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彷徨する自由帖

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創作・随筆

とりとめのないものたち

「カイ少年」へ

子供が冬の澄んだ夕空を見上げて、そこへ稲妻のように走った大きな亀裂を幻視する。素知らぬ顔で横切る飛行機の向こう側、ああ鏡が割れたのだ、と思った瞬間にはきっと、もう忘れている。それでも破片はあまねく地上に散らばっただろうし、いつか実際にひと…

理想と倦怠と諦念、そして捨てきれない希望

自分にとって…… 旅行や散歩に行ったり、建築に心寄せたり、本を読んだりするのは、全て素晴らしい物語を探すための行為に他ならない。そこから得られる「尊い何か」を、私はこよなく愛している。物語に触れるたび、描写されているものをそのまま体験する感覚…

自作の短編集《彷徨する窓》の電子書籍を販売します

昨日やっと、諸事の合間にちまちま執筆を進めていたものが完成したので、ひとまず開設したBASEのショップにて電子書籍としてPDFデータを販売してみます。小説で、内容としては主に「存在しない場所・物事」の見聞録になっています。どこでもない国々で見聞き…

人を喰う城郭

音を吸う存在としてよく話題に上るのは雪だが、実際のところ、石も似たようなものだと思う。特に、柔らかいもの。表面が磨かれておらず微細な穴が開いていたり、経年による風化で、少なからず傷が付いていたりするものが。それに気付かされたのが多分この場…

六畳程度の小さな部屋

まるで自身の脳内や心理をそっくり映し出したかのような部屋は、所狭しと置かれている物品の傾向だけでなく、微妙な散らかり具合までもが私の持つ性質にそっくりだ。幼少の頃から幾度か小さな引っ越しを繰り返してきたので、10年以上じっくりと腰を据えて造…

百 "貨" 繚乱の時代:大正初期の三越本店と日比翁助、英国ロンドンのハロッズ

白亜の城か、大邸宅を思わせる5階建て。地下もある。眼前に現れた荘厳な百貨店の玄関脇には、まるで神社の狛犬のように鎮座する、一対のブロンズ製の獅子がいた。それを横目に建物の内部へ足を踏み入れつつ、一歩先を行く連れに他愛もないことを問いかける。…

家に籠り、放浪を渇望する睦月

流行り病が怖くて、仕事以外の日はすっかり家に籠っている。もう一月も終わる。呼吸器系が昔から弱いので「肺炎」の言葉を耳に入れるだけでも恐ろしい。旅行や散策をしようと思うものの、どうしても大型の駅や空港を経由することになるため、その辺でうっか…

聖夜譚|お屋敷のクリスマス

体調を崩すと著しく食欲がなくなる。それでも、何かを口に入れないと弱る。ならば逆に、わずかでも飲み食いできるうちはまだ、人はこちら側の世界に根を張っていられるのだ――とも思えた。黄泉や冥界ではなくて、現世の食べ物を喫することができる限りは。今…

遺志、あるいは石の亡霊|増える建物

あるとき、「建造物の増殖」としか表現できない現象が頻発するようになった。はじめにそれを観測したのは、欧州の片隅にある小さな国の農夫。曰く、街の教会の塔の高さが徐々に増していっている、とのことだ。彼は、朝の決まった時間に塔の階段を数えながら…

心的避暑地|コスモプラネタリウム渋谷

残暑残暑というが、八月が終盤を迎えても依然として尾を引くのは、不快な気温と湿度ばかりではない。胸の奥には、くすぶる焼け跡がある。そこにいつ火が放たれたのか、燃え落ちたものが一体何だったのかも今となっては分からず、残骸はただ放置されるままに…

虚無と焦燥の住まう部屋で

一日外に出たら三日は家に籠りたい。常日頃からその位のペースで生活をしたいと思っているが、殊に夏はその思いが一層強くなる。気温と湿度が、働くのと遊ぶのに必要な、精神力と体力の双方を容赦なく私から奪っていくからだ。ただでさえ疲れやすい性質であ…