入国審査の列は、EUとEU圏外のパスポート所持者の2つに分かれているため、ここでは友人といちど別れて出口で落ち合うことにした(EU圏外パスポートの列は長く、時間がかかっているようだった)。
入国審査の際には思ったよりも細かく目的や予定を聞かれた。例えば観光が目的で来たのだと答えれば、具体的にどのエリアへ足を運ぶのか、そこに何があるのか知っているかどうかなど。
加えて英国のBRPカードを所持していたので、現在私がイギリスに滞在していて、留学生というステータスであることも再度確認された(どの都市で学んでいるのかと専攻は何か)。
やはり学生を装って入国し、勝手に現地で就労したり国の財源を当てにしたりしている人間に対しては、近年特に敏感になっているのだと感じる。
空港から市内へ出る電車は2種類あるので、自分の都合に合う方を事前に調べて利用するのが良いと思う。電光掲示板に表記されている中央駅、Oslo S(Oslo Sentralstasjonの略)で降りた。
駅の外観はこのような感じで、野外彫刻作品がぽつぽつと周囲に置かれている。
近くのビルにはショッピングセンターが入っており、Østbanehallenというフードコートも付随していた。便利なオスロ・パスの購入ができる観光案内所はそこを通り抜けて階段かエスカレーターを降りたところだ。
ちなみに、ここよりも少し北のグリューネルロッカ地区にもMathallenというマーケットがあり、食べる物に困ったら行ってみようかとも考えていた。
Mathallen Oslo:Mathallenoslo.no
ところで、ここにもイギリスで時折見かけるYo! Sushi(その名のとおり寿司を扱うチェーン店。ふざけた名前だと思う)が入っていたけれど、試してみる気にはあまりなれなかった。
他にもYo! 活と表記されている店舗をロンドンやカンタベリーで見かけたのだが、暗号だろうか? 一体何を意味しているのだろう。真相については深い闇の中である。
私と同じことを感じている人は他にも存在しているようで、安心した。
Yo活とはファンキーに生きるということだろうか。
— MarikoUmeda(うめだま) (@umedama) 8 July 2017
スシはどうした。 pic.twitter.com/MDCRYMbJn5
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MENY(スーパーマーケット)
外食の値段が驚くほど高いので、私達は「レストランやカフェに立ち寄るのは1日のうち1回のみ」という規定を設けることにして、そのほかの食事はスーパーやコンビニで購入したもの(それでも高い)を部屋や公園で食べていた。
MENYは、ノルウェーにある大手のスーパーマーケットのうちのひとつ。他にもREMA1000やKIWIという名前のものがあり、値段や品揃えがそれぞれに異なっている。
今回訪れたのはホステルから近い、中央駅横のショッピングセンターOslo Cityの内部にある店舗だった。
このスーパーマーケットの紹介記事を事前に読んでいったが、棚に記載してある "Tilbud" が割引を意味していると知ることができて良かった。見切り品や割引の品は素晴らしい。
ここでは実際に現地で購入し食べたものの中から、特に現地でしか手に入りにくそうなものを掲載してみる。
①チーズ(オスト)各種
私はノルウェーの茶色のかったチーズに並々ならぬ興味をずっと抱いており、今回の旅行でやっと実際に食すことができた。
大好きな味で、説明するのが難しいが、ウェブ上に散見される感想の中には「塩キャラメル」に例えられたものが多く納得した。
本当にそんな風味がするのだ。
これらは主に乳と乳清、クリームなどを煮詰めて造られ、種類によって違う名前が付けられている。
最もおいしいと感じたのは上の写真のチーズで、山羊と牛のミルクを混ぜ合わせてできる、Gudbrandsdalsost(グッドブランズダルゾスト)というもの。山羊の乳のみではどうしても強くなってしまうクセのある香りが少なく、パンに乗せて口に運ぶ手が止まらなくなる。料理の隠し味にも使えそう。
イギリスでもぜひ味わいたいのだが、どうやらウェイトローズやアマゾンで取り扱われているようだ。真剣に購入を検討している。
②レフセ
レフセというのはノルウェーの伝統的な薄いパンのことを指すようで、このようなお菓子に使われているものだけではなく、実に多様な料理のバリエーションが存在している。スーパーではぱっと目に付いたものを購入してみた。
