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彷徨する自由帖

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マルタ共和国旅行(1) 到着&青の洞門編|地中海に浮かぶ信仰の島々で

上の写真は夏・真っ盛りのマルタ。私は一体どうして、そんな時期にこの国へと足を運ぶことにしたのだろうか。理由は自分自身にも皆目分からないが、多分、何でもよかったのだ。本当になんでも。海の綺麗なリゾート地に滞在しながら一度も水遊びはしなかった…

遺志、あるいは石の亡霊|増える建物

あるとき、「建造物の増殖」としか表現できない現象が頻発するようになった。はじめにそれを観測したのは、欧州の片隅にある小さな国の農夫。曰く、街の教会の塔の高さが徐々に増していっている、とのことだ。彼は、朝の決まった時間に塔の階段を数えながら…

旧香港上海銀行長崎支店記念館~海沿いの洋館が留めた舶来の空気・人々の名残|長崎一人旅(2)

電気軌道を降り、グラバー園に向かって大浦海岸通を歩いていると、左手の側に灰色をした重厚な、金庫じみた風采の建物があるのに気がついた。入口のある正面は長崎湾に向いていて、他に目立つものは少ない。その横に立つ、ガス灯を模した街灯のある一角だけ…

青雲の下で仰ぐ韮山反射炉:明治日本の産業革命遺産 - 静岡県・伊豆の国市

初めて写真を目にしたとき、何とも言えぬ美しい外観に衝撃を受けた四本の塔。正確には四本の煙突――これは今から160年以上前に造られた韮山(にらやま)反射炉のもので、2015年に「明治日本の産業革命遺産」を構成する一つとしてユネスコに登録された、貴重な…

《うたかたの記》森鴎外 - ドイツ|近代日本の小説家による、外国を舞台にした短編のお気に入り(1)

本が好きだ。なかでも、小説を手に取ってよく読む。 けれど「読書家である」と胸を張って言えるほどに冊数を重ねているわけではない。この世の中には"本の虫"としか表現のできない類の人達が沢山いて、一日に一冊以上の本を、まるで息をするように読んでいる…

世界遺産・大浦天主堂~日本二十六聖人と信仰の道標を訪ねて|長崎一人旅(1)

1953年に日本の国宝へと再指定、そして2018年には世界文化遺産に登録された、長崎の大浦天主堂。今年の春に私が訪れた際には、修繕完了後の真っ白な外壁が小高い丘の上で陽の光を受け、輝いていたのを思い出す。ポルトガル人の宣教師フランシスコ・ザビエル…

昭和初期の洋館「松籟荘」の遺構を見つけた茅ヶ崎散歩:高砂緑地と美術館、そして海辺

まだ肌寒かった頃の話だ。森や山が好きなのに、その全く逆の方角へと足を運んだ。私は偶にそういうことをしたくなる。仕事が休みになったので自由な時間が選べたのと、平日で電車もある程度空いているだろうという算段で唐突に予定を組んだような気がするが…

虚無と焦燥の住まう部屋で

一日外に出たら三日は家に籠りたい。常日頃からその位のペースで生活をしたいと思っているが、殊に夏はその思いが一層強くなる。気温と湿度が、働くのと遊ぶのに必要な、精神力と体力の双方を容赦なく私から奪っていくからだ。ただでさえ疲れやすい性質であ…

《塩田千春展:魂がふるえる》を鑑賞した記録|六本木・森美術館にて

先日、六本木ヒルズの森美術館で開催されていた《塩田千春展:魂がふるえる》へと足を運んだ。これは氏の初となる大規模な個展らしく、平日にもかかわらず、会場には人が集まり賑わっていた。今回の会期中には並行して、銀座の商業施設 GINZA SIX の吹き抜け…

エジプト・カイロ周辺旅行(5) ギザ平原の大ピラミッドと悠久の時を超えて佇むスフィンクス

カイロからおよそ20キロ、ナイル川を挟んで西側に位置するネクロポリスが、今回の旅行で最後に訪れた都市ギザ(ギーザ)だ。古代エジプトの王族や神官たちが多く眠るこの場所は、今ではエジプトの代表的な観光地。遺跡の残る位置から少し離れた市街地に立っ…

エジプト・カイロ周辺旅行(4) 王家の埋葬地 - サッカラとダハシュールの墳墓・ピラミッド郡を訪ねて

多くの謎に包まれた、古代エジプトのピラミッド郡。なかでも有名なのはクフ王の大ピラミッドだと思うが、それが聳え立つギザの平原を背にして不思議な生き物・スフィンクスがじっと前を見据えている光景は、今も昔も変わらずエジプトを象徴するものとなって…

自分が会社で働くなんて、到底無理だと思っていた

現在の職場に勤めはじめてから、約半年の期間が経過した。ちょうどお正月の少し前頃から本格的に業務に携わっているので、この年は新しい仕事との出会いで幕を開けた、といっても過言ではない。何というか、本当にあっという間だった。必死にしがみついてい…

エジプト・カイロ周辺旅行(3) 歴史ある雑多なハーン・ハリーリ市場とマニアル宮殿の散策

砂漠の国の、雰囲気ある市場に憧れたことのある子供はきっと多い。幼い頃の私もそうだった。不思議な幾何学模様が描かれた布、きらめく装身具、布袋から覗く果物がひしめく通り。人々が行き交う活気ある場所で、自分の国では見たこともないような品物を眺め…

とても正気じゃ暮らせない世界で、静かな熱狂の麻酔を切らさない:HSPの生存戦略

HSP(Highly Sensitive Person, 直訳すると「とても敏感な人」)という言葉の知名度は、少しずつ上がってきているように思う。それに伴って、「自分はHSPだ」と自認する人の数も増加しているのではないだろうか。これは米国の心理学者・アーロン博士が1996年…

エジプト・カイロ周辺旅行(2) 広大な考古学博物館を興奮しながら駆け回った記録

私達の心をいつの時代も惹きつけてやまない、古代文明の遺産。エジプト、という言葉の響きから多くの人々が反射的に連想するのは、ピラミッドの丘や王家の谷の葬祭殿、墓荒らしの手を逃れて生き残った副葬品をはじめとする、数多くの史跡・宝物だろう。現地…