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彷徨する自由帖

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路上で話しかけてくる怪異

振り返れば大学を辞める頃まで、国内にいても、国外にいても、よく宗教の勧誘をされた。記憶に残っている中で最も古いのは、高校生時代。某駅の改札前、広告の貼られた四角い柱のところで友人を待っていたら(多分このとき、制服を着ていたと思う)若い二人…

旧田中家住宅 - 高さと奥行きに魅了される洋館・和館:大正12年竣工|埼玉県川口市の重要文化財

大正10年から建設が始まり、同12年に竣工した、旧田中家住宅。国の重要文化財に指定されている。スパンドレルのある窓の並び方も、壁の飾りも実に魅力的で、この館の付近で暮らすことを夢想せずにはいられない。私は朝早く起きて一度、また夜眠る時にも一度…

記事を寄稿しました:前世の友達が飛び出す、近江八幡 - WEBメディア〈サンポー〉へ|日帰り滋賀県・近江八幡散策(5)

外部で執筆した記事の紹介です。先日、webメディア〈ジモトぶらぶらマガジン サンポー〉さんにて、滋賀県・近江八幡散策中に遭遇したとある看板、通称「飛び出し坊や」について書いた記事を掲載していただきました。以下が該当ページへのリンクになります。

黄色い家(暖炉のある)

冬、暖炉のある場所でまとまった日数を過ごした経験は、過去に一度しかない。けれどその感覚がすっかり心身に刻まれてしまったのか、新しく季節が巡ってくるたびに、暖炉の存在しない冬はまるっきり嘘であるかのような錯覚をおぼえるから不思議。だから、己…

日帰り滋賀県・近江八幡散策(4) 明治に建てられた小学校の疑洋風建築 - ステンドグラスのある白雲館

八幡堀の手前には旧八幡東学校の校舎が残っている。現在では「白雲館」と呼ばれている、疑洋風建築である。白雲館(旧八幡東学校校舎)は近江商人の集めた資金により明治10年に建てられた。そのほとんどが寄付で、当時の値段にして約6000円だったという。設…

クラタビル11号館の風情|神戸市中央区・レトロ建物

ある縦長の入り口から変な引力を感じる。誘われるまま不用意に近付いたら、もう中を覗いただけで大変だった。煉瓦の外壁、洋風の電燈、奥の方に伺える複数の入り組んだ通路の気配。本当に危ないところだ。心を捕捉されて、離れられなくなる。絶対、陽が沈ん…

ガラスの山を飼っている

ガラスの山といえば、脳裏に浮かぶのは昔話である。それも、ヨーロッパの各地に残る類の。有名なのはグリム兄弟が収集した童話や、ノルウェーの童話に登場するものだと思うが、私にとっては子供の頃に買い与えられた偕成社の本(学年別・新おはなし文庫の一…

太宰治《斜陽》- 過渡期の犠牲者・直治と彼の遺書、母のような「ほんものの貴族」への憧憬|日本の近代文学

人生(あるいは人間存在)に対して自分を偽らず、誠実に、まっすぐに、真面目に向き合おうとすればするほど首の締まる世の中である。その渦中にあって正気を保ち続けていられるのは、意志や外的要因によって少なからず「何か」を看過しているからだし、強く…

日帰り滋賀県・近江八幡散策(3) 水路のある商人の町へ - 八幡堀と日本家屋

八幡堀の南側に広がる区域は特に整然としていて、碁盤の目とまではいわないが、地図を眺めてみると似た形の四角がたくさん並んでいる。JR近江八幡駅から徒歩約30分。体力温存のためにバスに乗っても良いけれど、運河に至るまでの周囲の様子を肌で感じながら…

石像について / 石になった君を

緑の枠の窓を開けるとき、できれば忘れていたいのに、嫌でもそれが視界に入る。小さな家の中庭。石になった君を眺めて、すっかり枯れてしまった涙をふたたび飲み込んだ。喉の奥のところがひきつれてしびれたようになる。陽はこうして昇ったのに、その透明な…