お菓子のレフセはコーヒーなどのお供として食されることが多いらしく、使われている砂糖の量も多くかなり甘い。
ふわふわの生地とバタークリーム、シナモンとわずかなチーズは、ふと思い出したときにどうしても食べたくなる魔の組み合わせだ。日常的に食べていたらきっと太ってしまう。
休日に部屋の掃除を終えたあとなど、一息つく際に欲しい一品。現にたった今食べたい。
③トマト&バジルのサバ缶
私はサバ缶が好きだ。ここロンドンでも月に1度はサバ缶を購入し食べている。
そして、トマトとバジルのスープに漬かったサバ缶は英国でも簡単に手に入るが、個人的にはこちらの方が味に深みを感じられた。また、このスタブラ(ブランド名)の缶詰は日本の場合、カルディなどの輸入品を扱うお店で購入できる。
現地でも人気かつ定番の食べ物らしく、私達がスーパーに滞在していた短い時間の中にも、人々がこれらを手に取っていくのを確認することができた。
下の記事では他の種類(キャノーラ油+胡椒味のものにかなり惹かれる)に加えて、売り場を埋め尽くす黄色いサバ缶の様子が紹介されている。お昼ご飯として学校や職場に持ってくる人もいるとのこと。
上記の商品のうち。チーズとレフセを手荷物に入れてイギリスへと持って帰り、少しずつ消費した。
ノルウェーのスーパーにはまた足を運びたい。他に朝食として、軽くお腹を満たすためにジャム付きのライスプティングを買ってみたが、こちらもおすすめ。
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現代的なオペラハウス
中央駅からそう遠くない、徒歩5~10分ほどの距離にそれはある。
2007年に施工が完了し翌年に開かれたこのオペラハウスは、オーストラリア・シドニーのオペラハウスに倣い、オスロの新しい文化と芸術のシンボルとなることを目的として建てられたのだという。
白い大理石で覆われた外観と、ガラスの青が与える鋭利な印象、そして内部の木の壁が醸し出す暖かさの組み合わせが居心地の良さを演出していた。
観劇を目的とせず、屋上へと足を運んで広がる海を眺めるだけでも十分に訪れる価値がある。個人的にこの建物はとても好きだった。使われている直線や角ばった形の組み合わせも、鑑賞する側の目を退屈させない。
付近の海上に設置されているのは "She Lies" という彫刻作品で、イタリアのアーティストであるモニカ・ボンヴィチーニの手によるものだった。
天候や時間によって光が異なるように反射し、それ自身が動くことのない静かな佇まいのなかにも確かに息づく、恒久的な変化の存在をこちらに示唆してくるという。
私が見ていたときは引き潮だったので、透明な板が設置されている土台の部分も垣間見ることができた。
まるで海に浮かぶ氷山の一角のようなその形状は、ドイツの画家カスパル・ダーヴィト・フリードリヒの絵画作品である「氷の海」に着想を得たのだとボンヴィチーニは語っている。
彫刻の持つ形状やコンセプトがオペラハウスの建築自体と呼応し、互いに興味深い関係をこの環境(フィヨルド、氷河によって形成された入り江)のなかで作り上げていると思った。
ちなみに、彫刻作品の背景に写っている船はデンマークのフェリー会社DFDSのもので、イギリスにも発着する便がいくつかある。
ここで、夜ご飯のために足を運んだレストランを紹介しよう。
Louise Restaurant & Bar
向かいに建っているノーベル平和センターの付近にあった、シーフードを主に取り扱うレストラン。
夕刻のテラス席に腰かけて、沈みゆく太陽を横目に見ながらグラスを傾け、街の風を感じたのは本当に贅沢な思い出になった。
近くの花壇に植えられたパンジーが静かに揺れていた。
注文したのはムール貝とロブスターで、2人で分けた。
思えば、新鮮な海産物と呼べるものを食べたのは、ずいぶん昔のことのような気もする。少し日本の寿司が恋しい。
イギリスでの普段の生活では、安さを重視するとパスタか冷凍食品、缶スープの割合が多くなりがちだ。それか味のついたパン。野菜や果物だけをかじるという手もある。
節約のためにやめておいたが、友人はこれらに加えてオイスターを所望していた。その艶のある貝殻の中身にソースのようなものをかけ、至福の表情ですする彼女を、私はただ目の前でじっと見ていた。本当においしそうだった。
ご飯を食べてホステルに帰った後は早々に眠りにつき、次の日へと備えた。
