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彷徨する自由帖

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趣味に生きる人間が『好き』を楽しめない時期はとても辛い

人生がしんどい、存在がしんどい、そんな根源的な辛さをわりと頻繁に感じる。理由など分からないが面倒な人間なのだ、自分は。こればかりは外野から何を言われたところでどうしようもない。とはいえ、この世に生きる大多数の人だって、軽いか重いかにかかわ…

百 "貨" 繚乱の時代:大正初期の三越本店と日比翁助、英国ロンドンのハロッズ

白亜の城か、大邸宅を思わせる5階建て。地下もある。眼前に現れた荘厳な百貨店の玄関脇には、まるで神社の狛犬のように鎮座する、一対のブロンズ製の獅子がいた。それを横目に建物の内部へ足を踏み入れつつ、一歩先を行く連れに他愛もないことを問いかける。…

草津温泉を愛した明治のお雇い外国人・ベルツ博士

町へ近付くにつれて、車を降りる前から独特の匂いが鼻についた。白根火山の恩恵を受け、毎分3万2千リットル以上の豊かな湯が湧き出る土地・草津。いま記事を書きながら開いている本《ふしぎ地名巡り》にはこう記載されている。一説によると草津の地名は、硫…

境界線の向こう側で行われる営み:映画《ミッドサマー(Midsommar)》の感想と覚え書き

アリ・アスター監督の映画《ミッドサマー》を見た感想と、監督のインタビュー記事や解説を読んで考えた事色々。ごく個人的かつ偏った見解です。※物語の内容・場面・登場人物に言及しているのでネタバレ注意。監督がインタビューの中で「ダニーには私自身がた…

日本郵船 氷川丸は今も夢想する乗客を運ぶ|海上の博物館船・近代化産業遺産

横浜港は年間を通して多くの船が発着・寄港する場所だが、その片隅――山下公園の向かいで60年近くも係留し続け、博物館として一般に保存・公開されている貨客船がある。それが《日本郵船氷川丸》だ。昭和初期に竣工した豪華な船は、過ぎし大正時代の面影を色…

内の顔・外の面

家の外で、知らない人間に突然話しかけられるのが苦手だ。というか大嫌い。例えば歩いていて道を訊かれたり、座っていたら隣の人に雑談を持ちかけられたり、撮影を頼まれたり…… 挙句の果てには何かの勧誘や、驚くことに「歌を聞いてくれ」などと言われたこと…

小雨ふる新吉原遊郭跡 - 樋口一葉の《たけくらべ》を片手に歩く、静かな昼の旧花街

昔も今も変わらない、人が誰かを恋い慕う心。だがその向かう先、行きつく場所はそれぞれに違う。私が折に触れて読み返す、樋口一葉著の短編《たけくらべ》には、決して声高に叫ばれることのない感情のやりとりと結ばれ方がとても丁寧に描かれていた。時代は…

お茶の時間に囚われる:時に食事も "tea" と呼ぶ彼らに倣えば

私にとって、元気――というか、活力の源は間違いなく「お茶の時間」だ。日常の中にそれがあるから何とか生きていられる。叶うならば、延々とお茶会をしていたい。そこが洋室でも和室でも、一人だろうと複数人いようと構わない。飲むものと食べるものを机の上…

稲佐山と坂道と街歩き~レトロな電気軌道に運ばれて|長崎市旅行(4)

長崎を歩き回る際、電気軌道という乗り物にはとてもお世話になった。私はこの呼称が好きだ。単に路面電車やトラム、と表現するよりもずっと。街に張り巡らされた線路を辿る車両、その軌道が100年以上変わらずにあることに、どこまでも深い感慨を抱く。時間を…

家に籠り、放浪を渇望する睦月

流行り病が怖くて、仕事以外の日はすっかり家に籠っている。もう一月も終わる。呼吸器系が昔から弱いので「肺炎」の言葉を耳に入れるだけでも恐ろしい。旅行や散策をしようと思うものの、どうしても大型の駅や空港を経由することになるため、その辺でうっか…

ロンドンの街で気軽にアート作品に触れよう【訪問したギャラリーまとめ・現代美術が中心】

イギリスの首都・ロンドンには、優れた収蔵品を誇る国立美術館の数々に加えて、無数のアートギャラリーが存在している。特にモダンアートやコンテンポラリーアートに興味があるなら、より訪れたいのは後者だろう。広大な街のどこかで常に何らかの展示が行わ…

《文字禍》中島敦 - アッシリア|近代日本の小説家による、外国を舞台にした短編のお気に入り(4)

文字の霊などというものが、一体、あるものか、どうか。中島敦の短編《文字禍》はこんな書き出しで始まる。題の字を読むごとく、文字による禍(わざわい)の話だ。舞台は遠い昔の新アッシリア帝国。そこで紀元前7世紀頃に支配者として君臨していたアッシュー…

ウズベキスタン旅行記(5) 首都タシケント:美しい地下鉄駅と黄煉瓦のナヴォイ劇場、残る旧ソ連の空気

サマルカンドとシャフリサーブスを観光した後、タシケント(タシュケントとも。古くはチャーチュ、石国などと呼ばれていた)を訪れた。一番初めに降り立った都市でありながら、実際に色々と見て回ったのは最後。ここはソビエト統治時代から現在に至るまで、…

旧柳下邸&横浜競馬場跡がふしぎな郷愁を誘う - 根岸にある近代の建物ふたつ

根岸駅から徒歩10分もかからない程度の距離にある、緩やかな丘の上には、細身のさんかく屋根が目立つお屋敷が建っている。頂点にいただくのは銅の棟飾りで、目の前にはシュロのような南国風の木が何本か。写真を撮りながらさらに近付いてみると、その洋館は…

塔|言葉の残骸

あの塔が完成間近で見捨てられてからというもの、人間の舌にはすっかり強固な呪いがかけられてしまっている。それは世代を超えて繰り返され、より複雑に僕たちの身体に編み込まれ、もう誰も、かつての人々のようには想いを誰かに伝えられない。かつての人々…