日帰り滋賀県・近江八幡散策(2) レンガ塀の住宅街と趣深い洋風建築 - ヴォーリズ(一柳米来留)という人物の軌跡

明治38年、24歳の頃に来日してから近江八幡に居を構え、生涯を通して建築家や伝道者として熱心に活動した人物——ウィリアム・メレル・ヴォーリズ。彼の自邸は現在、ヴォーリズ記念館として予約制で公開されている。電話での予約のみ受け付けがされており、弾…

日帰り滋賀県・近江八幡散策(1) 旧八幡郵便局 - W・M・ヴォーリズの設計した大正時代の建築

この建物のある「仲屋町通り」は「すわいちょうどおり」と読む。歩いていると出会うのは、決して派手ではないが堂々とした堅実な印象のファサード。郵便局の機能にふさわしい外観だと思うし、設計者の気質のようなものも反映されているようで、好感が持てた…

数寄屋橋公園に隣接する泰明小学校の校舎 - 近代建築|大正~昭和初期に建てられた「復興小学校」とは

市街地を歩いていると、流れる水の音はなく、気配すら感じられないアスファルトの海上にも「橋」の文字を冠した地名が散見される。その多くは、かつて存在した河川を埋め立てて整備した痕跡。周囲を散策すれば橋のたもとを飾った親柱や、江戸時代の火事防止…

The PERFUME OIL FACTORY(パフュームオイルファクトリー)の限定香水《ラプンツェル》と《The CHOCOLATE #2》感想

オイル香水専門店・The PERFUME OIL FACTORY(パフュームオイルファクトリー)が2021年に発表した期間限定商品のうち、「ラプンツェル」と「The CHOCOLATE #2」の感想です。特にラプンツェルは10月6日に発売されてから、11月中旬に異例の追加販売が行われる…

「人生は自分の手で書き換えられる物語」という一種の信仰

人間が生まれてから死ぬまでの道程を書物や映画に見立てるのは、現在、それほど珍しい考え方ではなくなった。むしろ比較的よく使われる表現にもなっている。一体いつ頃から一般に受け入れられたのか定かでないが、どこかの地点で始まり、いつかは終わりを迎…

閉館後のホテルニューアカオを徘徊する体験(4) プール|熱海のアートイベント《ATAMI ART GRANT》のACAO会場

前回の記事の続きです。壁をなめるように火の玉が飛んでいる。そう直感して意気揚々と近付いたら、ただの明かりだった。けれど心を惑わされたことには変わらない。金属製の花の萼に乗るふっくらとした白いガラス。インペリアルスイートルームの上層から退出…

閉館後のホテルニューアカオを徘徊する体験(3) スイートルーム|熱海のアートイベント《ATAMI ART GRANT》のACAO会場

前回の記事の続きです。仮にこのニューアカオを沈みゆく船に見立てるなら、きっと中庭は甲板に対応する部分だろう。ダイニング錦の脇にはそこへ上る小さな階段がある。レンガ風の壁に挟まれた踊り場に立って背後を振り返ってみたら、半円のアーチに飾られて…

閉館後のホテルニューアカオを徘徊する体験(2) ダイニング|熱海のアートイベント《ATAMI ART GRANT》のACAO会場

前回の記事の続きです。サロン・ド・錦鱗のある15階からエレベーターに乗り、何も分からないままに指示通りのボタンを押す。すると、眠っているのか起きているのか不明瞭なニューアカオの体内で、私の身体は縦の方向に大きく動かされる。どういう仕様になっ…

閉館後のホテルニューアカオを徘徊する体験(1) ダンスホール|熱海のアートイベント《ATAMI ART GRANT》のACAO会場

ホテルニューアカオは老朽化などの理由で2021年の11月に閉館が発表された。現在では、平成初期に建てられた新館ロイヤルウイング(現・ホテルアカオ)が熱海にあるアカオ系列施設の中心となっている。そして同年の冬。11月16日から12月12日までの間、旧館ニ…

三菱一号館美術館《イスラエル美術館所蔵 印象派・光の系譜》展&Café 1894のタイアップメニュー|再現された銀行営業室

この前、三菱一号館美術館で開催されていた展示《イスラエル美術館所蔵 印象派・光の系譜》を鑑賞した。数年ぶりに訪れた場所だった。ジョサイア・コンドルによる設計で、1894(明治27)年に建てられた洋風事務所「三菱一号館」を再現し、2009年に復元竣工した…