部屋のシャワーが本当に使いにくかった(やたらと長さの短いカーテンのみが仕切りとして存在しており、細心の注意を払っても、使った後にトイレを含むバスルーム全体が水浸しになる仕様だった)が、数日の辛抱なのであまり気にしないことに決めた。
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オスロ大聖堂 (Oslo Domkirke)
中央駅から徒歩すぐの場所にあるこの大聖堂は、もともと17世紀後半に建てられたもの。
当時デンマーク=ノルウェー王だったクリスチャン4世は、1624年に起きた3日間に及ぶ大火事の後、今より東にあったこの都市の拠点を現在の位置へ動かすことを決めた。
その際に古い大聖堂(St. Hallverd's Cathedral)は残され廃墟となり、新しく建てられたものも50年と経たず焼けてしまったので、今のオスロ大聖堂は街の中で3番目に建造されたものになる。
ちなみに当時のオスロは彼の名にちなみ、その治世の間は"クリスチャニア"という名前で呼ばれていた。
また、アーケシュフース城のある位置に街を近づけることで、より強固な防衛ができる――と考えたのが、クリスチャン4世がオスロを移動し建て直した主な理由なのだという。
内部の撮影は、フラッシュを使用しないことを条件に許可されている。
青と金を基調とした内装は聖母マリアのシンボルであると同時に、どこか海辺のこの街らしさも表現されているという気がした。空気の色や匂い、形、そんなものが。
当時は訪れている人も少なく、発する音全てが天井へ真っ直ぐに吸い込まれてしまうかのような感覚をふと味わった。
モザイク画がとても綺麗だ。
席に座って足を休めていると、教会内でピアノのソロ演奏が始まった。その様子を比較的間近で見ることができたのだが、演奏自体もさることながら、ピアニストの表情や仕草が魅力的だったのを覚えている。
柔らかな微笑みを浮かべながら指先で鍵盤を弾く様子に、音楽に血が通う瞬間を目撃しているような気分に浸っていた。
オスロ大聖堂の横にはその名前を拝借したレストランがある。
Cafe Cathedral
晴天の続いた旅行中、私達はすっかり「屋外テラス席」の虜になってしまっていた。
渡航前からうわさに聞いていた、トナカイの肉を使ったノルウェー料理の存在。
子供向けの絵本の中で、サンタクロースのよき相棒として働いている赤い鼻の彼らの姿を丁寧に思考の隅に押しやりつつ、好奇心のまま注文をしてみた。
まずはサーモンとクリームチーズの前菜。香草のようなものが練り込まれていた。
友人と相談して決めたメインの料理はトナカイのシチューと、もうひとつはその肉が乗ったピザのようなもの。
風を感じられる外に座っているとはいえ、当時の20度を超える気温の中、何を血迷ったのか熱いコーヒーを注文してしまったのは他でもない私だ。
ご飯どきではなかったので空いており、特に待つことも無く料理は運ばれてきたし、雰囲気がゆったりしていてよかった。陽が落ちてくるとまた違った感じになるのではと思う。
料理には赤い色のペーストが付属してきたが、それはコケモモのジャムだった(そういえば漫画《ゴールデンカムイ》にもコケモモジュースが登場していた)。
多くの場合トナカイの肉に添えられるものなのだという。調べた中ではミートボールの乗ったお皿の隅にジャムが置かれているのもあった。
半信半疑で肉とともに口に運んでみたのだが、確かにそれぞれの風味が絶妙に組み合わさって美味だった。
量もかなり多く満足したけれど、ロンドンと比べても外食の値段が数割増しになるというのは恐ろしく、観光でもなければ積極的に外食をしようという気分には到底なれない。
席からは、宮殿へと真っ直ぐに続く大通りの端を観察することができ、まるでオックスフォード・ストリートの縮小版を見ているような気持ちになった。ここにもいろいろな種類のお店が並んでいる。
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オスロ市庁舎 (Rådhuset)
この日はムンク美術館に立ち寄ってから、市庁舎(シティホール)の壁画を覗いてみることにしていた。
昼はお金をあまり使わないようにするため、付近のコンビニで買った40NOKほどの味の薄いピザパンを2人でかじることに。夜にレストランで美味しいご飯を食べるためなら背に腹はかえられない。
しかし海沿いの都市の片隅にひらけた公園のベンチで、のんびりと過ごしながら食べるパンはとても美味しく感じられた。
食べ物自体だけでなく、それを楽しむことのできる環境は大切だ。