東京駅・丸の内駅舎(中央停車場)の復原 - 辰野金吾が手掛けた大正初期の煉瓦造り建築

中央停車場は大正3(1914)年に創建された。新橋と下関の間で特別急行列車が運転されるようになってから、2年後のこと。この頃は近代化・洋風化という言葉が国の上層部だけでなく、大衆の間に吹き荒れていた時代で、ランプが電灯に変わり、人々の装いは和装と…

東銀座周辺で気軽に楽しめるおいしいもの記録|老舗の喫茶店や不思議なカフェ&バー

友達に教えてもらったり自分で調べたりして最近訪れた飲食店のまとめ。大通りに高級なお店ばかりが立ち並ぶ印象のある銀座ですが、ここで紹介するのは全てふらりと気軽に入れるものです。ぜひ街歩き途中の休憩などに。

佳良な近代の洋風建築「旧山田家住宅」- 昭和初期竣工|成城みつ池緑地 世田谷区

とても良質なのにあまり知られていない近代建築や近代の史跡に出会うと、嬉しい気持ちになると同時に、何か慨嘆(がいたん)にも似た念が心に湧き上がってくる。これらの存在が気付かれず、見過ごされるのはあまりにもったいない! と。過去に訪れた場所だと…

英国ペンハリガン(Penhaligon's):セントライブラリーに入っていた香水の印象

上の記事に引き続き、今日も海より広い香水沼の浅瀬で、ゆるゆると手の届く範囲のものを取り寄せて楽しんでいます。ここに記録しておくのは、ペンハリガンが展開しているもののうち「ルナ」と「クララ」の他にも試してみたミニサイズのディスカバリーセット…

本館と新館が隣り合う、銀座アパートメント:奥野ビル

画室の外に出て玄関の扉を閉ざし、横を見れば、いま閉めたのと全く同じ色と形をした四角い扉があった。これをそっくりそのまま、密かに入れ替えてみても、きっと誰にも気が付かれないだろう。だからふと、まるで「自分の姿だけ映らない鏡」がそこに置いてあ…

知らないはずの物事をなぜか懐かしく思う者 - 中島敦《木乃伊》連作短編「古譚」より|日本の近代文学

まったく馴染みのない風景を前にして、あるいは初めて聴く音楽に触れて、どうやら自分は以前からそれを知っているのではないか……と感じたことはあるだろうか。一体いつ、どこで体験したのかは思い出せない。それでも確かに頭の隅にあり、ふとした瞬間に浮か…

あまりに貴族的な生活:台所に塩と砂糖と香辛料と茶葉がある

昔は塩が金に匹敵するほどの価値を持っていたのだと学んだとき、幼い私は理由を確かめる前に内心で深くうなずき、納得した。だって、こんなにも見た目が鉱石に似ている。小児科の待合室に置いてある図鑑で見た、あの石英の柱を、台所で唸り声を上げるミキサ…

オイルの香水専門店 The PERFUME OIL FACTORY(パフュームオイルファクトリー)の商品からおすすめ5つ

自宅で過ごす時間の長さにともない、作業中の気分転換に香水をつける機会が増えました。これがとても楽しいんです。家なら他人が同じ空間にいないので、いわゆる香害となり、不快な思いをさせてしまう心配もありません。まるで小説を読むように香りから情景…

独特かつ荘厳な外観が魅力的、築地本願寺の本堂|近代建築

鮮魚の取引される場外市場で有名な、東京都中央区の築地。そこにある「築地本願寺」の建物はとても面白い近代建築だ。もとの本願寺は、1657年に起こった明暦の大火をきっかけに浅草方面から移転されており、度々の小火災を乗り越えて再建を繰り返しつつも関…

趣深くロマン溢れる近代建築10選 - 明治・大正・昭和初期の邸宅や施設など

明治・大正・昭和初期という変化の大きな時代に建てられた邸宅や施設の数々は、当時の人々の生活様式や趣味、あるいは国や自治体の意図を如実に反映していて、遭遇するたびに学びがあり心をわくわくさせてくれる存在です。最近では大河ドラマ「青天を衝け」…