ノーベル賞という言葉を聞いて、人々の頭に浮かぶものはどの部門だろうか。
化学、物理学、文学……そのなかでもノーベル平和賞は、このオスロ市庁舎で受賞式の行われる唯一の賞となっている。その他すべての部門の式典はストックホルム・コンサートホールにて開催されるが、こちらの方が日本のテレビで報道されることも多く、一般人にもなじみのある光景だと思う。
茶色いレンガの外壁、規則正しく並ぶ窓、配置されている時計や像の位置などが洗練されていると感じる。とても格好いい。東側の塔は時計と連動する49個のカリヨン(音楽を奏でることのできる鐘)を備えており、1時間ごとに稼働している。
市庁舎は、海に面した正面の側からだけではなく、反対側から眺めるとまた違った雰囲気を持っているのだと気付いた。設置されている時計も時刻を示すものではない天文時計に変わる。
ちなみに、クリスチャン4世の時代に建てられた古い市庁舎は、紆余曲折を経た後、いまではレストランに改装されているそうだ。
開放的な大広間の壁一面にはノルウェーの画家ヘンリク・ソーレンセンが描いた油彩画が設置されており、彩度を抑えた色の組み合わせが施設に厳かな印象を添えていた。
内装も含めて本当に美しい近代建築なので、ツアーやイベントがないときでもいろいろな人に足を運んでほしいと感じる場所だ。
オスロ市庁舎:Oslo City Hall - Politics and administration
この市庁舎の裏から伸びる通りを直進すると、その左手にナショナル・ギャラリーが見えてくる。
その付近は小さなレストランがあり、旅の最後を飾る晩餐をここでいただいた。
Elias mat & sånt
無料で提供されるパンにはガーリックの風味があり、練り込まれている葉っぱのようなものも含めて柔らかくしっとりとしており食べやすかった。バターによく合う。
日常的に食べたいので、このパンをロンドンのスーパーで販売してほしいとも思った。いくらでもお腹に収められそう。
メインにはタラの一種であるポロックを注文し、それを待つ間にりんごジュースをちびちびと飲んでいた。
出されたお皿には、ふんわりとした魚の白身を埋めるようにしてじゃが芋、ニンジン、そして甘辛く煮られた玉ねぎが白いソースの中に所狭しと並んでいる。
全体的に至って素朴な感じなのだけれど、特にじゃが芋の柔らかさとほんのりとした甘みに、まるで胃袋が安心しているかのような感覚をおぼえる。
また寒い冬が巡ってきたら、暖かい魚料理を家で静かに楽しむのもいいと思った。レストラン自体が小さく家庭的な雰囲気であるのも影響していたのかもしれない。
このときは旅行最終日、そしてひとつの年度の終わりでもあり、私と友人の「今後の人生をどうするか」という談義に咲く暗い色の花が満開になった。それゆえ、一応にこやかに食事を楽しんだものの、気分は完全に葬式だった。もちろん自分自身のだ。
やがてあらゆることがうまく回り始めた暁には、またおいしい魚を食べに来たい。
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飛行機(ライアンエアー)
往路と復路、いずれも航空会社はアイルランド発、今ではヨーロッパの大手LCCとなっているライアンエアーを利用した。
基本料金は格安だが、別途で荷物を預けると航空券自体よりも高い金額を払うことになるので、私は5日分の着替えを中サイズのバッグに圧縮に圧縮を重ねて詰め、機内持ち込みとした。これは無料。
おおよそ2時間という短さのフライトであったので座席の座り心地などに関する記憶は少ない。
出発は定刻、帰りの便は1時間ほど遅れたが、帰国の日に予定を入れるようなことは特にしていなかったので支障は無かった。しかし早朝のフライトだということもあってか、空港で待機している際にはだいぶ疲れてぐったりとしていたのを覚えている。
ライアンエアーを利用する際には幾つか注意すべきことがあるが、特に前述した手荷物の件に加え、航空券の印刷を忘れないようにしたい。さもなくば高額の追加料金を払うことになる。
なぜこんなことをわざわざ書いておくのかといえば、このときは他でもない私が帰国便のチケット印刷を忘れ、空港へ向かう直前にプリントし難を逃れるという間一髪の経験をしたからだ。
オスロ中央駅にあるネットカフェにはパソコンに加えて印刷機があるので、いざという時はそこへ行くと良いと思う。英語も通じる。私が行ったとき、スタッフの方はこちらの質問に丁寧に答えてくれた。
そうして、私達は見慣れたロンドンの地をまた無事に踏むことができたのだった。